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新春特別対談 2026年 木材・住宅関連業界の展望 株式会社農林中金総合研究所 代表取締役社長 髙 義行氏・ナイス株式会社 代表取締役社長 津戸 裕徳

 2025年の日本経済は、物価上昇が継続するなど依然として先行きが不透明な状況となったほか、住宅関連業界では法改正等の影響により変化の大きな一年となり、2026年においてもこうした外部環境を踏まえた経営が求められています。今回は、新春特別対談として、㈱農林中金総合研究所代表取締役社長の髙 義行氏をお迎えし、2026年の日本経済の展望や木材・住宅関連業界の可能性などについて伺いました。

株式会社農林中金総合研究所 代表取締役社長
髙 義行(たかよしゆき)氏
1998年農林中央金庫入庫。2019年総合企画部副部長、2021年営業企画部副部長。2023年4月に㈱農林中金総合研究所代表取締役社長に就任。

ナイス株式会社 代表取締役社長
津戸 裕徳(つどひろのり)
1998年当社入社。2020年3月当社上席執行役員 資材事業本部副本部長、2023年3月当社上席執行役員 管理本部副本部長、6月当社取締役 管理本部副本部長、7月当社取締役管理本部長、2024年4月に代表取締役社長に就任。

2025年の振り返り

株式市場が史上最高値を断続的に更新

津戸 明けましておめでとうございます。2025年は日経平均株価が初めて5万円台に乗るなど大きく伸びましたが、この動きは日本経済復活の兆しと見てよいのでしょうか。

 2025年の株式市場は、2024年に続いて史上最高値を断続的に更新する展開となりました。株価上昇の背景としては、コロナ禍に行われた潤沢な資金供給等によって国内企業の手元資金に余剰感が生じた環境において、企業サイドに価格転嫁の進展が見られたことが挙げられます。加えて、世界的にAIブームの波が起こったことで、生産性の向上による資本効率の向上に対する期待感が高まりました。更に、アベノミクス復活を目指す高市内閣が誕生したことで、拡張的な財政政策によって内需が刺激されるという観測も後押ししているのではないかと見ています。ただし、風向きは確実に変化しているものの、復活と言い切るには尚早かもしれません。

津戸 ドル円レートについては、春先には140円台で推移しましたが、足元では再び円安基調となっています。為替については、年間を通してどのような動きであったと分析されていますか。

 2025年のドル円レートは、トランプ政権が円高ドル安を志向するとの予測が当初広がったほか、日米の金利差が縮小するとの観測もあり、円高気味に推移するという見方が強かったと思います。ただし実際には、日米の金利差が以前より縮小したにもかかわらず、円安圧力が強い展開となりました。主な要因としては、日本の追加利上げのタイミングが後ろにずれ込む可能性が高まったことに加えて、トランプ関税による影響の確認、財政拡張と金融緩和を組み合わせた高圧経済を志向する高市内閣の政策姿勢などが挙げられます。

    

構造変化をもたらした木材・住宅関連業界

津戸 木材・住宅関連業界においては、様々な法改正などの影響で需要の変化が見られましたが、年間を通してどのような1年であったと感じますか。

 2025年の木材・住宅関連業界における最大のトピックは、4月に施行された「省エネ基準適合義務化」「4号特例の縮小」「木材合法性の確認義務化」といった大規模な法改正であり、これを契機に市場が激変した歴史的な1年であったと言えます。特に、4号特例の縮小の影響は大きく、従来は建築確認の審査が省略されていた木造2階建ての住宅などにおいても、新たに構造・省エネ関連の申請書の提出が必須となりました。これらの規制強化は新築住宅市場に大きな影響を与え、新設住宅着工戸数は、15年ぶりに80万戸を下回った2024年から更に減少する結果となりました。これは、法改正に伴う建築確認審査の長期化に加えて、物価高による消費者マインドの低下や慢性的な人手不足などが複合的に影響した結果だと捉えています。

 一方、住宅業界では、着工戸数は減少したものの住宅事業者の売上高は増加傾向にあります。これは、規制強化への対応により一戸当たりの建築コストが上昇していることや、高付加価値化や省エネ性能向上への対応などにより、単価が上昇していることが背景にあります。つまり、量的には縮小しながらも、性能・品質面では向上しており、住宅事業者の収益構造に変化が出ているのではないかと考えています。

