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気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書 温暖化の原因は人間活動「疑う余地がない」

 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が8月9日に公表した第6次評価報告書における第1作業部会報告書は、地球温暖化が人間活動によるものであると断定し、極端な豪雨や熱波、干ばつが増加している原因になっていると指摘しています。今回は、人類への最終警告とも言える本報告書が示す、気候変動の現状や今後の予測などについてまとめました。

 

気候変動対策の科学的根拠となる報告書

 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)により1988年に設立された政府間組織で、各国政府が打ち出す気候変動に関する政策に、科学的な根拠を与えることを目的としています。2021年9月現在、195の国と地域が参加しており、世界中の科学者の協力の下、出版された文献や論文等に基づいて定期的に報告書を作成し、気候変動に関する最新の科学的知見からの評価を提供しています。IPCCの評価報告書は、世界の専門家や政府の査読を受けて作成されており、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)をはじめとする国際交渉や国内政策のための基礎情報として、世界中の政策決定者に利用されています。

 IPCCは、気候システム及び気候変動の自然科学的根拠についての評価を行う「第1作業部会」、気候変動に対する社会経済及び自然システムの脆弱(ぜいじゃく)性、気候変動がもたらす好影響・悪影響、気候変動への適応のオプションについての評価を行う「第2作業部会」、温室効果ガスの排出削減など気候変動の緩和のオプションについての評価を行う「第3作業部会」の三つの作業部会で構成されます。今回公表された報告書は第1作業部会によるもので、2013年以来、8年ぶりとなります。

 

過去に前例のない温暖化

 本報告書で注目すべき点は、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と明記し、地球温暖化の原因が人間活動であると断定したことです。これまでの報告書においても、温暖化の主な原因が人間活動である可能性については言及されてきましたが、第3次評価報告書では「高い(66%以上)」、第4次では「非常に高い(90%以上)」、第5次では「極めて高い(95%以上)」といった表現にとどまっていました。これに対して、今回の報告書では、初めて不確実性を取り除き、断言する形で公表されました。

 その根拠となるシミュレーションの一つとして、世界平均気温の実際の観測値に対して、人為・自然起源双方の要因を考慮した推定値と、自然起源の要因のみを考慮した推定値を比較して検証がなされています(図1)。その結果、自然要因のみを考慮した推定値が観測値から大きくかけ離れたのに対して、人為要因を加味した推定値は、観測値とほぼ一致しました。

 また、定量的な評価として、2010~2019年の期間で観測された気温上昇は1.06℃であるとされていますが、そのうち人間活動によるものは1.07℃であるとするデータも示されました。

 更に、本報告書では、大気中の二酸化炭素濃度が、少なくとも過去200万年間のどの時点よりも高いとした上で、世界平均気温について、1970年以降、過去2000年にわたり経験したことのない速度で上昇しており、近年の気温上昇が特異であることを示しました(図2)。

極端な異常気象の頻度が増加

 熱波や大雨、干ばつといった異常気象は、世界各地で激甚化・頻発化しています。今年に入ってからも、6月以降、アメリカの北西部とカナダの広い範囲で熱波に見舞われ、記録的な暑さが観測されたほか、ギリシャでは深刻な熱波による山火事が、ドイツや中国では記録的な豪雨による洪水が発生しました。日本国内においても、7月には大雨によって静岡県熱海市で大規模土石流が発生したのをはじめ、全国の広い範囲で異常気象による水災害が発生しています。

 本報告書では、地球規模の観測が始まった1950年代以降、ほとんどの陸域で熱波を含む極端な高温の頻度が増えたほか、多くの地域で大雨の頻度や強さが増大したとしています。こうした極端な異常気象について、人為起源の気候変動が世界中の全ての地域で既に影響を及ぼしていると指摘しており、過去10年に観測された最近の極端な高温の一部は、気候システムに対する人間の影響なしには発生した可能性は極めて低いと述べています。更に、世界規模での熱波と干ばつの同時発生、人間が住む全ての大陸の一部地域における火災の発生しやすい気象条件、一部地点での複合的な洪水といった複合的な極端な現象についても、人間活動による影響がその発生確率を高めている可能性が高いと言及しています。

 加えて、今後、地球温暖化が進行することで、こうした極端な異常気象が更に増加すると指摘しています。例えば、地球温暖化が0.5℃進行するごとに、熱波を含む極端な高温、大雨、一部地域における農業及び生態学的干ばつなどが目に見えて増加すると予測しています。具体的には、産業革命前には10年に1回程度しか起こらなかったような極端な高温の発生頻度が、気温が1℃上昇した現在において既に2.8倍、上昇幅が1.5℃に達した場合は4.1倍、2℃に達した場合は5.6倍、4℃に達した場合には9.4倍になる可能性が高いと予測しています。また、50年に1回程度しか起こらなかったような極端な高温の発生については、現在で既に4.8倍、産業革命前から1.5℃上昇した場合は8.6倍、2℃上昇した場合は13.9倍、4℃上昇した場合は39.2倍と、気温上昇に伴い発生頻度が更に高まると予測されています(図3)。

五つのシナリオに基づく気候変動の予測

 本報告書では、将来起こり得る気候変動について、二酸化炭素の排出量が「非常に多い(SSP5-8.5)」「多い(SSP3-7.0)」「中程度(SSP2-4.5)」「少ない(SSP1-2.6)」「非常に少ない(SSP1-1.9)」の五つのシナリオを基に予測しています。このうち、「少ない」「非常に少ない」には、21世紀中に二酸化炭素排出量の正味ゼロを達成することを見込んでいます。

 世界平均気温については、全ての排出シナリオにおいて、少なくとも今世紀半ばまでは上昇を続け、今後数十年の間に二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排出量を大幅に減少させない限り、21世紀中に産業革命以降の気温上昇が1.5℃及び2℃を超えると述べています(図4)。今世紀末時点での気温の上昇幅を見ると、「非常に多い」では3.3~5.7℃、「中程度」では2.1~3.5℃となる可能性が非常に高いと予測される一方、「非常に少ない」の場合では、1.0~1.8℃と予測しており、今世紀半ばにカーボンニュートラルを実現することで、気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」における目標達成の可能性について示唆しました。

 また、陸域と海洋における自然界の炭素吸収源については、二酸化炭素の排出が多いシナリオほど、絶対量として多くの二酸化炭素を吸収するものの、その効率は低下するとしており、結果として、排出された二酸化炭素が大気中に残留する割合が高くなると予測しています(図5)。

将来の気候変動の抑制に向けて

 本報告書では、1850~2019年にかけて排出された二酸化炭素は累積で2兆3,900億トンに達していると述べています。世界平均気温の上昇幅を1.5℃に抑える目標を67%の確率で達成するには、あと4,000億トンしか排出できず、現状と同じ排出量が続けば今後10年前後で限界に達するとしています。その上で、地球温暖化を特定の水準に制限するには、二酸化炭素の累積排出量を制限し、少なくとも二酸化炭素排出量正味ゼロを達成し、他の温室効果ガスも大幅に削減する必要があると結論付けています。

 IPCCでは今後、来年2月に第2作業部会、同年3月に第3作業部会による報告書、同年9月には統合報告書の公表を予定しています。

環境省 http://www.env.go.jp/press/109850.html

気象庁 https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar6/index.html

※ 図は全てIPCC資料より作成