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(一財)建設経済研究所 「新型コロナウイルス感染拡大が建設業に与えた影響と対応策」 建設業におけるコロナ禍の影響について中間報告

 (一財)建設経済研究所はこのほど、「新型コロナウイルス感染拡大が建設業に与えた影響と対応策~中間報告~」と題した調査報告書を公表しました。今回は、本報告書の概要についてまとめました。

コロナ禍における建設業の現状を調査・分析

 新型コロナウイルス感染症により、建設業においては、現場の一時休止や感染防止対策による作業能率の低下といった直接的な影響に加えて、民間建築や公共事業などを中心に建設投資額の低迷が懸念されています。(一財)建設経済研究所が発表した調査報告書「新型コロナウイルス感染拡大が建設業に与えた影響と対応策~中間報告~」は、こうした現状の把握と今後の取り組みの方向性について、調査・分析を行うことを目的としたものです。調査については、各都道府県の建設業協会に所属する1万8,829社を対象に、今年6月18日から7月30日を回答期間として実施され、地域を支える中小の建設事業者を中心に1,558社が回答しました。

現場の休止は1割にとどまる

 本調査報告書によれば、現場の休止状況については、2020年3~7月の感染拡大当初は多くの現場が休止されたものの、その数は約1割程度にとどまりました。その後、休止する現場は減少したものの、今年4~6月には地域差はあるものの微増しています。休止する現場が1割程度にとどまった理由については、建設業が地域を支える担い手であることと、建設現場はオープンであり、作業時は三密になるリスクが少ないことを要因として挙げています。現場の閉所状況については約1割が増加、職員の休日取得日数については約2割が増加しました。週休2日制の導入については、約6割が4週間で休日が6日(4週6休)以下と回答しており、同制度の普及が道半ばであることが浮き彫りとなったとしています。

 テレワークについては、建設業の作業の性質上、導入または導入を検討した企業は20%にとどまり、77%の企業が導入する予定はないと回答しています。導入した企業においても、半数が内勤での導入で、それも継続的ではなく感染状況に応じた実施という結果でしたが、外勤部門で導入している企業もあり、企業ごとの工夫が見られたと分析しています。

採用数の減少による将来の担い手確保を危惧

 コロナ禍・コロナ後の働き方の新しいスタイルについては、約90%の企業がコロナ禍で「何らかの取り組みをしている」と回答しています(図1)。具体的には、「出張や外出を自粛・制限」が879件で最も多く、「時間外労働の縮減」が662件、「対面営業の自粛」が553件で続いています。一方、コロナ後の働き方については、時間外労働縮減やオンライン会議はほとんどの企業が引き続き実施したいと考えており、今後テレワークの拡大にも寄与すると考えられています。また、出張や外出、対面営業は再開したいと考えている企業が多いという結果となりました。

 また、採用者数の影響については、2022年度の採用者数の見込みでは、「前年度よりも増加」とした企業が約9%減少して21.1%となったほか、「前年度と同等」が増加し61.3%となりました。2022年度の見込みは、前年度と比べて「同等」「減少」の割合が多くなっており、昨今顕在化している技能労働者不足の解消や将来の担い手確保が危ぶまれる状況にあると述べています。

コロナ禍がIT活用の契機に

 入札・契約の特例措置については、工事開始前で37.5%の企業で書類簡素化やインターネットでの図面閲覧、電子化等の特例措置があったとしています。更に、現場においても、46.3%の企業が特例措置があったと回答しています(図2)。具体的な内容としては、「設計変更協議」が43.6%、「工期の見直し」が33.8%、「一時中止」が16.2%となりました。

 生産性向上の取り組みとして、ICTについては、コロナ禍をきっかけとして5.2%の企業で導入が進んだものの、57.2%の企業が現在も適用していない状況にあります。国土交通省では、2023年度までに小規模を除く公共工事においてBIM・CIMの導入が目指されており、更なる取り組みが必要としながらも、適用が進まない要因として、工事内容とコストが見合わない点などを挙げています。

 ICT以外については、アプリなどを活用して測量や書類作成等の効率を上げる取り組みが中小企業においても普及が拡大しているとしています(図3)。「写真管理・出来型管理、品質管理にITを利用」が489件と最も多く、以下、「発注者への提出書類の簡素化の措置」が374件、「ASP(工事情報共有システム)の活用」が370件、「ウェアラブルカメラ等を用いた検査(遠隔臨場)」が248件で続いています。この点については、新型コロナウイルス感染症拡大が、IT活用が遅れている建設業界においてIT活用を推進する一つの契機になったと考察しています。

 

 

遠隔臨場の原則化等を提言

 本調査報告書では、これらの調査結果を踏まえて、①ICT普及に向けたICT建機等の官側による保有と施工企業への貸与と契約におけるICTに要する費用の計上、②発注者の事務所から1時間以上離れた現場におけるASP、遠隔臨場の原則化、③地方自治体における電子契約普及率の拡大、④4週8休の導入に向けて、就労日数を考慮した技能労働者労務単価の大幅な改善、⑤地方自治体、民間企業発注工事におけるコロナウイルスによる影響に関する設計変更、協議の適切な実施、以上の五つについて提言しています。

(一財)建設経済研究所
https://www.rice.or.jp/others/data_report/