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令和八年 新春経済講演会 第一部講演収録 成長市場へ注力し、ともに飛躍する年へ ナイス株式会社 代表取締役社長 津戸裕徳

変化をチャンスと捉えて成長市場に注力
2025年の新設住宅着工戸数は、建築基準法等の改正の影響により例年以上に変動が大きく、暦年では74万戸前後となる見込みです。今後、人口減少や建築コストの高止まりなどを背景に、新築住宅市場は縮小していくと見られています。また、昨年11月に公表された新たな住生活基本計画の中間とりまとめにおいて、既存住宅ストックの本格的な活用が示されたほか、住宅ローン減税においても既存住宅への支援が拡充されるなど、住宅市場の方向性は新築からストックへ大きく舵が切られたと捉えています。
こうした状況を踏まえると、既存住宅市場は今後拡大していくことが見込まれます。また、事業環境が大きく変化する中、これから更に伸びていく市場はまだあると見ており、成長市場をいかに見極めて注力できるかが重要となります(図1)。

■国産材:住宅・建築物における木材利用量は、国土交通省「建築着工統計調査」を参照し、住宅は床面積当たり0.2㎥、建築物は同0.24㎥として当社試算国産材・輸入材の利用量は、林野庁「木材需給表」の製材用材・合板用材の自給率を参照して当社試算。2030年3月期の国産材・輸入材の利用量は、林野庁「森林・林業基本計画」内の「用途別の利用量の目標」における自給率を参照し当社試算
■木造建築物:国土交通省「建築着工統計調査」より当社作成。なお、2030年3月期は当社予測
■エネルギー:資源エネルギー庁「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法情報公表用ウェブサイト」より当社作成
■既存住宅流通:国土交通省「既存住宅販売量指数」「住宅着工統計」より当社作成
国産材への期待が高まる「木材マーケット」
NICE 横架材における国産材利用をパッケージ提案
欧州をはじめとする生産地の原木価格高騰や円安の影響もあり、木材の輸入量は減少傾向にあります。また、世界的な木材需要の伸び悩みもあり、現地のサプライヤーは減産や工場閉鎖などの対応を取り始めています。そのため、今後グローバルの木材需要が急変した際、輸入材の入荷を増加させることが困難な局面が想定され、国産材の安定的な供給に期待が高まっている状況と言えます。
当社グループでは、国産材の需要拡大に対応するため、全国の優良な製材・集成材メーカー様との連携を強化しつつ、全国のストックヤードの活用を通じて、国産材の安定的な供給体制を整えています。また、生産拠点として、徳島県のウッドファースト㈱と和歌山県のかつら木材商店㈱の二つの製材工場を有しており、年間の原木消費量12万8,000㎥の生産体制を構築しています。
国産材の取り扱いを一層強化していくために、国産構造用集成材の供給体制の整備にも取り組んでいます。2024年5月に徳島県、香川県、大倉工業㈱との4者で締結した木材利用促進協定に基づき、ウッドファースト㈱の敷地内に集成材の材料となるラミナを生産する工場を新設しました。当社が生産したラミナを素材として、大倉工業㈱が集成材に仕上げ、西日本を中心に流通拡大を図っていく計画です。特に、梁や桁といった横架材は国産材比率が低く、横架材も含め家1棟分の構造材を国産材でパッケージ化して提案することで、国産材の利用拡大を推進してまいります。
脱炭素化に直結する「エネルギー関連マーケット」
NICE GX ZEHの家づくりをトータルサポート
住宅の高性能化を後押しする施策として、令和7年度補正予算において、国土交通省、経済産業省、環境省の3省連携による「住宅省エネ2026キャンペーン」に総額3,780億円の予算が計上されました(図2)。このうち、「みらいエコ住宅2026事業」では、ZEH水準を上回る性能のGX志向型住宅に対して1戸当たり110万円の補助金が支給されます。1戸当たりの補助額は前回よりも減額となるものの、予算総額は増額となる予定で、より多くの工務店様にご利用いただける見込みです。

