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国土交通省 「住宅分野における建設技能者の持続的確保懇談会 担い手確保に向けた施策の方向性をとりまとめ
対策の方向性を四つの視点で整理
国土交通省は11月5日、「住宅分野における建設技能者の持続的確保懇談会」のとりまとめを公表しました。同懇談会では、質の高い住まいの安定的な供給や、適切な維持管理・更新を担う住宅建設技能者を持続的に確保するため、今年2月から5回にわたり議論を重ねてきました。
本とりまとめでは、住宅建設技能者を取り巻く課題として、他産業と比較して不安定かつ不十分な就労環境や技能の継承の難しさと教え手の不足、女性が働くのが難しい職場環境等が挙げられました。そして、これらを踏まえて今後検討すべき対策の方向性が「選ばれる業界・職場への変革」「育成環境の整備」「担い手の裾野の拡大」「マネジメントの強化」の四つの視点に基づきまとめられました。
魅力ある就労環境づくりを官民連携で取り組む
「選ばれる業界・職場への変革」としては、他産業では一般的ではない雇用形態や就労環境を改善し、長く働き続けたいと思える業界・職場への変革と、住宅建設技能者の魅力の発信及びやりがいの醸成が図られます。具体的には、個人事業主である一人親方が多かったこれまでの業界において、正規雇用に転換する社員大工化を促進することが挙げられています。業務の繁閑差により継続的な雇用が困難、個社で育成するための時間的・金銭的余裕がないといった状況に対し、技能者に施工管理や事務作業等を担わせる「多能工化」や、複数社が共同で研修・教育を行うことで社員大工化を実現している事例を横展開して一般化すべきとしています。そのほか、正規雇用を前提とした月給制、週休二日制の整備や、キャリア形成の見える化などが挙げられました。
「育成環境の整備」としては、教育機関等と連携した情報発信や、入職後の新たな育成体制の構築が目指されます。建設業全体で進んでいる若年者入職促進に向けた産学官の連携を、住宅分野でも全国レベル・地域レベルともに取り入れるほか、一定の経験を積んだ若手の大工を積極的に指導者として育成するといった体系的な育成体制のあり方を検討すべきとしています。
また、担い手確保においては、これまで入職が進んでいない女性や外国人が適切に働ける環境整備、高齢の技能者の活躍促進など、「担い手の裾野の拡大」に向けた方策の検討も必要としています。快適なトイレ環境や更衣室の整備といったハード面と、出産・育児などによる離職・休業後の円滑な復帰ができる環境整備などのソフト面の両面で現場の在り方を見直すことに加え、技能者の間で体力面、言語面で差異がある中、住宅供給のどのような工法、工程、プロセス、業務において能力が十分に発揮されるか検討を進めるべきとしています。
中長期ビジョンを策定予定
加えて、これまで挙げられた取り組みを行うためには、企業グループ間のアライアンスなどによる経営基盤の強化、リフォームや非住宅木造建築物など新規分野へのビジネスモデルの展開、生産性の向上に資する技術の導入・活用などによる「マネジメントの強化」が必要としています。
今後、国土交通省は関係省庁と連携し、四つの視点と方向性に基づいた具体的な検討を行い、「住宅建設技能者の持続的確保に向けた中長期ビジョン(仮称)」の策定が進められる方針です。
国土交通省 報道発表資料
https://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_001316.html

