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ナイス㈱ 「中期経営計画 Road to 2030」を公表 2030年売上高3,000億円へ取り組み加速
ナイス㈱は5月14日、「中期経営計画2023」にて掲げた2030年目標の達成に向けて、2026年3月期を初年度とする5カ年計画「中期経営計画 Road to 2030」へと同計画をアップデートし、公表しました。
外部環境の変化を捉え計画をアップデート
当社は、2023年5月12日開示「中期経営計画2023」に掲げた2030年売上高3,000億円の達成に向けて取り組みを進めており、M&A投資をはじめとする新規事業投資などを計画に基づいて実施しています。一方、当社を取り巻く経営環境は大きく変化しており、長期的に減少が続く新設住宅着工戸数は、2024年に80万戸を割り込むなど減少速度が加速しています。また、木材価格はウッドショックを経て一定の落ち着きを見せているものの、輸入材についてはアメリカの関税政策や為替動向によって相場の不透明感が強く、マンション価格についても建築費や人件費の上昇により高騰するなど、計画策定時の想定を上回る環境変化が起きています(図1)。
こうした環境の変化を踏まえ、2030年目標の達成に向けて更に力強く取り組みを推進するために、2026年3月期を初年度とする5カ年計画「中期経営計画 Road to 2030」へとアップデートしました。
主要な財務指標としてEBITDA及びROAを設定
新計画最終年度となる2030年3月期は、売上高3,000億円、営業利益75億円、親会社株主に帰属する当期純利益45億円を定量目標としています。また、本計画における主要な財務指標として、計画期間中の投資活動を踏まえ、営業利益に減価償却費及びのれん償却額を加算して本業の収益力を示すEBITDA、資産の効率性を示すROAを設定しています。
なお、当社の株主資本コストの水準は、CAPMによる推計で5~6%と認識しています。ROE向上への取り組みを推進し、株主資本コストを上回るROEの実現を目指していきます。また、PERは6~7倍程度にとどまっており、これは将来に向けての株式市場からの評価と考えられます。PERの向上を実現するために、より収益性の高い事業へ経営資源を配分していく方針です。
強みをベースとした事業の競争優位性を発揮
目標の達成に向けて、外部環境の変化に即して事業の競争優位性を発揮していくことが必要となります。当社には、「安定的な供給体制と豊富な顧客基盤」「専門性の高い人材とイノベーション力」「木材活用による脱炭素社会への貢献」の三つの強みがあります。これらの強みをベースに、国産木材の調達力や全国規模の販売網、川上から川下までのサプライチェーン、建築物の木造化・木質化提案機能、都市力の高い戦略エリアにおける豊富な顧客基盤といった事業の競争優位性を有しています(図2)。
新設住宅着工戸数が減少傾向にある一方で木造率は増加しており、建築物における木材利用量は今後、安定的に推移していくと見込まれます。木材流通をルーツとする当社が有する競争優位性を最大限に発揮することで、目標の達成を目指していきます。
既存の枠組みを超えて目標達成へ邁進
現状の課題認識やナイスグループの競争優位性に基づき、新計画において「超・新築」「超・物流」「超・領域」という三つのキーワードとともに具体的な施策としての成長ドライバーを掲げました(図3)。
「超・新築」では、新築住宅市場が縮小する中、市場を超えて非住宅や暮らし領域での国産木材の取り扱いを強化するとともに、住宅ストックビジネスの拡大に取り組むことで、収益基盤の更なる安定に努めます。「超・物流」では、国を挙げてZEH化が進む中、外皮性能に大きく影響するサッシや断熱材、太陽光発電システムなどのエネルギー関連商品を含め、トータルでの提案を強化していきます。また、全国の物流拠点を活用し、建築現場へのラストワンマイル機能を発揮するとともに、部位別施工への対応など機能強化を図ります。「超・領域」では、事業ドメインを超えて多様な分野でコンポーネントとしての国産木材の用途を拡大し、付加価値の高い木質マテリアルメーカーを目指すとともに、木造建築において設計から積算、物流に至るDX化によって業界全体の業務効率化に貢献していきます。
事業戦略実現に向けた人材戦略
これらの成長ドライバーによる取り組みを力強く推進し、事業戦略を実現するためには、人材戦略との連動が不可欠となります。建築士や施工管理技士、宅地建物取引士などの専門スキルの拡充、キャリア採用の充実、サクセッションプランによる次世代の経営層の育成等を推進していきます。具体的には、有資格者延べ1,500名の体制を構築することや、2030年までにキャリア採用によって100名採用することなどを掲げています。加えて、従業員エンゲージメントの向上や健康経営の推進に向けた取り組みも着実に進めていきます。
そしてこのたび、事業戦略の実現を支える人材の確保や育成、活用に関する全般的な方針や施策について審議し、組織の持続的成長に向けた人的資本経営を目指すことを目的に、サステナビリティ委員会の専門部会の一つとして「人的資本部会」を新設しました(図4)。この部会では、事業戦略と連動した人材戦略案の策定と施策の推進、人材育成・キャリア形成の支援の推進などについて検討する予定です。
毎期7円の連続増配で株主還元を充実
株主還元については、株主の皆様への利益還元を安定かつ充実させるため、今後の成長と競争力強化のための資金需要等を勘案しつつ、中長期的な持続的成長を通じた累進配当を導入しています。安定的な利益成長による配当性向30%を目指すに当たり、本計画期間においては継続的に年間7円の増配とすることで、最終年度には1株当たり100円の配当とする計画です(図5)。
なお、株主の皆様の日頃からのご支援に感謝するとともに、当社株式への投資魅力を高め、より多くの株主の皆様により長く当社株式を保有していただくことを目的に、2025年3月期より株主優待制度を導入しております。引き続き、株主の皆様への安定的な利益還元を図っていきます。
本計画で掲げた定量目標や株主還元、人材戦略を実現するために、キャッシュアロケーションを策定しました。本計画期間におけるキャッシュフロー及び資金調達を原資として、株主還元に50億円以上、M&Aや研究開発といった新規事業投資に145億円以上、人的資本投資をはじめとする成長投資に120億円以上を充てていく計画です(図6)。
成長の加速と飛躍的進化で更なる企業価値の向上へ
環境目標については、2026年目標であったナイスグループの事業活動におけるScope1(直接排出)・Scope2(エネルギー使用に伴う間接排出)のカーボンニュートラルを早期に達成しました。今後は、国産木材製品の流通による社会の炭素貯蔵量増加や、太陽光発電システム販売によるCO2排出量削減効果など、削減貢献量※の増加により、2030年目標であるScope3を含むナイスグループのサプライチェーンにおけるカーボンニュートラルを目指していきます。
当社は、社会的存在意義として「樹とともに、人と暮らしをつなぎ、はぐくみ、彩りある未来をつくります」を掲げています。地球温暖化対策として重要な役割を担う森林資源の循環利用に向けて、当社のルーツである木材の利活用を通じて、経済価値のみならず、社会価値及び環境価値の向上と社会課題の解決の一翼を担うべく、本計画に掲げた諸施策を着実に実行していくことで、成長の加速と飛躍的進化を図り、更なる企業価値の向上を実現していきます。
※ 国産木材製品の流通による炭素貯蔵増加量など、事業活動等によって社会全体で削減された温室効果ガスの排出量のこと