当社では、GX ZEH仕様の建材・設備をパッケージでご提案しています。断熱材や窓、玄関ドアといった外皮性能に影響する建材に加えて、太陽光発電システム、冷暖房設備、給湯器などの設備をトータルでご提案し、工務店様の高性能な家づくりをサポートしています。また、2024年10月にナイスグループ入りした㈱セレックスは、外皮性能を向上させるうえで重要な役割を担うサッシの供給を強みとしており、当社が有する拠点や流通網の活用によって、供給エリアの更なる拡大を図っていきます。
太陽光発電システムについても、住宅の高性能化や自治体による新築住宅への設置義務化などの動きを受けて、今後更に拡大していくと見ています。当社における販売台数も着実に伸びており、この4年間で販売実績は4倍以上となっています。販売強化に向けた取り組みの一つが、シェアリングエネルギー㈱との連携です。初期費用0円の太陽光設置サービス「シェアでんき」のご提案により、特に初期投資を抑えたい分譲住宅において採用が増えています。
多角的な提案が求められる「新築住宅マーケット」
NICE 商品力向上で高付加価値化
新築住宅マーケットにおいては、マンション、一戸建住宅ともに価格の上昇が続いています。当社においても同様の傾向で、お支払い可能な水準に合わせた販売価格や世帯構成の変化などを踏まえ、面積を絞った単身者向けの物件供給が増加しています。また、高市内閣による17分野への成長投資により、半導体や防衛、国土強靭化といった分野に建設リソースが集中することが想定され、結果として住宅の建設コストは更に上昇する可能性があります。こうした状況を踏まえると、付加価値の高い商品開発によっていかに差別化が図れるかが重要となります。加えて、住宅ローン金利も上昇局面にあり、返済期間の伸長や残価設定型住宅ローンなどの新たな提案が必要となります。
当社では、「住まいは命を守るものでなければならない」という考えのもと、免震マンションの供給を推進しており、2025年3月期までに累計で88棟、8,540戸の免震マンションを供給してきました。また、共用部の木質化によって温かみのあるデザインを取り入れており、居住者様からご評価いただいています。一戸建住宅においては建築基準法の2倍を超える耐震性能を標準仕様としているほか、木造住宅の倒壊解析ソフト「wallstat」との連携が完了し、構造安全性を客観的に示す取り組みを開始しています。引き続き、商品力の向上によって付加価値を高め、お客様から選ばれる住宅の供給に努めてまいります。
ストック重視で拡大する「既存住宅マーケット」
NICE 木質化を軸に中古買取再販事業を推進
新築住宅が減少傾向にある中、既存住宅の流通量は増加傾向にあり、住宅市場全体の需要を下支えしています。新築と比較して相対的に割安な既存住宅の需要は高まっており、国によるストック重視の方向性も相まって、この傾向は今後更に加速すると見られます。特に、中古でありながら新築と同様の仕様が実現できるリノベーション物件に対する人気が高まっていく可能性が高いと見ています。
当社においても中古買取再販事業の強化に取り組んでおり、昨年6月には木質化リノベーションブランド「RIZ WOODTM」を発表しました。多くの企業が中古買取再販事業に参入する中、木材をルーツとする当社らしく木質化を中心とした内装提案で差別化を図ってまいります。木質化による経済的な価値の向上については、客観的なデータで示していきたいと考えています。当社が所有する賃貸マンションを木質化リノベーション後に貸し出した事例について東京大学の研究室が検証したところ、木質化によって1㎡当たり288円の賃料向上につながったとの推計結果が示されました。こうした事例を積み重ねて、木質化の提案強化につなげてまいります。区分所有物件だけでなく一棟収益物件の取り扱いも開始しており、共用部から専有部にいたるまで全面的にリノベーションを施し、満室稼働させたうえで再度販売する事業スキームを組み立てております。いずれも施工力の強化が重要となりますので、建築資材事業のお取引先との協業によって事業を推進していきたいと考えています。
