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国土交通省 社会資本整備審議会住宅宅地分科会 2050年に向けて必要な住宅政策の方向性を議論
昨年10月から住生活基本計画の見直しに着手
国土交通省は5月29日、社会資本整備審議会住宅宅地分科会を開催し、2050年に向けて必要となる住宅政策の方向性について議論を行いました。同分科会は2024年10月より住生活基本計画の見直しを進めており、有識者のプレゼンテーション等を基に議論を重ねてきました。第64回目となる今回は、(一社)住宅生産団体連合会によって新たな住生活基本計画に向けた政策提案などがなされたほか、本計画の見直しにおける議論の方向性が整理されました。
良質な住宅ストック形成や取得環境の整備を提言
(一社)住宅生産団体連合会は、2050年のあるべき姿として五つの項目を挙げ、それぞれに対応する政策案について説明を行いました(図1)。
このうち、「資産として住み継がれる良質な住宅ストック形成」に向けては、長期優良住宅は増加傾向にあるものの空き家を除くストック全体に占める割合は3%程度であることや、建設時には建築確認や性能評価が行われる一方で供用開始後に性能等を適切に維持する仕組みがないこと等を受け、長期優良住宅制度及び性能評価制度の普及と社会状況に応じた機動的な見直し、住宅検査登録制度(住宅版車検制度)の導入といった案が示されました。
また、「ライフスタイル・ライフステージ等に応じた良質な住宅を選択できる社会の実現」に向けては、資材高騰や金利上昇等の要因で住宅取得環境が悪化する一方で建物の高性能化が求められていることから、安定的な住宅取得環境の整備が必要とし、住宅ローン減税等支援制度の機動的な拡充、住宅に係る消費税への軽減税率の導入等及び住宅取得資金の積立に対する支援制度の創設等が提案されました。
議論の方向性を「ヒト」「モノ」「プレイヤー」で整理
同分科会では更に、これまでの議論を踏まえ、2050年に向けて必要となる住宅政策の方向性について「ヒト」「モノ」「プレイヤー」の三つの視点で整理がなされました。
「ヒト」については、地域社会の中であらゆるライフステージにある世帯が「最低限の住生活」を確保できる仕組みの確立に向けて、「住宅市場におけるアフォーダビリティの確保」を目指す考えが示されました。「モノ」については、既存住宅が取引市場を通じて多世代で住み継がれる住宅循環システムの構築を目指すと同時に、居住者が住宅に再投資をし、その結果が適切に評価され、リターンが適切に得られる住宅市場へ変革させることで、住宅資産を生かした高齢期の住生活の維持・充実を図るとしています。「プレイヤー」については、生産年齢人口が減少する中で、民間や行政のあらゆるプレイヤーたちが連携して住宅市場を支えるとともに、国が2050年に向けた方向性の共有を常に主導しつつ、地方公共団体が地域の住生活の姿や多様な関係者の連携のあり方を示すという新たな役割が期待されています。
今後、同分科会はこれらを軸に検討を進め、11月に中間とりまとめを行った後、新たな住生活基本計画の案について議論を行い、2026年3月に閣議決定を目指します。