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ニュース&レポート

政府 第1次国土強靭化実施中期計画の素案を公表 国土強靭化施策の更なる加速化・深化を図る

 政府は4月1日、近年の度重なる大雨や台風、3月末に発表された南海トラフ巨大地震の被害想定等を踏まえ、自然災害に備えた中期的な計画「第1次国土強靭化実施中期計画」の素案を公表しました。減災や被害の軽減に向けた具体的な施策内容等について紹介します。

事業規模は5年間で20兆円強程度を見通し

 第1次国土強靭化実施中間計画は、改正国土強靭化基本法(2023年6月公布・施行)により新たに法定計画として定められた、国土強靭化基本計画に基づく施策の実施に関する中期的な計画です。今年6月を目途に計画を策定され、2026年度から2030年度までの5年間を計画期間として施行される予定です。なお、事業規模については、今後5年間で約20兆円強程度を目途としています。
 今回の素案では、南海トラフ巨大地震の被害想定等を踏まえて現行計画の見直しが図られています。今後の国土強靭化施策の推進については「災害外力・耐力の変化」「社会状況の変化」「事業実施環境の変化」の三つの変化に対応していくことを基本的な考え方として、更なる加速化・深化が推進される方針です。

防災・減災、国土強靱化の取り組みを切れ目なく推進

 「災害外力・耐力の変化」では、気候変動に伴い激甚化・頻発化する大雨や台風等によって生じる気象災害に対して「適応」と「緩和」の両面から対策を進めるとともに、巨大地震や火山噴火等に係る対策の加速化・深化を図るとしています。

 「社会状況の変化」では、首都直下地震や富士山噴火等に備え、東京に集中している様々な中枢管理機能のバックアップ体制の整備等を進め、危機管理強化を図ることの重要性について言及しており、国土強靱化と地方創生の連携を強化し、一体的に推進する方針です。

 「事業実施環境の変化」では、自然災害の激甚化・頻発化による災害対応の長期化を想定し、初動対応から復旧・復興に至る災害対応フェーズにおいて、特定の地域・人材等に過度な負担が生じないよう、広域的な連携体制の強化を図る方針です。迅速かつ効率的な対応が可能となるよう、持続可能な体制構築に向けた取り組みが推進されます。

 これらの基本的な考えを踏まえ、計画期間内に実施すべき施策として「国民の生命と財産を守る防災インフラの整備・管理」「経済発展の基盤となる交通・通信・エネルギーなどライフラインの強靱化」「デジタル等新技術の活用による国土強靱化施策の高度化」「災害時における事業継続性確保を始めとした官民連携強化」「地域における防災力の一層の強化」の五つを柱とする全324施策が挙げられました。このうち、推進が特に必要となる施策として全116施策が示されており、20年から30年程度の期間を目安として、国土強靭化のレベルを一段上の水準に引き上げることが目指されます(下図)。政府は今後、国土強靭化推進本部において示された概ねの事業規模を踏まえ、施策内容やKPIの精査を進めたうえで、今年6月を目途に計画を策定する予定です。

・国民の生命と財産を守る防災インフラの整備・管理
 国民の生命・財産・暮らしを守り、魅力あふれる多様な地域・国土を未来に引き継ぐため、長期的な視点に立ち、防災インフラの整備・管理や老朽化対策を着実に推進する。
 AI・ドローン等の最先端のデジタル等新技術の活用により、ハード面・ソフト面から対策を講じ、次世代にわたり機能するインフラへの転換を図る。

施策表 インフラの政府管理

・経済発展の基盤となる交通・通信・エネルギーなどライフラインの強靱化
 確実な点検・診断の実施や災害耐力の低下をもたらす致命的な損傷の早期解消、運営基盤の強化等を推進し、予防保全型メンテナンスへの早期転換を図るとともに、急所となる施設・設備や災害時の重要施設に接続するライフラインの耐災害性強化を図る。

施策表 ライフラインの強靭化

・デジタル等新技術の活用による国土強靱化施策の高度化
 革新的なデジタル等新技術を、発災直後の過酷な環境下における初動対応から復旧・復興段階に至るあらゆる災害対応フェーズにおいて積極的に活用できるよう、平時も含めた運用体制の強化を図り、フェーズフリーな活用環境の整備を推進する。

施策表 デジタル等施策の高度化

・災害時における事業継続性確保を始めとした官民連携強化
 災害に強い社会構造への転換に向け、これまで国民一人ひとりが進めてきた住宅の対災害性強化や、民間企業が進めてきた施設の耐災害性強化、事業継続計画の策定等の取り組みに加え、地方創生や持続可能なまちづくりとの連携強化により、地域の事情に応じた創意工夫を官民連携で創出する取り組みを強力に推進する。

施策表 デジタル等施策の高度化

・地域における防災力の一層の強化
 被災地において被災者が安全・安心して生活できる避難所環境や支援者が最大限の力を発揮できる活動環境の整備を推進し、地域の災害時自立性の強化を図るとともに、長期に及ぶ避難生活や復旧・復興を持続的に支援できるよう、広域連携体制の強化を図る。

施策表 地域における防災力の一層の強化

国土強靱化推進本部