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ウッド・チェンジ協議会 「内装木質化した建物事例とその効果」最新版を公表 内装木質化の効果に関する科学的データを取りまとめ

経済・建築・木材供給関係団体など、川上から川下までの幅広い関係者が一堂に参画する官民協議会「ウッド・チェンジ協議会」は3月、内装木質化の効果に関する科学的データ等を取りまとめた「建物の内装木質化のすすめ『内装木質化した建物事例とその効果』」を公表しました。今回は、本書の概要と公表された実証データの一部をご紹介します。 

内装木質化の効果を8種類に整理

 「建物の内装木質化のすすめ『内装木質化した建物事例とその効果』」は、建築主などの事業者及び設計士などに向けた、店舗や事務所などの内装木質化をはじめとする建築物での木材使用を検討する上での参考資料として、ウッド・チェンジ協議会が作成した冊子です。同協議会が2021年度に公表した「内装木質化した建物事例とその効果」の改訂版となります。

 本書では、内装木質化による効果が「心理面の効果」「身体面の効果」「衛生面の効果(屋内環境の改善効果)」「学習・生育面の効果」「生産性の効果」「経済面の効果」「企業価値向上の効果」「社会貢献する効果」の8種類に整理されています(図1)。その上で、近年木質化が実施された建物の実例や木質化の効果に関する利用者の声や、これまでに発表されている研究論文等を基に、木材の良さに関する科学的なデータがまとめられています。

8種類に整理された内装木質化の効果

>林野庁 民間建築物等における木材利用促進に向けた協議会(ウッド・チェンジ協議会)

身体面の効果 疲労感を緩和する効果

無垢材と認識すると、作業の誤りが減少し疲労を抑える可能性

 印刷された木目(木目シート)、突板(薄い木材の板)、無垢材(厚みのある木材の板)で作業用ブースを内装し、ブース内でパソコンを使った視覚探索課題を行ってもらったときの作業能率等を測定しました。実験参加者は、最初は材質の説明を受けずにパソコン課題を行い、その後材質の説明を受けて再度同じ課題を行いました。内装の材質についての説明を受けてから作業を行うと、木目シートブースの方が無垢ブースよりもエラー数が多く、また木目シートブースでは説明前に比較して説明後にエラー数が多いという結果になりました。このことから、エラー数を疲労の指標とすると、材質を認識した状態においては、無垢ブースの方が木目シートブースより疲労が抑制される可能性が示唆されました。また、材質が木目シートであると認識することが疲労を増加させる可能性も示唆されました。

身体面の効果

出典/岡田 他:日本建築学会環境系論文集、2022

生産性の効果 作業性・業務効率を高める効果

店舗の内装木質化が職員のストレス軽減、来客の印象向上へ

 金融機関における職員や来客者のストレスや居心地が内装木質化によって改善するか、実店舗で職員及び来客者にアンケート調査を行いました。木質化店舗と非木質化店舗で比較したところ、職員による執務環境の評価は、「接客時の非ストレス度」や「リラックス度」「親しみやすさ」などについて、木質化店舗の方が高い傾向を示しました(左下図)。また、来客者の店舗の雰囲気に関する印象は、「魅力」「居心地」「温かみ」「香り」について、木質化店舗の方が高い傾向を示しました(右下図)。さらに、店舗の来客スペースに木質家具を設置し、その印象についてアンケートを取ったところ、来客スペースに近い席の職員の方が他の職員よりも高印象であり、来客者も半数以上が高印象であることが分かりました。このことから、店舗内装の木質化や木質家具の導入によって、職員のストレスが軽減し、職員や来客にとっての店舗印象が向上する可能性が示唆されました。

生産性の効果

出典/安江、佐藤 他:日本建築学会大会学術講演梗概集、建築計画、2021

安江 他:日本建築学会大会学術講演梗概集、建築計画、2022

企業価値向上の効果 企業等のブランド力アップ・理念のピーアール効果

木材使用に取り組む企業に好印象のビジネスパーソンが多数

 建築物に関わる事業者に対し木造・木質建築のイメージと課題を明らかにすることを目的としたインターネット調査が行われました。木造や木質化を提案したことのある設計者・施工者は、住宅分野(4階建て以上)で19.3%、非住宅分野では40.7%を占め、住宅よりも非住宅において積極的な木造・木質化の提案を行っていることが分かりました。一方、建築物を利用するビジネスパーソンへのアンケートにおいて、勤務先が商業ビル内にあると回答した人に対して、「木材を使った建物に取り組む企業に対し好感を持つか」と質問したところ、全体の94.5%が好印象を持つと回答しました(右図)。このことは、非住宅における木造・木質化の積極的な推進が、企業のブランド力アップの観点からも期待され始めていることを意味すると考えられます。

企業価値向上の効果

出典/日経 BP 総合研究所「建築物への木材の利用に関する調査」(調査年:2022 9 月)