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㈱ウッドエンジニアリング 会社設立後初の受注案件 在来軸組工法で木造4階建て・1時間耐火の老人ホームを建築
飛島建設㈱とナイス㈱の合弁会社として昨年6月に設立した㈱ウッドエンジニアリングでは、会社設立後初の受注案件として、木造4階建ての有料老人ホームの建築を進めています。今回は本物件の概要やポイントに加え、11月に開催された上棟現場見学会の様子を併せてご紹介します。
環境貢献を目指して木造で建築
㈱ウッドエンジニアリングは現在、神奈川県川崎市において木造の有料老人ホーム「(仮称)川崎市幸区小倉三丁目計画」の新築工事を進めています。建築面積が637.29㎡、延床面積が2,224.54㎡の4階建てで、全90室の居室のほか、共用スペースの食堂や機械浴室が設けられています。居室は一部屋当たり13㎡の広さで、入居者が利用しやすい家賃設定を可能とし、より多くの方に利用いただける計画としています。
本建物は飛島建設㈱が事業主となり、同社の社員寮があった跡地に環境配慮型の有料老人ホームとして建設され、木材使用量は418㎥にのぼります。設計は㈱ラカンデザイン研究所、施工は元請けとして㈱ウッドエンジニアリングが担ったほか、ナイスグループは下請けとして構造設計、材料調達及び建て方施工に携わりました。竣工後は、同有料老人ホームの運営を行う㈱LCGへ、飛島建設㈱から建物が賃貸される事業スキームとなっています。

耐火構造の重量を支える高耐力壁
本建物は在来軸組工法による1時間耐火仕様となっています。4階建ての計画であったことから、建築基準法により耐火構造が求められたため、国土交通省の告示仕様に基づき、壁・柱・床・梁等の構造体力上主要な構造部分を強化石膏ボード等で被覆する「メンブレン型」が採用されています。壁や床には厚さ21㎜を二重に、柱や梁には厚さ25㎜と21㎜を重ねて強化石膏ボードを貼るなど、構造体を連続して覆った仕様となっています。

こうして石膏ボードを多く使用することにより、一般的な木造住宅や準耐火構造と比べて建物の総重量が増加するため、耐力壁の調整も必要となります。特に、L字型に配置された本建物では間口が比較的狭く、廊下側や外壁側で耐力壁を十分に配置することが困難であったため、居室のドアは引き込み型ではなくアウトセット型を採用し、廊下側の耐力壁の確保につなげています。耐力壁には、(一社)日本木造住宅産業協会の高強度耐力壁を採用し、7.5倍から19.2倍の壁倍率の耐力壁を効率的に配置しています。

それに伴い、木質材料及び金物も高強度の製品を採用しています。土台や1階から3階の柱には150㎜角の集成材、梁は最も荷重がかかる2階で最大梁成540㎜のものを設置しており、JAS規格でE95-F315からE150-F465の強度の木材を適材適所に使用しているほか、柱頭柱脚金物や梁接合金物も中大規模用の高耐力のメーカー製品を使用しています。
内外装の木質化も実施予定
メンブレン型の告示仕様により、構造体の木材は完成時には目に見えない一方、利用者が木の温もりを感じられるよう内外装の木質化も行う予定です。特に大空間となる12.2m×15.6mの食堂は、150㎜角の柱4本と壁倍率19.2倍の耐力壁を組み合わせた構造の支柱を6本配置してスパンを確保しながら、その柱の表面に無垢材のパネルを設置することが検討されています。また、エントランスにおけるルーバー材や室名プレートにも木材を使用し、利用者にとって居心地の良い空間づくりを木質化で実現する計画が進められています。
現場見学会を開催、木造耐火の施工状況を公開
㈱ウッドエンジニアリングは11月10日、本建物の現場見学会を実施し、デベロッパーや設計事務所を含む120名以上が来場しました。9月に上棟した後、内装のボード貼り等の施工状況の進捗が1階から4階にかけて異なっているタイミングで見学会を実施し、構造躯体や石膏ボードの被覆仕様について実際の納まりを確認できる機会となりました。
また、共和成産㈱とナイス㈱による、非住宅の内外装木質化を実現するオリジナル木材製品の提案も併せて行われました。特に、3次元加工を施して立体的な意匠を実現した無垢材パネルにはとりわけ注目が集まりました。現場見学会の参加者からは「耐力壁の施工状況を実際に見ることができ、大変勉強になった」「施主の立場として木造を採用する際は相談させてほしい」といった声が聞かれました。
㈱ウッドエンジニアリングは今後も引き続き、木造及び混構造の中大規模建築分野に取り組む方針です。


