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ニュース&レポート

ナイスビジネスレポート編集部 各自治体において太陽光発電設備の設置義務化が拡大

 脱炭素社会の実現に向け、国内における太陽光発電設備の導入量が拡大する中、各自治体における太陽光発電設備の設置義務化が拡大し、様々な制度が新設されています。今回は、今年4月より開始した東京都と川崎市における制度の事例等についてご紹介します。

再生可能エネルギーの普及加速を図る

 脱炭素化に向けた取り組みは世界全体で進められており、今年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」では、再生可能エネルギーの主力電源化の徹底や、再生可能エネルギーの普及拡大に取り組む方針が示されました。これらを踏まえ、各自治体では住宅をはじめとした建築物において、太陽光発電設備等の再生可能エネルギー利用設備設置の義務化が拡大しています。

東京都 再エネ利用設備の設置が必須に

 具体的な事例について、東京都では2050年までの「ゼロエミッション東京」の実現を目指し、2030年までに温室効果ガス排出量を2000年比で50%削減する「カーボンハーフ」を目標としています。これに向け、2022年12月に環境確保条例を改正し、脱炭素社会の実現に向けた実効性ある取り組みの強化を図る施策の一つとして、中小規模新築建物に対する「建築物環境報告書制度」を創設し、今年4月より施行されました。同制度は、新築住宅等への太陽光発電設備の設置や断熱・省エネ性能の確保等五つの事項を義務付け、翌年度の9月末までに報告書の提出が求められます(図1)。

特定供給事業者に義務付ける五つの事項

 義務対象者は、都内年間供給面積の合計が20,000㎡以上となる大手ハウスメーカー等の建物供給事業者で、同面積が5,000㎡以上の建物供給事業者についても任意での参加申請が可能となります。対象となる建物は、1棟あたりの延べ面積が2,000㎡未満の新築建築物となります。再エネ利用設備設置基準については、建物1棟ごとではなく、建物供給事業者単位で一定容量の設備を設置するものとして基準を設定し、算定式に基づく基準以上の再エネ利用設備を、1年間に供給する建物に設置することとしています(図2)。

設置基準算定式住宅例

 このうち、太陽光発電設備の設置については、日照等の立地条件や住宅の屋根の大きさ等、個々の住宅の形状などを踏まえて太陽光パネルの設置を進め、供給する建物全体で設置基準の達成を求める仕組みとしています。設置基準算定除外が可能となる例として、①水平面(陸屋根)または南を含む東から西向きまでの屋根(南面等屋根)のうち最も大きい屋根の水平投影面積が20㎡未満、②方位または傾斜の異なる南面等屋根が2面以上あり、2番目に大きい屋根の水平投影面積が10㎡未満の両方の条件に適合する住宅が挙げられています(図3)。

川崎市 建築士による太陽光発電設備の説明が義務化

 川崎市では、川崎市地球温暖化対策等の推進に関する条例を2023年3月に改正し、「建築物太陽光発電設備等総合促進事業」が新たに創設されました。その中で、建築士が建築主に対して太陽光発電設備に関する説明を行う「建築士太陽光発電設備説明制度」が今年4月1日より施行されました。建築士は建築物の新築等に係る設計を行う際に、該当設計の委託をした建築主に対して、建築物等に設置することができる太陽光発電設備について、書面を交付して説明することが求められるほか、書面の写しを説明した日から3年間保管することが必須となります。

 また、太陽光発電設備の設置拡大に向け、同市では2024年度より「太陽光発電設備等設置費補助金」制度が新設されました(図4)。今年度は4月14日より受付を開始しており、予算規模を昨年度の約2億円から約8億円まで大幅に拡大するなど、更なる再生可能エネルギーの導入を推進しています。同補助金の対象者は川崎市内の住宅に住む個人となり、新築・既存いずれも申請が可能となります。このうち、PPA及びリースを除いた太陽光発電設備の補助単価については、FITを適用しない場合、補助単価は7万円/kW、補助割合は消費税額を除いた設備の本体購入費や工事費用等の2分の1となり、1件あたりの補助限度額は28万円となります。FITを適用する場合は、定額で4万円/件、1件あたりの補助限度額も同じく4万円となります。いずれも、同市の「太陽光発電設備普及事業者登録制度」の登録事業者が設置し、出力が2kW以上ある設備が対象となります。

太陽光発電等補助金

 申請は同市の電子申請システムにて受け付けており、工事開始後の申請は受付不可となるため、工事開始の4週間前までの申請を呼び掛けています。2025年12月26日を最終受付とし、予算額に達した場合は申請受付が終了するため、早めの申請が推奨されています。

東京都 東京都建築物環境報告書制度の概要
川崎市 地球温暖化対策