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管理担当役員メッセージ

Financial Strategy

資本コストや株価を意識した経営により、
中長期的な企業価値向上を実現していきます

ナイス株式会社 取締役 管理本部長

田部 博

2025年3月期の振り返り

当社は、資本コストや株価を意識した経営を実現するため、利益成長や資本効率の向上、株主還元の充実、環境目標の達成、人的資本経営を推進し、持続的な企業価値の向上を図ることを基本方針としています。

現在は、2030年3月期の売上高3,000億円達成という目標に向けた実行フェーズにあります。特に2024 年3月期から2025年3月期の2年間は、将来の利益成長への重要な布石として、コア事業の基盤強化と周辺収益事業群の拡大に注力し、設備投資やM&Aには約187億円の資金を投下しました。

2025年3月期の連結業績は、売上高が2,430億54百万円(前期比7.6%増)、営業利益が46億28百万円(同5.1%増)と営業利益ベースで増収増益となり、経常利益は43億5百万円(同0.6%減)と微減ながらほぼ横ばいで推移しました。

持続的な企業価値向上に向けた基本方針

「中期経営計画 2023」におけるキャッシュ・アロケーションの実施状況

想定金額 実施済 備考
新規事業投資
(M&A・研究開発投資)
100億円~ 約110億円 (株)ウッドエンジニアリング(合弁)出資
(株)シェアリングエネルギー出資
セレックスホールディングス(株)株式取得
(株)かつら木材商店株式取得
成長投資(既存事業) 115億円~ 約77億円 IT投資、設備投資、CATV投資
新規設備投資 (株)アルボレックス第2工場
新規設備投資 ウッドファースト(株)第2工場
株主還元 15億円~
※2年間の想定金額
約15億円 配当金
2023年3月期末 30円+2024年3月期中間期 20円
2024年3月期末 40円+2025年3月期中間期 25円

現状認識

当社の株主資本コストは、CAPMによる推計で5~6%と認識しています。2025年3月期のROEは5.3%となっており、引き続きROE 向上への取り組みを推進し、株主資本コストを上回るROEの実現を目指します。

また、事業の成長性や収益性に加え、投下資本に対する収益性を重視し、経営管理指標の1つにROICを取り入れ、グループ全体の資本収益性向上に努めています。個別の投資判断では、株主資本コストと負債コストを加重平均したWACCを上回る水準を基本とし、2024年3月期より5%のハードルレートを設定しています。2025年3月期のROICは3.4%となり、WACCはCAPM 推計で2.3~3.4%と認識しています。

PERについては現在、6~7倍程度に留まっています。この状況は、当社を取り巻く経営環境や事業の成長可能性に対する資本市場の期待値が低いことが一因であると認識しており、この状況を真摯に受け止めています。PERを向上させるため、より収益性の高い事業へ経営資源を重点的に配分し、中長期的な利益成長を図っていきます。

ROEとEPSの推移

ROEとEPSの推移

PERの推移

PERの推移

各年度末における株価・1株当たり当期純利益から算出しています。

「中期経営計画Road to 2030」の経営指標

このたびアップデートした「中期経営計画Road to 2030」において、当社は将来的な事業基盤の強化に向けた投資を更に積極的に進めていく方針です。これらの投資活動を考慮し、本業の収益力をより明確に示すために、EBITDAを新たな経営指標としました。2025年3月期のEBITDAは約66億円でしたが、2030年3月期には100億円、そして計画期間中の累積では420億円を目指していきます。

更に、成長投資や不動産仕入れの拡大によって総資産の増加が見込まれることから、資産の効率性をより分かりやすく評価するROA(総資産当期純利益率)を新たな経営指標として重視していきます。ノンコア事業の整理や資産売却、在庫回転率の向上等を通じて、徹底した資産の効率化を推進していきます。2025年3月期のROAは1.7%でしたが、本計画期間中に2.0%以上とすることを目指します。

経営環境や事業戦略の変化に合わせ、常に最適な経営指標を選定し、重視していくことで、企業価値の向上を図り、資本コスト及び株価を意識した経営を推進していきます。

成長ドライバーによる利益成長

「中期経営計画Road to 2030」では、最終年度となる2030年3月期の目標として、売上高3,000億円、営業利益75億円、親会社株主に帰属する当期純利益45億円を掲げています。この達成に向けて、「超・新築」「超・物流」「超・領域」の3つのキーワードを掲げました。より収益性の高い事業を成長ドライバーとして、中長期的な利益成長を追求していきます。

