1. TOP
  2. ナイスビジネスレポート
  3. 2030年度温室効果ガス削減目標達成へ  2022年度住宅における省エネ関連施策の動向

2030年度温室効果ガス削減目標達成へ  2022年度住宅における省エネ関連施策の動向

 政府は、2050年カーボンニュートラル実現に向け、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減することを目標として掲げています。このうち、家庭部門については、新たな地球温暖化対策計画において約66%削減という高い目標が掲げられており、昨年来の議論を受け、様々な省エネ関連施策が4月から順次スタートします。今回は、2022年度に開始が決定または予定されている住宅における省エネ関連施策について、その動向を一部抜粋してまとめました。

 

 

ロードマップに基づく取り組みが開始

 現在、2050年カーボンニュートラル達成に向け、住宅・建築物分野については、省エネ性能の確保・向上の取り組みを進めるとともに、再生可能エネルギーの一層の導入拡大に取り組むことが求められています。これらの取り組みを進めるため、昨年には、国土交通省・環境省・経済産業省の3省が連携して「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」が設置されました。同検討会では、2050年に目指すべき住宅・建築物の姿として、ストック平均でZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保されていることと、太陽光発電設備等の再生可能エネルギーの導入が一般的となっていることなどを示しました。その上で、2030年については、「新築される住宅・建築物についてはZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保されているとともに、新築戸建住宅の6割において太陽光発電設備が導入されていること」との目標を掲げ、併せてこの目標達成に向けたロードマップを提示しました(上図)。

 同ロードマップでは、2025年度に住宅の省エネ基準への適合義務化、更に、遅くとも2030年度に省エネ基準をZEH基準(BEI0.8及び強化外皮基準)に引き上げ、適合を義務付けすることなどが明示されています。これを達成するため、2022年度については、「補助制度における省エネ基準適合要件化」「ZEH等や省エネ改修に対する支援の継続・充実」「住宅性能表示制度における多段階の上位等級の運用」「建築物省エネ法に基づく誘導基準の引き上げ」「エコまち法に基づく低炭素建築物の認定基準の見直し」などが規定されています(図1)。

 

2021年度補正予算・2022年度予算等
補助制度で省エネ基準への適合を要件化

 2025年度に予定されている省エネ基準への適合の義務化に先立ち、住宅の新築等を支援する補助制度において、省エネ基準への適合が要件化される予定です。例えば、2021年度補正予算で新設された若者世帯や子育て世帯の省エネ住宅の取得を支援する「こどもみらい住宅支援事業」においても、省エネ基準への適合が必須となっています。

 なお、(独)住宅金融支援機構が提供するフラット35においては、現在、省エネ基準への適合が省エネ性能等の高い住宅を対象とした「フラット35s」の要件となっていますが、2023年度には「フラット35」の要件に引き上げがなされる予定となっています。そのほか、住宅ローン減税制度においても、新築住宅及び買取再販については、2024年度以降には省エネ基準へ適合しない場合は制度の対象から外れることになります。

 

2022年度予算
ZEH・省エネ改修等に対する支援が継続・充実

 ZEHの普及促進については、遅くとも2030年度までに省エネ基準をZEH基準に引き上げて義務化するという目標に向け、今後更に加速していくことが見込まれています。2022年度についても、国土交通省、環境省、経済産業省の3省連携でZEHに対する支援がなされます。

 具体的には、2021年度と同様、国土交通省では「地域型住宅グリーン化事業」において、ZEH経験の少ない中小工務店等が行う省エネ性能に優れた木造住宅の新築に対する支援を行います。環境省では、「戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業」において、ZEH及びZEH+、更に、既存一戸建住宅の断熱リフォームなどについて補助を実施します。

 また、経済産業省では、「住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業」において、ZEHより省エネを更に深堀りするとともに、太陽光発電の自家消費率拡大、更には蓄電システム、燃料電池、V2H充電設備、太陽熱利用温水システムを活用した次世代ZEH+の実証や、既存住宅の改修に対し、先進的な建材や工法を用いた省エネリフォームの実証等を支援する考えです。

