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2020年度 次世代省エネ建材支援事業 調査報告書を公表 コロナ禍の断熱改修に9割がメリット実感

 (一社)環境共創イニシアチブ(SII)はこのほど、2020年度の「次世代省エネ建材の実証支援事業」の調査報告書を公表しました。今回は、同報告書のうち、事業者に実施したアンケートの結果について、その概要をまとめました。

断熱改修工事の目的は居室の快適性の向上が9割超

 「次世代省エネ建材支援事業」は、既存住宅において工期短縮が可能な高性能断熱材や、快適性向上にも資する蓄熱・調湿建材といった、省エネ改修の促進が期待される次世代省エネ建材の効果の実証を支援する、経済産業省による補助事業です。2020年度の採択件数は、一戸建住宅及び集合住宅を対象として、短工期で施工可能な高性能断熱パネルや潜熱蓄熱建材等の省エネ建材を用いた断熱改修を行う「次世代建材支援事業」が477件、一戸建住宅のみを対象として外張り断熱にて住宅の外皮全ての断熱改修を行う「次世代リフォーム実証事業」が1件となっています。

 執行団体である(一社)環境共創イニシアチブ(SII)が公表した2020年度事業の調査報告書では、同事業において断熱改修を実施した補助事業者に対するアンケート調査(※)の結果が掲載されています。これによると、リフォーム工事を実施した理由については、「室内の暑さ/寒さ対策」が最も多く82.5%、次いで「築年数に応じた老朽化のメンテナンスのため」が60.6%で続いています(図1)。また、30.2%がリフォームの検討を進める中で、断熱改修工事の実施を決めていました。

 断熱工事を実施したきっかけについては、「自ら調べて実施した」が47.3%、「リフォーム業者(工務店)に薦められたから」が44.8%と拮抗しました。断熱改修工事の目的については、「リビングなど主な居室の暑さ/寒さといった環境を改善するため」が最も高く91.3%、「カビや結露の発生などの、宅内環境を改善するため」「光熱費(電気代、ガス代など)を削減するため」がそれぞれ53.0%と52.0%となりました。また、断熱改修と同時に実施した工事については、「内装のリニューアル(間取り変更、仕上げ工事など)」が80.2%、「水回り設備のリニューアル(キッチン、トイレ、風呂など)」が66.9%となりました(図2)。そのほか、7割以上が自宅に住まいながら工事を実施していることなどが明らかとなりました。

断熱改修により7割が光熱費削減効果

 改修工事後の暖房設定温度の変化については、ダイニング・リビングといった主たる居室において「改修前から5℃以上設定温度を下げた」が14.6%、「1℃~4℃設定温度を下げた」が62.5%となり、1℃以上を下げて運用した事業者が全体の77.1%を占めました。平均では、2.3℃低下したほか、38人から暖房を使っていないとの回答が得られました。光熱費の変化については、「安くなった」が17.0%、「やや安くなった」が53.7%と、全体の70.7%が変化を感じている結果となりました。

 断熱改修工事の満足度については、「満足」が60.7%、「やや満足」が31.8%となり、全体の92.5%が一定の満足感を示しました。工事後の状況に対しては、「暖かく快適に過ごせるようになった」が最も高く86.8%、「遮音性が上がり、外の音が気にならなくなった」が54.9%で続いています(図3)。一方で、結露の発生や、二重窓の開閉の大変さなどが不満点として挙げられています。

 

一戸建住宅の断熱改修に高い満足度

 一戸建住宅と集合住宅の住宅種類別で見ると、断熱改修工事を実施した目的について、一戸建住宅では、集合住宅と比べて「トイレやお風呂など水回りの寒さ対策のため」と回答した事業者の割合が高い一方、集合住宅では「カビや結露の発生などの、宅内環境を改善するため」の割合が高くなりました。

 また、コロナ禍において在宅時間が増えたと回答した事業者に対して、断熱リフォームをして良かったと思うことについて聞いたところ、一戸建住宅では約96%が、集合住宅では約87%が何らかのメリットについて回答しました。具体的には、一戸建住宅では、「在宅時間が増えたので暖房の使用頻度は増えたが、思っていたよりも光熱費(電気代・ガス代など)が抑えられた」が64.5%、「部屋のどこにいても暖かいので、家庭内でも密にならずに生活できた」が51.4%となったほか(図4)、その他の個別の回答として、「真冬の風呂が苦にならなくなった」「作業可能な室温になり、複数人のテレワークが室を分けてできるようになって良かった」「例年不快に思っていたコールドドラフトが無くなった」などが得られました。

 そのほか、築年数別で見ると、築年数45年以上の住宅では「暖房の使用頻度が減り、光熱費が安くなった」の割合が44.7%と最も高くなった一方で、45年未満の住宅では40%以下にとどまりました。ただし、築年数に関わらず、約90%が「満足」「やや満足」と回答しており、特に築年数30年以上35年未満の住宅では、「満足」が70%以上を占める結果となりました。

2020年度 次世代省エネ建材支援事業 調査報告書
https://sii.or.jp/meti_material03/survey02.html

※ 調査対象:2022年度 次世代省エネ建材支援事業 補助事業者、調査対象エリア:全国、調査手法:郵送調査、調査期間:断熱改修工事完了~2021年2月