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ニュース&レポート

国土交通省 2023年住生活総合調査 住宅満足度は向上、 持ち家志向は低下傾向に

 国土交通省は5年に一度、住宅及び居住環境に対する居住者の満足度や今後の住まい方の意向等を総合的に調査する「住生活総合調査」を実施しています。この度、約10.8万世帯を調査対象とした202312月時点の調査結果が公表されました。今回は本調査の結果のうち、ポイントとなる部分をご紹介します。

住宅の不満率は低下傾向、居住環境は横ばい

 住宅及び居住環境に対する総合的な評価に関しては、不満率はこれまで継続して減少しており、1983年では38.4%だったものが、2023年では21.2%となっています。住宅に対する不満率は総じて減少傾向にあり、これまでの調査で最も不満率が高かった1988年の51.5%から2023年は23.1%となっており、住宅性能が着実に向上していることが分かります。一方、居住環境に対する不満率は10年前と比べて横ばいとなっています。1983年から2008年までは住宅に関する不満率が上回っていましたが、2013年以降は居住環境に関する不満率の方が高い状況です(図1)。持ち家・借家別に見ると、居住環境に対する不満率は持ち家で27.0%、借家で27.4%と同水準ですが、住宅に対する不満率は持ち家で19.7%なのに対し、借家で31.8%と比較的高くなっています。また、家族類型別の住宅及び居住環境の不満率を見ると、「親と子から成る世帯(長子17歳以下)」は、一貫して減少傾向にあるものの、「単独世帯(64歳以下)」は2013年以降横ばい、「高齢者世帯単独(65歳以上)・夫婦(家計主65歳以上)」は同年以降微増となっています。

不満率の推移

 住宅の個別要素に対する不満率については、「高齢者への配慮(段差がない等)」が43.4%と最も高く、次いで「断熱性」が41.1%、「エネルギー消費性能(光熱費の節約)」が39.7%、「地震に対する安全性」が38.4%、「いたみの少なさ」が37.9%となっています。居住環境では、「近隣のシェアオフィスなど自宅や職場以外で仕事のできる環境」が45.9%と最も高く、次いで「敷地やまわりのバリアフリー化の状況」が43.2%、「文化施設(図書館等)の利便」が37.4%、「周辺からの延焼のしにくさ」が34.8%、「道路の歩行時の安全性」が34.5%となっています。

子育て世帯は「広さや間取り」を最重要視

 住宅及び居住環境に関して重要と思う項目については、「最も重要」と「次に重要」の回答を足し合わせて見ると、「日常の買い物などの利便」が40.3%と最も高く、次いで「治安」が36.1%、「医療・福祉・介護施設の利便」が27.1%、「通勤・通学の利便」が23.4%、「地震に対する安全性」が22.4%となっています(図2)。長子が17歳以下の子育て世帯に絞ると、住宅及び居住環境に関して重要と思う項目では、「広さや間取り」が20.1%と最も高く、次いで「治安」が12.0%、「通勤・通学の利便」が11.1%となっています。全世帯の値と比較すると、「広さや間取り」(+8.3ポイント)、「治安」(+2.5ポイント)、「通勤・通学の利便」(+4.6ポイント)について特に大きな差となっています。

住宅居住環境に関して需要と思う項目

高齢者の単独・夫婦世帯の住み替え理由は「高齢期の住みやすさ」

 最近5年間に実施した住み替え・改善の状況については、住み替えを行った世帯が19.1%、住み替えを行わずに現住居をリフォームした世帯が25.4%、建て替えを行った世帯が0.8%となっています。最近5年間に「住み替え」を実施した世帯について、家族類型別に見ると、「単独世帯(64歳以下)」が49.2%と最も高く、次いで、「親と子供から成る世帯(長子17歳以下)」が34.7%、「夫婦(家計主64歳以下)」が29.6%となっています。住み替え等の理由について、持ち家・借家別に上位3項目を見ると、持ち家では「単独世帯(64歳以下)」、「親と子供から成る世帯(長子17歳以下)」はともに、「自宅を所有するため」の割合が最も高く、「単独世帯(65歳以上)」、「65歳以上の夫婦世帯」はともに、「高齢期の住みやすさ」の割合が高くなりました。借家では「単独世帯(64歳以下)」、「親と子供から成る世帯(長子17歳以下)」はともに、「世帯からの独立(結婚、離婚、単身赴任などを含む)」の割合が最も高く、「単独世帯(65歳以上)」、「65歳以上の夫婦世帯」はともに、「立ち退き請求、契約期限切れのため」の割合が高い結果となりました。

持ち家志向及び新築へのこだわりは低下傾向

 今後の住み替え意向を見ると、「住み替え意向がある」とする世帯は21.4%となっています。家族類型別に見ると、「単独世帯(64歳以下)」で42.4%と他の世帯と比較して最も高く、次いで「夫婦(家計を主に支えるものが65歳未満)」が33.8%、「親と子供から成る世帯(長子17歳以下)」が31.9%となりました。住み替えの主な目的を持ち家・借家別に見ると、「単独世帯(65歳以上)」、「65歳以上の夫婦世帯」はともに持ち家への住み替えは「高齢者の住みやすさ」、借家への住み替えは「住居費負担の見直し」の割合が高くなっており、「親と子供から成る世帯(長子17歳以下)」では、持ち家・借家ともに「子どもの誕生・成長・進学」の割合が高くなっています。

 現在の所有関係(持ち家・借家)別に見ると、「現在持ち家の世帯」は、「持ち家への住み替え」意向が58.6%、「借家への住み替え」意向が19.4%となっています。「現在借家の世帯」は、「持ち家への住み替え」意向が33.2%、「借家への住み替え」意向が48.8%となっています。「持ち家への住み替え」意向は、「現在持ち家の世帯」が「現在借家の世帯」より25.4ポイント大きく、「借家への住み替え」意向は、「現在借家の世帯」が「現在持ち家の世帯」より29.4ポイント大きい結果となりました。経年変化を見ると、「現在持ち家の世帯」、「現在借家の世帯」ともに「持ち家への住み替え」の意向が減少し、「借家への住み替え」の意向が増加しています(図3)。更に、持ち家への住み替え後の居住形態(新築住宅・既存住宅別)については、現在の所有関係(持ち家・借家)別の経年変化を見ると、「現在持ち家の世帯」の住み替え先の意向については、「新築住宅」及び「特にこだわらない」が減少し、「既存住宅」が増加しています。「現在借家の世帯」の住み替え先の意向についても、同様の傾向にあります。

国土交通省 2023年住生活総合調査
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/r5_jyuseikatsu_sougou_chousa.html