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木材利用促進月間特集 改正木材利用促進法が施行 脱炭素社会に向けて建築物への木材利用を強力に推進

公共建築物等木材利用促進法が改正され、名称を新たに「脱炭素社会の実現に資するための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」として10月1日に施行されました。今回は、同法の改正の趣旨などについてまとめました。

公共建築物等木材利用促進法施行から10年

 今回の法改正は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、森林資源の循環利用を進めることが必要不可欠であり、民間建築物を含む建築物一般で木材利用の促進を図る必要があるとの考えの下、今年6月に衆議院本会議で可決・成立したものです。法律の題名も、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(以下、公共建築物等木材利用促進法)から「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(以下、改正木材利用促進法)と改められ、10月1日より施行されました(図1)。
改正前の公共建築物等木材利用促進法は、木材の利用の確保を通じて林業の持続的かつ健全な発展を図り、森林の適正な整備及び木材の自給率の向上に寄与することなどを目的に、2010年に施行されました。これに基づいて、公共建築物における木材利用に関する基本方針が策定され、国が整備する低層の公共建築物は、原則として全て木造化を図る方針が掲げられました。
これにより、公共建築物の木造化・木進化が推進され、2019年度において国が整備した低層の公共建築物は、用途などにより木造化が困難と判断された施設を除いた80棟のうち、72棟が木造化されるなど、木造率は2年連続で90%に達しています。公共建築物全体で見ても、2010年度が8.3%だったのに対し、2019年度には13.8%にまで上昇しています。
また、木造建築物の耐震性能や防耐火性能等の技術革新、建築基準の合理化が進んだことで、木材利用の可能性が拡大し、民間建築物においても木材利用の動きが広がってきているものの、非住宅分野や中高層建築物の木造率は低位にとどまっています。

 

対象を民間建築物に拡大

 改正木材利用促進法では、①法律の題名及び目的の見直し、②木材利用の促進に取り組む対象の拡大、③木材利用促進本部の設置、④「木材利用促進の日」「木材利用促進月間」の制定、以上の4点について主に改正されました。このうち、①法律の題名及び目的の見直しについては、前述の通り、「脱炭素社会の実現に資する」ことを明示するとともに、木材利用の促進に関する以下の基本理念が新設されました。

 次に、②木材利用の促進に取り組む対象の拡大については、これまでの公共建築物から、民間建築物等を含む建築物一般に拡大されました。また、建築物における木材利用を進めていくため、「建築物木材利用促進協定」という新たな仕組みが設けられました。これは、国または地方公共団体と事業者等との間で締結するもので、国または地方公共団体は同協定を締結した事業者に対して必要な支援を行います。
また、政府における推進体制が整備され、10月1日付で農林水産省に木材利用促進本部が設置されました(③)。同本部は、農林水産大臣を本部長、総務大臣、文部科学大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、環境大臣等の関係大臣を本部員として、基本方針の策定等を行います。
更に、国民の間に広く木材の利用の促進についての関心と理解を深めることを目的として、漢字の「木」という字が「十」と「八」に分解できることにちなみ、10月8日を「木材利用促進の日」、10月を「木材利用促進月間」として法定化し、国等が普及啓発の取り組みを行うことなどが定められました(④)。

 

新たな基本方針案を提示

 林野庁は8月27日、改正木材利用促進法に基づく新たな基本方針の案を公表し、パブリックコメントの募集を行いました。この基本方針では、建築物における木材利用の促進の意義と基本的な方向をはじめ、施策に関する基本的な事項、木材利用の目標、建築用木材の供給確保などに関する基本的な事項などが記されており、パブリックコメントで寄せられた意見等を検討し、木材利用促進本部で決定されます。
この案の中で、基本的な方向としては、同法が定める基本理念を踏まえて、国、地方公共団体、事業者、国民が取り組むべき責務について規定しています。国及び地方公共団体については、木材利用促進に関する施策を総合的に策定・実施し、率先して公共建築物において木材を利用することや、木材利用に関する国民理解の醸成といった従来からの責務が維持されています。
事業者についても、事業活動に関し、木材の利用促進に自ら努めるとともに、国及び地方公共団体の実施する施策などへの協力に努めるといった従来の規定が維持されています。一方で、林業従事者、木材製造業者、設計者等については、建築物を整備する者のニーズを的確に把握するとともに、これらのニーズに対応した品質の確かな木材の供給及びその品質、価格等に関する正確な情報の提供、木材の具体的な利用方法の提案等に努めるとの文言が追記され、木材の安定供給に関する努力義務が規定されました。
国民については、引き続き木材の利用の促進に自ら努めるとともに、国または地方公共団体が実施する木材の利用促進に関する施策に協力するよう努めることなどを求めています。

 