 補助額は、「地域型住宅グリーン化事業」におけるZEHについては、1戸当たり140万円(4戸以上の施工経験を有する場合は125万円)となります。「戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業」については、一戸建住宅のZEHの新築に1戸当たり定額55万円、ZEH+には1戸当たり定額100万円が補助されるほか、蓄電池やCLTなどを一定量以上使用する場合は、別途上乗せがなされる予定です。

 

4月1日施行及び10月1日施行予定
省エネ上位等級の創設と長期優良住宅の基準見直し

4月1日施行

 住宅性能表示制度については、今年4月1日より、ZEH水準の等級として、断熱等性能等級5(UA値≦0.6(6地域の場合))、一次エネルギー消費量等級6(BEI≦0.8)が新たに設定されます(図2)。現在、住宅性能表示制度における省エネルギー対策等級については、断熱等性能等級は等級4、一次エネルギー消費量等級は等級5を最高等級とし、評価に当たっては、断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級のいずれか一方を選択することになっています。まずは、省エネルギー性能の一層の向上を図るため、上位等級の創設がなされます。

 

10月1日施行予定

 更に、10月1日には、長期優良住宅の省エネ基準の見直しと、住宅性能表示制度における更なる上位等級の創設が検討されています。長期優良住宅における省エネ性能については、現行では、認定に当たって断熱等性能等級4を求める一方で、一次エネルギー消費量性能については求められていません。これについて、省エネの認定基準をZEH相当の水準とし、断熱性能は断熱等性能等級5とし、更に一次エネルギー消費量等級6までが求められる予定です(図3)。

 住宅性能表示制度については、ZEH水準を上回るより上位の等級として、断熱等性能等級について更に等級6及び等級7の創設が検討されています。等級6及び等級7については、「HEAT20」のG2及びG3と整合させつつ、5地域については目安とした削減率よりも上振れすることから、6地域と同水準とするといった調整が行われています。

 

 

秋頃施行予定
誘導基準及び認定基準をZEH基準に引き上げ

「建築物省エネ法」に基づく誘導基準については、住宅における一次エネルギー消費量の水準をBEI0.8以下(再エネを除く)及び強化外皮基準をZEH相当とする方向で検討されています(図4)。なお、非住宅については、ZEB基準(ZEB Oriented)相当と整合させる方向で検討が進められています。

 

 「エコまち法」に基づく低炭素建築物の認定基準の見直しでは、住宅については「建築物省エネ法」と同様、一次エネルギー消費量をZEH基準のBEI0.8以下、併せて外皮基準を強化外皮基準に整合させる方向で検討されています(図4)。また、同法では現在、一次エネルギー消費量基準と外皮性能基準への適合のほか、節水に関する取り組み、HEMSの設置、木造化などの低炭素化に資する措置として八つの選択項目の中から2項目を講ずることが要件となっています。今回、この認定要件についても見直し、太陽光発電の設置を要件化するとともに、選択項目から一つ以上の適合に変更し、選択項目の中に新たに「V2H充放電設備等の設置」が追加される予定です。

 なお、ZEBの取り組みを推進する観点から、非住宅については、この低炭素建築物の認定基準において求められる一次エネルギー消費量の水準を、ZEB基準(ZEB Oriented)相当の省エネルギー性能に整合させる考えです。具体的には、事務所・学校・工場等については、再生可能エネルギーを除いてBEI0.6以下、ホテル・病院・百貨店・集会所等は同じくBEI0.7以下となる見込みです。

 ※ 関係各主体が共通の認識をもって今後の取り組みを進められるよう省エネ対策強化のおおよそのスケジュールを示すものであり、規制強化の具体の実施時期及び内容については取り組みの進捗や建材・設備機器のコスト低減・一般化の状況等を踏まえて、社会資本整備審議会建築分科会等において審議の上実施する必要がある。

 

脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会
 
国土交通省 社会資本整備審議会 建築分科会
 
長期優良住宅認定基準の見直しに関する検討会
 
図は全て国土交通省資料より作成