津戸 業界の構造変化が進む中で、需要の増加が期待される分野についてはどう見ていらっしゃいますか。

 4号特例の縮小で構造計算が必要となるケースが増えたことで、強度基準が明確なJAS製材のニーズが高まっています。国内構造用製材のJAS格付率は約25%にとどまっていましたが、法改正を契機に国産JAS製材への転換促進が期待されています。

 また、新築住宅市場が伸びない中、国の住宅政策は「ストック(既存住宅)重視」へと明確にシフトしました。昨年11月に公表された次期住生活基本計画中間とりまとめでは、2050年を見据え、人口減少下での「ストックの有効活用」や「リフォームの重要性の高まり」が中心的なテーマに据えられたところです。

 2025年は、法改正が業界動向に大きなインパクトを与えた「試練の年」であったのと同時に、JAS材活用や性能・ストック重視といった先々を見据えて業界の構造転換を迫る「激動の年」でもあったと総括しています。

津戸 当社は、国産材の利活用推進や新築からストックへの流れなど、今後伸びていくマーケットを見極め、その領域でいかに当社の強みや競争優位性を発揮できるかをしっかり検討していきたいと考えています。

 国産JAS製材の話題がありましたが、当社グループでは、徳島県で製材事業を手掛けるウッドファースト㈱において、集成材の材料となるラミナを生産する新工場が昨年4月に稼働を開始しました。香川県の大倉工業㈱と連携し、地域材を活用したJAS構造用集成材の供給体制の強化を図ってまいりますので、皆様にぜひご活用いただきたいと思います。

2026年の経済情勢の展望

実質賃金がプラスに転じ、消費回復へ

津戸 2026年の物価と賃金のバランスや、それに伴う消費者マインドはどのような見通しでしょうか。

 2025年の春闘は、2024年を上回り34年ぶりの高い賃上げが実現しました。一方、米をはじめとした食料やエネルギーなどが高値で推移するなど、賃金上昇を上回る物価高騰が続き、実質賃金は前年割れが続きました。

 一方で、2026年は物価高については鈍化する可能性が高いと見ています。エネルギー価格が弱含みで推移する見込みであるほか、ガソリン税や軽油引取税の暫定税率の廃止が合意されており、物価押し下げの効果が期待されます。今後、一段と円安が進まない限り、2026年は物価上昇率が2%を下回る可能性もあります。

津戸 実質賃金がプラスに転じる可能性はあるのでしょうか。

 今年も春闘への期待が高まっており、労働力不足が引き続き深刻化する中、人手確保に向けて少なくとも前年並みの上昇率になると見ています。賃金上昇率が現状と同水準の2%台で維持できれば、実質賃金はいずれプラスに転じ、消費回復の後押しになると考えています。

    

国内景気は内需の持ち直しで底堅い展開

津戸 企業の収益や設備投資意欲はどのように推移し、株価にはどのような影響を与えるでしょうか。

 トランプ政権の政策により米国への輸出に対して関税が賦課された影響は、まだ十分には出尽くしておらず、今後も一定のタイムラグを伴いながら輸出製造業の収益に影響を及ぼす可能性が高いと見ています。また、世界的に見ても、AIなどのハイテク関連を除くと停滞気味であり、2026年度の夏季賞与や設備投資に悪影響が出てくる可能性もあります。ただし、高市内閣の防衛・経済安全保障政策に関連する業種については、恩恵が受けられる可能性もあります。また、実質賃金のプラスが定着すればサービス業を中心に消費の持ち直しが進むと見られ、関連する業界に好影響が出てくるのではないでしょうか。

 2026年の国内景気を全体的に見ると、外需に大きな期待はできませんが、内需の持ち直しが期待されるため底堅い展開になると予測しています。また、株価についても、足元の上昇は期待先行な側面があり、AIバブルへの警戒も見られることから調整局面もあると思われますが、株式市場の地合いは底堅く推移すると見ています。

津戸 トランプ関税の話題も出ましたが、今後の日本経済にはどのような影響が考えられますか。

 日本国内では主に輸出企業が関税を負担してきましたが、当該企業の収益が圧迫されることで、設備投資や賃金などにも悪影響が出かねない状況です。一方で、関税引き上げ分を価格転嫁すれば、購買意欲の低下などにつながる可能性もあるため、難しい舵取りになるでしょう。また、世界的に注目されるのは米中関係です。一連の米中交渉の結果、多くの追加関税賦課が1年先送りとなりましたが、米中対立が再び激化する可能性も否定できず、日本もその影響を受けることが考えられます。