また、当社グループで賃貸管理事業を手掛けるナイスアセット㈱のデータによると、新築住宅の価格上昇に伴って退去件数が減少傾向にあり、賃貸物件に「住み続ける」という選択をするお客様が増えています。結果として平均賃料も上昇傾向が続いており、賃貸住宅市場についても今後拡大が見込まれます。
ウッドチェンジが進む「非住宅マーケット」
NICE 中層建築物の木造化・木質化を推進
2021年に「都市(まち)の木造化推進法」が施行されて以降、非住宅建築物の木造化は増加傾向にあります。また、今年4月には、一定水準以上の温室効果ガスを排出する事業者に対して、排出量の「算定・報告・公表」を義務付けるSHK制度が改正されます。この改正により、自社が所有する建築物等に国産材を利用した場合、その炭素貯蔵量を削減効果として差し引くことができるようになるため、オフィスや店舗などの木造化ニーズは更に高まっていくと見ています。
当社グループの木造テクニカルセンターでは、建築物の木造化に関する初期相談を受け付けており、木造化の可否や躯体に関する概算費用などを回答するサービスを提供しています。2020年の設立以来、相談件数は1,500件を超えており、このうち約2割が事業化につながっています。木造建築への取り組みを検討される際には、ぜひご相談ください。
直近の事例としては、1月23日オープンの「タリーズコーヒー ロースター相模大野中央公園店」の建築に携わり、当社グループが元請けとして木材調達から設計、施工までを担いました(4面にて詳報)。また、飛島建設㈱との合弁で設立した㈱ウッドエンジニアリングでは、4~6階建ての中層建築物の木造化に取り組んでいます。当社グループの木造化・木質化のノウハウと、飛島建設㈱の技術力を融合し、元請けから下請けまで様々な受注形態で対応することが可能です。
新たな挑戦として、社員のアイデアをもとにした国産材100%の木造ユニットハウス「MOK UNIT(モクユニット)」の開発に取り組んでおり、現在、商品企画や物流輸送などについて協議を重ねています(図3)。リゾート施設や災害公営住宅、建設現場の仮設事務所など様々な用途を検討しております。

将来の成長基盤の創造で「成長と進化」
将来的な展開として、事業領域を住まいから暮らしへと拡大し、建築分野以外での木材需要の創出を目指しています。スギなどの国産針葉樹の表層を圧密して強度を高めたオリジナル木材商品「Gywood®」によって、トラックの荷台や学習机、家具、筆記用具といった分野での木材利用の可能性を追求しています。
また、業界全体の課題でもある人手不足への対策として、AIを活用した積算業務の完全自動化に向けた取り組みを開始しています。拾い出し作業は全てAIで完結し、最終確認のみを担当者が行うことで、大幅に業務を効率化することが可能となります。開発の途中段階ではありますが、まずは当社グループ内での活用をスタートしたうえで積算の精度を高めつつ、皆様にもご活用いただける展開を検討してまいります。
今後も、将来の成長基盤の創造に努め、皆様との共存共栄を図りながら、「成長と進化」を遂げてまいりたいと思います。
2026年を皆さまとともに
今後予測される環境変化を踏まえた取り組みを着実に実行し、2026年も皆様とともに力強く歩みを進めてまいりたいと思います。建築資材セグメントでは、住宅・非住宅・暮らし領域において、国内メーカー様との取り組み強化、エネルギー商材、リノベーション市場や非住宅市場への対応などに注力するとともに、物流や施工といった機能を更に強化してまいります。住宅セグメントでは、希少性の高い立地に絞った新築マンションの供給や、一戸建住宅の商品力向上などを通じて、基幹事業を更に深化させてまいります。また、グループシナジーによるストック事業の強化を図り、区分所有物件や一棟収益物件の中古買取再販事業の強化など、事業領域を拡大させてまいります。
今年の干支は「丙午(ひのえうま)」です。エネルギーがみなぎり、跳ね馬のごとく大きく飛躍し、未来へと力強く飛び進ことができる年にしていきたいと思います。そして、本日ご来場いただいたパートナーの皆様も含め、全ての人々のあふれる笑顔を創り出すことができるよう、本年も全力で事業活動に取り組んでまいります。引き続き、変わらぬご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

