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特別企画 東日本大震災から15年 被災地の自立と地方創生のモデルを目指した復興の歩み / 内閣府 「首都直下地震」の新たな被害想定を公表

 東北地方を中心に広範囲にわたる地域へ甚大な被害を及ぼし、未曾有の複合災害となった東日本大震災から、15年が経過しようとしています。今回は、改めて当時の被害を振り返るとともに、着実に歩みを重ねている復興の進捗や取り組みについてご紹介します。

観測史上最大の地震による複合災害

 甚大な被害をもたらした「平成23年東北地方太平洋沖地震」は、モーメントマグニチュード9.0を記録し、国内の観測史上で最大の巨大地震となりました。震源域は岩手県沖から茨城県沖までの長さ約450km、幅約200㎞に及び、最大震度7を観測しました。加えて、大津波によって561㎢が浸水するなど、広範囲にわたり甚大な被害が生じました。この震災により、震災関連死を含めた死者数は1万9,782人、行方不明者は2,550人にのぼり、住宅被害は全壊が122,053棟、半壊が284,074棟に及びました(いずれも2025年3月1日時点)。発災当初の避難者は最大で約47万人、応急仮設住宅等への入居者は約32万人に達しました。また、地震及び津波による直接的な被害に加え、東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射性物質の放出に伴い、周辺の多くの住民が長期間の避難を余儀なくされました。農林水産業のみならず、製造業を含めたあらゆる産業が大きな打撃を受け、風評による影響も広がるなど、かつてない規模の複合災害となりました。

2026年は「第2期復興・創生期間」の最終盤

 政府はこれまで、復興のステージに合わせて期間を区切り、それぞれ基本方針を定めながら復興施策を講じてきました。震災直後から2015年度までを一刻も早い復旧復興を目指す「集中復興期間」、2016年度から2020年度までを被災地の自立と地方創生のモデルとなる復興を目指す「第1期復興・創生期間」、2021年度から2025年度までを前期の理念を踏襲した「第2期復興・創生期間」として、復興への歩みを積み重ねてきました。その結果、避難者数及び応急仮設住宅の入居者数は着実に減少しています。また、復興道路や災害公営住宅をはじめとするインフラ・住環境の整備についても、着実な進展を見せています(図1・2)。

 現在は「第2期復興・創生期間」の最終盤にあります。2026年度から、復興庁の設置期限である2030年度までの「第3期復興・創生期間」において、残された課題を何としても解決していくという強い意思のもと、復興に向けて総力を挙げて取り組む方針です。

被災地の再生に向けた主な取り組み事例

創造的復興の中核拠点「F-REI

 東日本大震災及び原子力災害によって失われた福島浜通り地域等の産業・雇用を回復し、新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」が2014年に取りまとめられました。現在は、本構想を更に発展させることを目的に設立された「福島国際研究教育機構『F-REI(エフレイ)』」の本格始動に向けた準備が進められています。F-REIでは、福島の優位性が発揮できる「ロボット」「農林水産業」「エネルギー」「放射線科学・創薬医療、放射線の産業利用」「原子力災害に関するデータや知見の集積・発信」の五つの分野を基本とした研究開発や産業化、人材育成を図り、創造的復興の中核拠点となることが目指されています。2030年度までに施設の順次供用が開始される方針です。

被災者の心のケアにつながる支援

 公共インフラ等のハード整備はおおむね完了していることから、避難者数は減少傾向にあります。一方、避難生活の長期化等に伴う課題の複雑化・困難化や、災害公営住宅等への移転後の住民の新たなコミュニティづくり、一人暮らし高齢者等の日常生活上の困りごと等、新たな課題が生じています。こうした状況から、復興庁の2025年度予算額のうち77億円が充てられた「被災者支援総合交付金」を通じた支援の重要性が増しています。本交付金の支援メニューは、「各地域の被災者支援の重要課題への対応支援」「被災者の日常的な見守り・相談支援」「仮設住宅での総合相談・介護等のサポート拠点の運営」「被災地における健康支援」「被災者の心のケア支援」「子どもに対する支援」に分かれており、被災者の生活再建のステージに応じて本交付金を活用し、切れ目のない支援の実現に向けて取り組みが実施されています。

復興庁 復興の現状と取り組み
https://www.reconstruction.go.jp/topics/cat-11/cat-22/cat-252/20131029113

※ 図1~4は復興庁資料より引用・作成

内閣府 「首都直下地震」の新たな被害想定を公表

直近10年間の社会変化を踏まえて推計

 東日本大震災からの復興を進める一方で、発生の切迫性と甚大な被害が懸念される「首都直下地震」への対策も急務となっています。こうした中、首都直下地震対策検討ワーキンググループは昨年12月、新たな被害想定を公表しました。

 今回の見直しは、2015年に策定された「首都直下地震緊急対策推進基本計画」から10年が経過したことを受けたものです。この10年間で、東京圏では更なる人口集中が進み、高齢化や単身世帯の増加、在留・訪日外国人の急増といった人口動態の変化が顕著となったほか、様々なライフスタイルの変容も起きています。こうした変化を踏まえ、これまでの巨大地震から得た教訓や最新の科学的知見を反映し、被害想定の見直しと新たな防災対策の検討が実施されました。