対談風景

木材・住宅関連業界の可能性

リフォーム・リノベーション需要は堅調と予測

津戸 人口や世帯数の減少、資材価格や金利の高止まりにより住宅需要の減退が懸念されます。住宅市場全体の見通しについてお考えをお聞かせください。

 2026年の住宅市場は、駆け込み着工の反動減から回復基調を示す場面は想定されるものの、中長期的には人口・世帯数減少による構造的な需要減少圧力が継続すると見られます。また、全国的には生産年齢人口の減少が続いており、婚姻率も低下傾向にあるため、新規世帯形成の鈍化が持家・分譲住宅需要の下押し原因となります。

 エリア別では二極化が予想されます。東京、神奈川、千葉、埼玉といった首都圏や、愛知、大阪、福岡などの大都市圏では生産年齢人口の減少幅が相対的に小さく、経済集積による人口流入が続くため、住宅需要は一定水準を維持するものと思われます。特に、利便性の高い立地が選別される傾向は継続するのではないでしょうか。対照的に、地方部では生産年齢人口の急減や婚姻率の低下により住宅需要は厳しい状況が続く見込みです。ただし、既存住宅の老朽化への対応や省エネ性能向上などのニーズから、リフォーム・リノベーション需要はエリアを問わず堅調に推移すると見ています。

津戸 当社においても、リフォーム・リノベーション需要は伸びていくと見ており、昨年5月に策定した「中期経営計画 Road to 2030」における成長ドライバーの一つに、中古マンション買取再販を掲げています。当社らしい木質化を軸としたリノベーションで、販売拡大を図っております。施工体制の強化も必要となりますので、施工力のある事業者様との協業によって対応してまいりたいと考えております。

RIZWOOD仕様内装イメージ

    

輸入材の需給ひっ迫で国産材価格は高水準維持か

津戸 かつてはコストメリットの大きかった輸入材も、近年の円安基調や物価高の影響により価格が高騰し、国産材の利用拡大には追い風となっていると感じています。今後、輸入材の価格の推移と、国産材の価格への影響についてはどのような動きになるのでしょうか。

 日本における輸入材価格については、為替レート、海上運賃、世界の住宅市場動向に加えて、近年では米国の関税政策が新たな不確実性要因として大きく影響を及ぼしています。米国が木材関連製品に関税を課した場合、特に深刻な影響が出るのは米国市場に大きく依存するカナダ林業です。関税による収益悪化は、製材所閉鎖や生産能力縮小、森林経営への投資減少が連鎖的に発生することが懸念されます。カナダ材の供給量が減少することで、需給ひっ迫により日本を含む各国の輸入価格に上昇圧力がかかる可能性があります。こうした状況を踏まえると、国産材の価格は引き続き高い水準で推移することが見込まれます。

津戸 当社では、国産材の取り扱いの強化に取り組んでおります。木材市場や物流センターといった流通拠点、それらを生かした在庫・アッセンブル機能、プレカット加工や製材機能を併せ持つことで可能となる一気通貫な対応などの強みを生かし、取引先様の需要にしっかりとお応えしてまいります。

    

非住宅・非建築分野で広がる木材利用の可能性

津戸 住宅市場の縮小に伴って木材需要の減退が懸念される一方で、非住宅建築物における木材利用の拡大が期待されます。近年、非住宅物件において木造が選択されるケースが増えてきたと感じますが、この動きは今後も加速するのでしょうか。

 非住宅建築物の木造率は、今後も上昇していくと考えられます。根拠として、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が2021年に改正され、民間建築物も対象に含まれたことや、脱炭素社会の実現への要請が高まり、CO2を固定する木造建築への注目が増していることに加えて、CLTなどの技術革新で中高層建築での木材利用が可能になったことなどが挙げられます。エリア別で見ると、東京、大阪といった大都市圏における木造比率の上昇が目立ちます。都市部では環境配慮型建築への需要が高く、木材利用促進条例も整備されています。また、木造比率の上昇が突出しているのが山梨県で、県による積極的な木材利用政策と地域産材活用推進の成果が強く表れているものと思われます。