「超・新築」では、縮小傾向にある新築市場において、非住宅の木造化・木質化等を通じて国産木材の取り扱いを強化するともに、住宅ストックビジネスを拡大し、収益基盤の安定化に努めます。具体的には、「国産木材の供給」「非住宅木造建築」「中古マンション買取再販」「賃貸管理」「マンション総合管理」の5つを成長ドライバーと定めています。

「超・物流」では、「エネルギー関連商品の供給」と「物流」の2つを成長ドライバーとします。国を挙げてZEH 化が進む中、エネルギー関連商品をはじめ、躯体や住宅設備機器等をトータルで提案し、販売を強化していきます。また、全国の物流拠点を活用し、建築現場へのラストワンマイル機能を発揮するとともに、部位別施工への対応など、更なる機能強化を図っていきます。

「超・領域」では、既存の事業ドメインを超え、将来的な成長基盤を創造するための投資を行っていきます。多様な分野で国産木材のコンポーネントとしての用途を拡大し、付加価値の高い木質マテリアルメーカーを目指します。更に、木造建築における受発注に関するプラットフォームを構築し、業界全体の業務効率化に貢献していきます。

これらの成長ドライバーに関連する事業において、計画期間中に売上高550億円、営業利益30億円を増加させることを目指します。


「中期経営計画Road to 2030」の定量目標

売上高 3,000億円
営業利益 75億円
親会社株主に帰属する当期純利益 45億円
ROE 6.0%超
EBITDA 100億円
EBITDA(累積) 420億円
ROA 2.0%以上

EBITDA:営業利益+減価償却費+のれん償却額


資本効率の向上

当社は、前述した現状認識を踏まえ、資本効率の向上に取り組んでいきます。まず、多額の投下資本が必要な事業においては、資金回転速度を上げていくなど、事業特性に応じた対応を進めていきます。また、事業ポートフォリオの最適化に向けて、当社及びグループ会社の経営者で組成する会議を定期的に開催し、ROICが低い会社や事業について改善策を検討しています。非事業用資産の活用や売却も視野に入れ、資産の有効活用を図るとともに、ノンコア事業の整理、グループ会社の株式譲渡、統廃合等を適宜実行し、資本効率の向上に継続的に取り組んでいきます。

株主還元方針 連続増配を計画

当社は、株主の皆様への安定的かつ充実した利益還元を目指しています。今後の成長と競争力強化のための資金需要を考慮しながら、中長期的な持続的成長を通じた累進配当を導入しています。これは、1株当たりの配当金を維持または増配(記念配当等を除く)することを基本方針とするものです。「中期経営計画Road to 2030」では、毎期7円増配、最終年度となる2030年3月期には配当金100円を計画しており、本計画期間中の配当総額は50億円以上となる見込みです。剰余金の配当は年2回、中間配当と期末配当にて実施し、長期的には配当性向30%超を目標に掲げ、今後も継続的な株主還元の実現と企業価値の向上に取り組んでいきます。

また、株主の皆様への感謝と、当社株式への投資魅力の向上を目的として、年2回の株主優待制度を導入しています。保有株式数と継続保有期間に応じ、緑の募金への寄付金付き「おもいやり」QUOカードを贈呈しています。

人的資本と環境に関する取り組み

事業戦略の実行に向けて、人材戦略を強化していきます。2025年6月には、サステナビリティ委員会の専門部会の一つとして「人的資本部会」を新たに設置しました。「中期経営計画Road to 2030」では、建築士等の専門スキルを保有する人材の育成・確保に加え、2030年3月期までにキャリア採用者数累計100名を目指します。また、次世代の経営層の育成に注力するとともに、DXや経営分野の専門人材を積極的に外部からも登用していく方針です。更に、「人材こそが最大の財産である」との考えに基づき、健康経営を推進し、中長期的には健康経営優良法人「ホワイト500」の認定取得を目指していきます。

環境目標については、2026年目標である自社排出量(Scope1・2)のカーボンニュートラルを2024年3月期に引き続き達成し、カーボンマイナスを維持しています。今後も、2030年目標に掲げるサプライチェーン排出量(Scope1・2・3)の実質カーボンニュートラルの実現に取り組んでいきます。

キャッシュ・アロケーション

「中期経営計画Road to 2030」の計画期間において、見込まれるキャッシュ・フローと外部からの資金調達も活用しながら、更なる成長投資を実施していくことを計画しています。具体的には、下図の配分を予定しています。株主還元については、先述の通り2030年3月期まで毎期7円の増配を計画しており、本計画期間中の配当総額は50億円以上となる見込みです。

また、将来の成長を加速させるための戦略的な投資として、M&A投資や新規事業開発、研究開発投資といった新規事業投資に145億円以上、IT投資、設備投資、人的資本投資等の成長投資に120億円以上を充当していきます。

キャッシュ・アロケーション