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政府 2026年度予算概算要求 過去最高額更新の122兆円 持続的な経済成長を支える住宅・企業支援施策を強化

 財務省は9月3日、2026年度予算の各省庁の概算要求総額が一般会計で122兆4,454億円になったことを発表しました。賃金や調達価格の上昇も踏まえ、2025年度の予算額115兆1,978億円を上回り、過去最高額を更新しました。今回は本概算要求の内容のうち、国土交通省、環境省、経済産業省における住宅・企業支援施策等についてまとめました。

国土交通省 「住宅ストック循環促進事業」を新たに創設

 国土交通省の2026年度予算概算要求額は、7兆812億円(前年度当初予算比1.19倍)となりました。このうち住宅局関係では、①住まい・くらしの安全確保、良好な市街地環境の整備、②既存ストックの有効活用と流通市場の形成、③誰もが安心して暮らせる多様な住まいの確保、④住宅・建築物における持続可能な社会の構築を重点施策のポイントとし、概算要求額は2,068億円(同1.20倍)となりました。

 ①では、南海トラフ巨大地震の新被害想定などを踏まえて防災・減災対策を着実に促進するとしています。耐震性が不十分な住宅・建築物を概ね解消する耐震化目標の達成に向けた改修・除却・建て替え等の支援を含めた「住宅・建築物防災力緊急促進事業」として132億円を要望されるほか、住宅市街地における水害対策を総合的に支援する事業が新たに創設されます。

 ②では、多世代にわたり活用されるストックを形成し、適正な維持管理等を通じ、市場で適正に評価され、循環するシステムの構築が目指されます(図1)。新規の「住宅ストック循環促進事業」への予算として3.74億円が要望され、既存住宅の流通量の増加や住宅取引時における情報開示、消費者支援体制の整備等が促進されるほか、空き家が急増する恐れのある既成住宅地において、子育て世帯等が暮らしやすい住環境の整備を図る事業の創設などが盛り込まれました。

 そのほか、③ではUR賃貸住宅を活用した近居による子育て支援やサービス付き高齢者向け住宅整備事業の延長等が盛り込まれたほか、④ではサーキュラーエコノミーの実現に資する既存住宅の改修に対する支援、ZEH水準の省エネ性能が確保された賃貸住宅への支援に向けた予算拡充が要求されました。

住宅ストックの循環イメージ

国土交通省

環境省 新築・既存住宅のZEH化を促進

 環境省の2026年度予算概算要求額は、7,097億円(同1.19倍)となりました。ウェルビーイングで高い生活の質の実現に向け、炭素中立(ネット・ゼロ)、循環経済(サーキュラーエコノミー)、自然再興(ネイチャーポジティブ)等の環境政策を通じた地域経済の持続的成長や、国際競争力の強化が図られます。エネルギー対策特別会計予算としては3,128億円(同1.59倍)を要望し、そこから経済産業省・国土交通省と連携して住宅の脱炭素化を支援する「住宅の脱炭素化促進事業」に90億円が充てられる方針です。

 本事業のうち、「戸建住宅・集合住宅のZEH化・省CO2化促進事業」では、新築・既存住宅のZEH化等が支援されます。具体的な補助額は、新築戸建住宅のZEHには地域区分1~3地域で55万円/戸、4~8地域で45万円/戸、ZEH+の場合は1~3地域で90万円/戸、4~8地域で80万円/戸と設定されています。また、これらに加えて蓄電システム、CLT(直交集成板)、EV充電設備等も別途補助される予定です(図2)。既存住宅のZEH化には、上限を250万円/戸として改修費用の1/3相当を定額補助するとしています。

 そのほか、「既存住宅の断熱リフォーム支援事業」では、暖冷房エネルギーの削減率が15%以上となるような断熱材、窓・ガラス等の改修の「トータル断熱」と、主要居室の全部の窓の改修の「居間だけ断熱」に対し、改修費用の1/3が補助額として設定されます。補助上限額は、一戸建住宅は120万円/戸、集合住宅は15万円/戸(玄関ドアも改修する場合は上限20万円/戸)となります。

戸建集合住宅の促進事業補助額

環境省

経済産業省 中堅・中小企業の成長投資を引き続き支援

 経済産業省の2026年度予算概算要求額は、2兆444億円(同1.19倍)となりました。今年度の方針は、高付加価値の成長投資の促進や賃上げの定着、不確実なグローバル環境と交易条件の悪化に対応する経済基盤の構築などを含む「2040年GDP1,000兆円を目指す成長戦略・構造改革」と、福島復興、能登半島地震からの復興、産業のレジリエンス・安全の向上を図る「経済社会の基盤を支える最重要課題」の二つを柱としています。

 エネルギー対策特別会計予算としては1兆4,551億円(同1.20倍)を要望し、省エネ化及びGXの推進に向けた補助事業等を展開する方針です。消費者の家庭でのエネルギー消費量削減のために高効率給湯器の導入を支援する「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金」には550億円が充てられるほか、工場・事業場において実施されるエネルギー消費効率の高い設備・機器への更新等を支援する「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」には国庫債務負担行為要求額として2,025億円、今年度の概算要求額として1,810億円が充てられています。加えて、既存賃貸集合住宅における小型の省エネ型給湯器(エコジョーズ等)の導入に係る費用を補助(定額)する「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業」には25億円を計上しています。

 一般会計予算としては4,285億円(同1.22倍)を要望し、このうち60億円を、2023年度の経済対策で創設された「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」に充てるとしています。省力化等による労働生産性の向上に資する設備投資への補助「大規模成長投資補助金」と、経営体制の整備に向けた経営人材の受け入れへの給付金「地域企業経営人材確保支援事業給付金」により、中堅・中小企業の人手不足への対応が引き続き支援される見通しです(図3)。

中堅中小企業賃上げ事業スキーム

経済産業省