死者数の7割が火災によるもの

 新たな被害想定によると、死者数は最大で約1.8万人、建物の全壊・焼失は約40万棟に達すると試算されました。死者数の内訳は、建物倒壊による死者が約5,300人に対し、地震火災による死者が約1.2万人と、全体の約7割で火災が死因となっています。更に、避難生活による心身の負担増大や適切な医療提供の困難化等による災害関連死は、最大約1.6万人~4.1万人と推計されています。建物被害においても、火災による焼失が約27万棟と試算され、揺れによる全壊約11万棟を大きく上回っています。また、避難者は約480万人、帰宅困難者は約840万人に及ぶとされ、膨大な数の被災者が発生することが想定されています。

 前回の被害想定と比較すると、死者数は約35%減、全壊・焼失棟数は約42%減となり、前回の基本計画で掲げていた、「死者数及び建築物の全壊・焼失棟数をそれぞれ10年間でおおむね半減させる」という減災目標には届かない結果となりました。この背景には、1都3県への人口流入や在宅率の増加等によって曝露量が増加したことや、住宅の耐震化(目標95%に対し約90%)や家具の固定率(目標65%に対し35.9%)等の対策が目標を下回ったことが要因として挙げられています。

 経済的被害は、資産被害が約45兆円、経済活動への影響が約38兆円の合計約83兆円と推計されています。東京湾沿岸の火力発電所の被災により、電力供給力が被災直後に約5割まで低下し、計画停電が1カ月程度継続する可能性があるほか、上下水道や通信、物流といったライフラインの長期停滞も予想されます。また、近年のSNSの普及が及ぼす影響として、発災初期にはAIによる偽画像や不安を煽るデマ・流言が大量に拡散され、被災地の混乱や国の信用力低下を招くリスクが指摘されています。加えて、デジタル基盤への依存拡大により、停電や通信障害がキャッシュレス決済の停止や企業の事業継続の困難化に直結し、社会に更なる混乱をもたらすことが懸念されています。

自助・共助を通じて災害対応リソースの分配を適正化

 こうした被害想定を踏まえた対策として、膨大な人的・物的被害への対応を強化することが求められます。具体的には、予防対策によって被害の絶対量を軽減するだけでなく、真に支援が必要な被災者に災害対応リソースを集中させるために、災害対応ニーズそのものを大幅に抑制する必要性が指摘されています。

 予防対策による被害軽減としては、建物の全壊・焼失の最小化が目指されます。全ての木造住宅が2000年基準を満たすようになれば、全壊棟数は現状の想定から87%減少するとの試算が示されており、木造住宅の耐震化は急務となっています。また、死者の約7割を占めると想定される火災被害を防ぐため、住宅の不燃化や密集市街地の解消に加えて、電気火災を抑制する感震ブレーカーの設置の促進が不可欠とされています(4面にて詳報)。

 災害対応ニーズの大幅な抑制に向けては、耐震化や家具固定に加え、太陽光発電やV2Hなどの非常用電源、水・食料のローリングストックを前提とした収納設計等により、在宅避難を実現する環境の確保を求めています。

 そのほか、迅速な復興の実現に向けて、既存の住宅活用等による一時的な住まいの提供を行うべきとしています。被災者の住まいの確保に向け、民間賃貸住宅を活用した「みなし仮設住宅」の運用を強化するとともに、公営住宅や空き家情報を集約し、被災者へ迅速に提供できる広域的なマッチング体制の構築が求められています。

内閣府 首都直下地震対策検討ワーキンググループ
https://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/taisaku_wg_02/index.html

政府 「防災庁」の年内創設を閣議決定

 政府は、切迫する南海トラフ地震や首都直下地震といった国難級の災害に対し、人命・人権を最優先する「防災立国」を実現するため、2026年中に「防災庁」を新たに創設する基本方針を固めました。

 現在、政府の防災体制を担う内閣府防災担当は、発災時には他府省庁等の応援を得てもなお災害対応業務に追われ、その間、事前防災に係る企画・立案・推進業務を中断せざるを得ない状況がありました。こうした課題を受け、政府の防災体制を抜本的に強化する組織として防災庁が設置されます。本組織は、デジタル庁や復興庁と同じく内閣総理大臣を長とする内閣直轄の組織です。実務を担う防災大臣が、各府省庁に対して尊重義務を伴う勧告権を行使することで縦割りを排除し、国家戦略としての防災政策を統一的にリードする司令塔機能を担います。

 防災庁が果たすべき役割としては、中長期的かつ総合的な基本政策や国家戦略の企画・立案を掲げています。また、平時の事前防災の推進に向けて産官学民のあらゆる関係者の連携をコーディネートするほか、発災時には被災地の「ワンストップ窓口」として、被災地との緊密なコミュニケーション等による支援ニーズの把握を図るとしています。

内閣官房 防災庁設置準備
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bousaichou_preparation/index.html

※ 図5~6は内閣府資料、図7は内閣官房資料より引用・作成