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2025年度予算概算要求 過去最高額更新の117兆円 カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを強化
財務省が公表した2025年度予算の概算要求総額は117兆6,059億円となり、社会保障費や防衛費の増大などにより、2024年度の114兆3,852億円を上回る過去最高額となりました。今回は、国土交通省、環境省、経済産業省、林野庁における概算要求のうち、住宅・建築物、木材業界に関連する項目を中心にご紹介します。
国土交通省
三つの基本方針で諸施策を推進
国土交通省の2025年度予算概算要求額は、7兆330億円(前年度当初予算比1.18倍)となりました。「国民の安全・安心の確保」「持続的な経済成長の実現」「個性をいかした地域づくりと分散型国づくり」の三つを基本方針として、災害対応力の強化、防災・減災、DX・GXの推進等に取り組む方針です。
具体的な内訳として、「南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策等の推進」に2,771億円、「密集市街地対策や住宅・建築物の耐震化の強化」に392億円が要求されるなど、国土強靭化の推進に向けた施策が講じられます。また、脱炭素社会の実現に向けたGXの推進については、「脱炭素効果の高い住宅・建築物の普及や木材利用の推進などを通じた住宅・建築物の脱炭素対策等の強化」に1,263億円、「グリーンインフラ、まちづくりGX等のインフラ・まちづくり分野における脱炭素化の推進」に193億円が要求されています。更に、「多様な世帯が安心して暮らせる住宅セーフティネット機能の強化」に835億円を要求するなど、安心して暮らせる住まいの確保と魅力ある住生活環境の整備を進める方針です。
住宅関連施策は耐震化と脱炭素が軸
住宅局関係予算としては2,088億円(同1.2倍)が要求され、①「住まい・くらしの安全確保、良好な市街地環境の整備」、②「既存ストックの有効活用と流通市場の形成」、③「住宅・建築物における脱炭素対策等」、④「誰もが安心して暮らせる多様な住まいの確保」、⑤「住宅・建築分野のDX・生産性向上の推進等」の五つが重点施策のポイントに掲げられています(図)。
①では、「住宅・建築物防災力緊急促進事業」に300億円が要求され、令和6年能登半島地震を踏まえ、住宅・建築物における耐震化及び防災性の確保、地域の防災拠点となる建築物の整備等に対して緊急的に支援がなされます。②では、既存ストックの長寿命化と更新による良質な住宅ストックの形成が目指され、「空き家対策総合支援事業、空き家再生等推進事業」に79億円が要求されたほか、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」が継続して実施されます。
③では、既存住宅・建築物ストックの省エネリフォームの促進や、ライフサイクルカーボン削減に向けた取り組みに加えて、優良な木造建築物等の整備への支援等を通じて、木材利用の促進が図られます。④では、住宅ストック等の子育て世帯向け改修や既存建築物のバリアフリー改修等が支援されるほか、⑤では、建築確認のオンライン化や建築BIMによる建築確認の推進などによって生産性の向上が目指されます。
環境省
ウェルビーイングで高い生活の質を実現
環境省の2025年度予算概算要求額は、8,704億円(同49%増)となりました。住宅・建築物関連では、新築住宅・建築物のZEH・ZEB化、既存住宅の高断熱窓への改修、既存建築物への省CO2設備の導入等によって、熱中症対策や健康の維持・増進にも資するストックとしての高付加価値化が図られます。
具体的な施策として、「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2化加速化支援事業」に1,300億円を要求し、既存住宅の省エネ化によってエネルギー費用負担の軽減や住まいの快適性の向上を図り、ウェルビーイングで高い生活の質の実現に貢献する方針です。また、「住宅のZEH・省CO2化促進」には115億円が、「建築物等のZEB化・省CO2化普及加速」には100億円がそれぞれ要求され、健康で快適なZEHの普及や高断熱化の推進、建築物のレジリエンス向上などが図られます。
経済産業省
GX・省エネ投資を推進
経済産業省の2025年度予算概算要求額は、2兆3,596億円(同23.7%増)となり、GXの実現とエネルギー安定供給の確保、経済安全保障の確保、国民の所得向上などが目指されます。
GX・省エネ投資の推進に向けた施策の一つとして、「高効率給湯機導入促進による家庭部門のエネルギー推進事業費補助金」が継続実施となり、580億円が要求されています。同事業では、家庭におけるエネルギー消費量を削減するために必要な高効率給湯機の導入に関する費用が補助されます。特に、昼間の余剰電力を活用できる機種等について補助額の上乗せを行うとともに、高効率給湯機導入と併せて寒冷地における高額な電気代の要因となっている蓄熱暖房機等の設備を撤去する場合には、補助額の加算措置が行われます。
また、「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費」として1,743億円が要求され、工場・事業場において実施されるエネルギー消費効率の高い設備への更新等に対して支援がなされ、温室効果ガスの排出削減と日本の産業競争力強化の実現が図られます。
林野庁
カーボンニュートラル実現に向けた総合的な対策
林野庁の2025年度予算概算要求額は3,478億円(同15.8%増)となりました。「森林・林業・木材産業グリーン成長総合対策」では156億円が要求され、川上から川下までの森林・林業・木材産業政策が総合的に推進されます。このうち、新たに創設された「森林の集約化モデル地域実証事業」では、循環利用に取り組む林業経営体への森林の集積・集約化を進めるため、地域の森林の将来像の作成・共有、境界確定、関係者間でのデジタル森林情報の共有等が支援されます。
また、「林業・木材産業循環成長対策」では、路網の整備及び機能強化、再造林の低コスト化、エリートツリーの安定供給などに加えて、木材加工流通施設の整備、公共建築物の木造化、建築物木材利用促進協定締結者による商業施設の木質化などが推進されます。「建築用木材供給・利用強化対策」では、木造中層建築物に関する設計や木質耐火部材・JAS構造材の技術開発、製材やCLT等を用いた建築物の低コスト化に向けた技術開発や設計・建築実証等が支援されます。
花粉症解決に向けた取り組みを継続的に実施
「花粉症解決に向けた総合対策」では35億円が要求され、花粉発生源となるスギ人工林を約2割減少させることを目指し、花粉が多いシーズンでも現在の平年並みの花粉量となるよう、花粉症対策初期集中対応パッケージに掲げられた取り組みが実施されます。具体的な取り組みとして、「スギ人工林の伐採・植え替え等の加速化」では、スギ人工林伐採重点区域において、伐採と植え替えの一貫作業や路網整備、森林所有者への働きかけ支援による意欲ある林業経営体への森林の集約化が促進されます。また、「スギ材需要の拡大」では、住宅分野におけるスギ材製品の利用促進、集成材工場や保管施設等の整備、需要拡大に向けた機運の醸成などが推進されます。