建築物木材利用促進協定制度を創設

 建築物における木材利用の促進に向けた施策としては、CLTや木質耐火部材等など、木造建築物の設計・施工に関する先進的な技術の普及に努めることなどが規定されました。また、関係団体等と連携して、中・大規模木造建築物の設計及び施工に関する情報を提供することや、それらの知識及び技術を有する人材を育成する研修等の施策の実施に努めることなどを求めています。木材利用の促進が森林の適正な整備や地球温暖化の防止に及ぼす効果を定量的・客観的に示す手法の開発・普及や、ESG投資等において評価される建築物の木材利用の評価指標や評価のあり方の検討、建築物において木材利用が環境面や経済面、利用者の心理面、身体面及び生産効率等に及ぼす効果に関する調査研究、及びその成果の発信等に努めることなどが盛り込まれました。併せて、住宅における木材利用の促進についても追記されました。
また、新たに「建築物木材利用促進協定制度」が創設されます。これは、建築物における木材利用促進のため、国または地方公共団体と事業者等との間で締結する協定制度です。同協定が締結された場合、国または地方公共団体は、協定の内容をホームページ等で公表するとともに、締結事業者等に対して、活用できる支援制度や木材利用に関する技術的な情報提供など、必要な支援を実施することが求められます。
そのほか、木材利用の促進の啓発と国民運動として、木材利用促進の日及び木材利用促進月間において、経済界を含む事業者関連団体等とも連携し、木材利用に関する関連イベントの実施、ホームページ等による情報発信などにより、国民運動としての木材利用促進に取り組むほか、木材を活用した優良施設の表彰がなされます。

 

国の公共建築物は原則木造化

 国及び地方公共団体が整備する、学校や社会福祉施設、病院、運動施設、社会教育施設、公営住宅といった公共建築物については、率先してCLTや木質耐火部材等を含む木材の利用に努め、その取り組み状況や効果等を積極的に情報発信していくことで、木材の特性やその利用の促進の意義について国民の理解の醸成を効果的に図ることができるとしています。また、公共建築物以外の建築物における木材利用の促進、更には建築物以外の工作物の資材、各種製品の原材料及びエネルギー源としての木材の利用の拡大といった波及効果なども期待できることから、率先して公共建築物の木造化及び内装等の木質化を促進することが掲げられました。加えて、建築用木材の利用はもちろん、建築用木材以外の各種製品の原材料及びエネルギー源としての木材利用も併せてその促進が図られます。具体的には、木材を原料とした机や椅子、書棚といった備品などの利用、木質バイオマスを燃料とする暖房器具やボイラーの導入などについても促進が図られます。
その上で、公共建築物について、計画時点において、コストや技術の面で木造化が困難であるものを除き積極的に木造化を促進することを掲げました。また、木造と非木造の混構造が、純木造と比べて耐火性能・構造強度・設計の自由度などから合理的な場合もあることから、積極的に採用を検討することも求めました。
更に、公共建築物における木材利用について、積極的に木造化を推進するものは原則として全て木造化を図ることが目標として明記されました。そのほか、国は、高層・低層にかかわらず、エントランスホール、情報公開窓口、記者会見場、執務室など、国民の目に触れる機会が多いところを中心に、内装等の木質化を推進することが盛り込まれました。

 

事業者に対して木材の安定供給に関する努力義務を規定

 建築物における木材利用の促進には、その材料となる建築用木材が適切かつ安定的に供給されることが重要となります。このうち、比較的大規模なものが多い公共建築物においては、柱と柱のスパンの長さや天井高といった構造的特性にも対応した長尺・大断面の木材や、CLT、木質耐火部材等の建築用木材が、適切かつ安定的に供給される必要があります。
そのため、森林所有者、林業従事者、木材製造業者その他の木材の供給に携わる者に対して、木材の適切かつ安定的な供給に努めることを責務として規定し、国は、地方公共団体と連携して必要な施策の着実な推進を図ります。具体的には、林業の生産性の向上や、木材の需給に関する情報の共有、木材の安定的な供給・調達に関する合意形成の促進をはじめ、建築物の整備における木材の利用の動向やニーズに応じた木材の適切な供給のための木材の製造の高度化及び流通の合理化、合法伐採木材等の供給体制の整備等に取り組むことを求めています
そのほか、建築用木材の生産に関する技術の開発等に関して、国は引き続きCLTの普及等を図るほか、木材製造業者等に対しては、強度や耐火性等に優れた、品質・性能が高い建築用木材の生産及び供給や、木材を利用した建築工法等に関する研究及び技術の開発などについて、積極的に取り組むことなどを求めています。
国は、今回施行された改正木材利用促進法に基づき、建築物における更なる木材利用の推進を図り、脱炭素社会の実現に向けた国民運動を展開していくことを目指しています。

脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律
https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/koukyou/

 

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 改正木材利用促進法の施行により、今後、中・大規模建築物における木造化・木質化の市場が拡大していくことは疑いがなく、事業者もこれまで以上に木造化・木質化に取り組むことが求められることになります。ナイスグループでは、木造建築の企画から設計、積算、資材調達、木材加工、施工までワンストップで対応する機能を有しており、事業主様や設計事務所様、建設会社様の様々なニーズに対して、その機能を補完的に提供することで最適な事業の組み立てを提案しています。建築物の木造化・木質化を検討する際には、まずは木造建築のファーストコールセンター「木造テクニカルセンター」までご相談下さい。