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国土交通省 新たな「住生活基本計画」で示された住宅政策の方向性 ストック性能向上に向けた2035年度の目標値を設定
このたび閣議決定された新たな「住生活基本計画」では、2035年度までを計画期間として、住宅政策の方向性がまとめられました。今回は、「住まうヒト」「住まうモノ」「住まいを支えるプレイヤー」の三つの視点で設定された具体的な成果指標について整理しました。
掲げられた二つの政策の柱
新たな住生活基本計画は、2026年度から2035年度までを計画期間として策定されました。2050年に向けて生産年齢人口の減少が一段と加速し、2040年には死亡者数が最大となるなか、高齢単身世帯の増加や相続の大量発生といった社会構造の変化が想定されることから、既存ストックの有効活用に重点を置いた住宅政策の方向性が示されています。

今回の計画では、住宅政策の柱として「市場機能の進化を通じた住宅ストック価値の最大化」と「人生100年時代の住生活を支える基盤の再構築」の二つが掲げられました。それに向け、ニーズに応じた住宅を適切に確保できる循環型市場の形成や、高齢単身世帯も孤立しない分野横断的な連携による居住支援、持続的なストック社会を支える担い手や体制の確保等を基本的な方針としています。
これらに基づき、今後取り組む具体的な施策について、「住まうヒト」「住まうモノ」「住まいを支えるプレイヤー」の三つの視点で整理がなされました。

住まうヒト 高齢期や子育て世帯の安心を支える居住環境の整備
「住まうヒト」の視点では、単身世帯が2050年には4割超を占めることを見据え、誰もが孤立せず希望する住生活を実現できる環境が整備されます。成果指標として、住宅の資産価値を適正に評価するローンを取り扱う民間金融機関の割合を、2023年度の27%から2035年度までに35%へ引き上げる目標が設定されました。高齢期の暮らしを支える住宅については、サービス付き高齢者向け住宅、シルバーハウジング、居住サポート住宅などの供給数を、現在の108万戸から150万戸へと大幅な拡充が目指されます。また、若年・子育て世帯への支援として、子育てしやすい住環境の整備や、子育て世帯等の優先入居等を推進するUR団地を、現在の実績ゼロから2035年度には100団地・10万戸規模で展開する方針です。併せて、地域の専門家や行政が連携して住民の状況に気づき、必要な窓口や支援につなぐ包括的な居住支援体制の整備を全国で推進していきます。
住まうモノ 既存住宅取引及びリフォーム市場規模を20兆円へ拡大
「住まうモノ」の視点では、インフラの整った住宅ストックの利用価値を見出し、将来世代へ継承する循環型市場の形成が推進されます。それに向け、既存住宅取引及びリフォームの市場規模を、現在の16.9兆円から2035年度には20兆円へと成長させる計画が示されました。また、住宅の質を確保するため、住宅ストックに占める認定長期優良住宅や建設住宅性能評価取得住宅の割合を15%へと引き上げ、性能が正当に評価される環境が整えられる方針です。更に、耐震性が不十分な住宅ストックをおおむね解消することが目指されるほか、ストック全体の省エネ性能(BEI)を平均で1.3から1.0へと改善することで、省エネ基準の達成が目指されます。その他、高齢者の居住する住宅におけるバリアフリー性能・断熱性能の保有率を30%へ、民間賃貸住宅の断熱・遮音対策実施率を20%へ高めるなど、居住水準の向上が図られます。また、住宅履歴情報の蓄積・活用並びに買取再販の更なる普及を目指す上で、一戸建住宅を定期的に点検している所有者の割合が2023年には22%にとどまっていたことから、これを重要な観測指標として注視していく方針です。
住まいを支えるプレイヤー 担い手の多様化による体制構築
「住まいを支えるプレイヤー」の視点では、生産年齢人口の減少に伴う担い手不足に対応するため、人材の多様化やDXの推進を通じた住生活産業の発展が目指されます。特に、大工就業者のうち女性の就業者数については、2020年時点の4,540人から継続的に増加させていく方針が明記されました。また、住宅建設技能者の確保・育成に向けた中長期的なビジョンの策定や、デジタル技術の活用による生産性の向上が図られます。
行政面では、地域の実情に応じた住宅政策を展開するため、住宅政策の方針を明示している市区町村の人口カバー率を、現在の68.4%から8割へと引き上げることを目標としています。更に、地域の住生活関連の相談を建築、医療、福祉、法務等の専門部署へ適切につなぐことができる人材の育成や、分野横断的な相談窓口の設置等の推進が目指されます。