 用途別では、宿泊や飲食などのサービス業、学習塾や予備校などの教育学習支援業における木造化が顕著です。サービス業については、建築コストの優位性や、業態転換の多い業界特性に適した改修容易性などが背景にあると思われます。また、教育学習支援業では、自治体財政や私学経営における建築コスト抑制ニーズに加えて、地域材利用促進政策が合致した結果、建て替え時や新築時に木造が選ばれやすい状況にあると考えます。

津戸 工務店様の非住宅分野への参入については、どのようにお考えでしょうか。

 地場の工務店においても、ビジネスチャンスは大いにあると思います。新設住宅着工戸数が減少する中、非住宅分野は相対的に木造化の余地が大きく、保育園や幼稚園、介護施設といった木造に適した建物が多いほか、地域産材の活用や地元ネットワーク、小規模案件への対応力などは、非住宅分野で工務店が発揮できる強みではないでしょうか。ただし、住宅とは異なる技術や設計力、専門知識の習得なども必要になるため、まずは小規模案件などで実績を積みつつ、ネットワークを徐々に拡大していくアプローチが現実的と考えます。

    

森林資源の循環利用と業界の更なる発展に向けて

津戸 脱炭素社会の実現に向けて、森林資源の循環利用は重要なポイントになると考えています。循環型サプライチェーンを構築するための課題やカギとなる取り組みは何でしょうか。

 脱炭素社会の実現に向けて、森林資源の循環型サプライチェーンを構築することは急務となっています。しかし、川上から川下に至るまで多くの課題が存在しており、とりわけ林業者の収益性の低下に伴い、持続可能な森林管理に向けての再投資意欲も低下しています。この状況を打開するためには「木材が本来持つ環境価値」を適切に評価し、価格に反映させる取り組みが必要です。そのカギとなるのが、企業のTCFD、TNFD対応をはじめとするESG経営と森林管理を結び付け、経済合理性のある循環モデルを構築することです。

津戸 具体的にはどのような取り組みが有効なのでしょうか。

 具体策としては、カーボンクレジットや生物多様性クレジットの活用が挙げられます。森林整備や再造林に取り組む林業者がCO2吸収量や生物多様性保全への貢献を定量化し、新たな収益源とする仕組みです。サステナブル調達を行う企業において、このような価値を示すことができる事業者は調達先として優先的に選ばれる傾向にあります。また、調達に当たって企業が最も重視するのは「透明性」です。どの森林で伐採され、どの工場で加工され、どの程度CO2排出削減に貢献したのかといった情報です。特に、森林認証の取得などによる定量的な環境情報の開示を通じた木材のトレーサビリティは、企業のサステナブル調達の後押しとなります。更には、利用後のリサイクル・リユースの基盤を整備し、再流通ビジネスを構築できれば「循環型サプライチェーン」全体の価値を高めることにつながります。

 企業のサステナブル調達と森林資源の循環を結びつけるためには、「クレジット活用」と「トレーサビリティ」の二つが不可欠です。これらを組み合わせることで企業の調達活動が森林の価値を評価し、その価値が今後の森林整備の原資となるという循環モデルが成立することになります。

津戸 ありがとうございます。最後に木材・住宅関連業界の皆様に向けてメッセージをお願いします。

 日本の国土の3分の2は森林で、この面積は60年前とほぼ変わっていません。ただしその内訳は、天然林が減少し、人工林が増加しています。人工林は戦後の拡大造林によるもので、将来的に木材として利用することを目的に、苗木を植え、人の手で育てた森林です。その人工林における森林蓄積は年々増加しており、豊富な資源として蓄積されていますが、必ずしも十分に活用されているとは言えない状況です。森林は一度伐採しても、再度植林し、適切に管理することで次の世代へ引き継ぐことができる貴重な資源です。そして、今この資源を生かさなければ、やがて木々は高齢化し、木材としての価値が下がり、次の世代に豊かな森林を残すことができなくなります。成熟した人工林を適切に伐採・利用し、その後しっかりと植林して循環させていくことが、担い手の確保や日本の国土保全の観点からも重要な取り組みとなります。

 そのため、日本の森林・林業を持続可能な形にしていくためには、木材サプライチェーンを様々な立場で支えておられる木材・住宅関連事業者の皆様の力が必要不可欠です。皆様におかれましては、引き続き日本の森林・林業を盛り上げていただけることを切に期待しております。私どもとしましても、微力ながらお役に立てるように努めてまいりたいと思います。

津戸 本日は、多岐にわたり様々なお話をいただき誠にありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。