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ナイスビジネスレポート編集部 求められる住宅・建築物の脱炭素化

 脱炭素化が世界的な潮流となる中、日本では、「2050年カーボンニュートラル」宣言により、脱炭素社会の実現に向けた議論が活発化しています。4月22日には、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減にまで引き上げるという新たな目標が示され、今後、住宅・建築物の脱炭素化に向け、省エネ対策が一層加速することが見込まれます。今回は、脱炭素化に向けた動きと、住宅の脱炭素化に役立つナイスグループのソリューションをご紹介します。

 

2050年に向けて住宅・非住宅の脱炭素化が加速

 現行の地球温暖化対策計画(2018年閣議決定)では、温室効果ガス排出量を2030年度までに2013年度比で26%削減する目標が掲げられています。これに対し、4月13日に発表された2019年度の温室効果ガス排出量(確報値)によると、総排出量は2013年度比14.0%削減で、このうち業務その他部門は同18.8%削減、家庭部門は同15.5%削減にとどまっています。この度、温室効果ガス削減目標が大幅に引き上げられたことで、住宅・建築物の更なる省エネルギー化は必要不可欠な状況になっており、更に、省エネルギー政策と不可分とも言える再生可能エネルギー政策についても、より一層の推進が求められています。

 そのような中、今年2月24日に開催された「第5回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」において、「住宅・建築物のエネルギー性能の向上に関する提言」が示されました。同提言では、背景として、新築住宅の予測寿命が50年を超えており、新築住宅・建築物で対策を講じなければその影響が半世紀単位でおよぶことに加え、既存住宅を含めた住宅ストックのうち無断熱の住宅が3割を占め、かつ現行の省エネルギー基準を満たす住宅がわずか10%しかない点を課題に挙げています。また、住宅の温熱環境が健康に直接影響することが明らかになってきたことに加え、コロナ禍において在宅時間・在宅者が増加していることからも、住宅そのものの性能向上による省エネルギー化が不可避であり、従来とは異なるレベルとスピードの政策の導入が必要であると訴えています(図1)。

 これらを踏まえ、同提言では、2050年までの住宅・建築物の姿をロードマップとして明示し、バックキャスティング型で目標達成のための政策を取り入れていく必要があるとしています。併せて、ZEH・ZEBの積極的推進に向けた詳細な目標設定や義務化の検討、既存住宅・建築物の省エネルギー化対策の推進、住宅・建築物のエネルギー性能表示(BELS)の義務化などについても言及されました。

 

新築住宅の省エネ基準適合は近い将来に義務化の見通し

 住宅の省エネルギー基準への適合については、今年4月に建築士から施主への適合可否についての説明が義務化されたものの、現状の適合率が低く市場が混乱する恐れがあるとして、適合義務の対象からは外されました。一方、同提言では、現在の省エネルギー基準を全ての建築物で適合義務化することが第一歩であるとし、説明義務化はあくまでも適合義務化への助走期間と位置付け、直ちに適合義務化へ踏み出すことを求めています。

 また、ZEHについては、補助金制度が開始されて5年が経過し、2019年度までの供給戸数が累計19万戸、年間で5.7万戸に達したものの、工務店による導入は8.5%にとどまっていることを課題として挙げています(図2)。そこで、現在の2030年目標である「新築住宅の平均でZEH(新築住宅の半分がZEH基準を満たす)」を更に強化し、省エネ基準が適合義務化された次の段階としてZEHの断熱基準の適合義務化、将来的には太陽光発電設置も含めた原則ZEH化についても主張しています。

 

既存住宅の省エネ改修の重要性を訴え

 日本の住宅ストックの68%は断熱性能が不十分で、更にその約半数が無断熱という状況にあります。同提言では、1980年以前に建てられた耐震性能が不十分な約1,300万戸の住宅と空き家を除くと、約4,000万戸が将来に向けて残すべき住宅であるとした上で、このうち長期優良住宅と省エネ基準を満たす住宅は15%程度に過ぎないことから、残り85%について2050年までに改修していく必要があるとしています。

 そのためには、改修時に省エネ基準への適合義務化を図っていく必要があると述べています。具体的には、「BELS」の義務化を検討すべきとし、これが消費者・居住者の認識を高めるとともに、効果的な政策が進んでいない既存住宅の対策において、重要なステップになり得ると指摘しています。

 

6月に方向性を提示

 こうした議論を受け、今年3月に閣議決定された新たな住生活基本計画において、住宅の省エネルギー基準の義務付けや省エネルギー性能表示に関する規制など更なる規制の強化、規制措置の強化等に関するロードマップの策定、住宅ストックにおける省エネルギー基準適合割合の目標を地球温暖化対策計画およびエネルギー基本計画に反映することなどが盛り込まれており、具体的な検討が開始されています。

 今年4月には、国土交通省、経済産業省、環境省の3省により、「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」が開始されました。同検討会では、中期的には2030年、長期的には2050年を見据え、バックキャスティングの考え方に基づき、ハード・ソフト両面の取り組みと施策の立案の方向性について幅広い議論がなされています。住宅・建築物における省エネ対策の強化については、中・長期的な住宅・建築物の姿や、今後の規制的措置や誘導的措置の在り方、既存ストックへの省エネ改修の在り方などを、再エネ・未利用エネルギーの利用拡大については、太陽光発電等の導入拡大に加えて、新築住宅への太陽光パネル設置義務化等についても意見を求めるなど、かなり踏み込んだ議論が進んでいます。同検討会では今年6月を目途に、取りまとめ案を示す予定となっています。

 

再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/e_index.html

 

脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000188.html

 

工務店様のあらゆる業務をサポート

 こうした状況の中、地域に根差した工務店様が、安定的な経営を続けていくためには、自社が供給する住宅や建築物の省エネ基準への適合はもちろん、ZEH・ZEB、省エネ性能向上リフォームなどに対しても、早急に対応できるようにしていくことが重要となっています。

 ナイスサポートシステムは、建築資材事業と住宅事業を併せ持つナイスグループのシナジーによって生み出されたサービスです。集客活動から商談、設計、顧客管理に至るまで、販売店様・工務店様のあらゆる業務をサポートしています。省エネ関連についても、省エネ計算書の作成から長期優良住宅などの各種適合審査の申請代行まで、更には標準仕様のパッケージ提案などのサービスを取り揃えており、ご好評をいただいています。

 また、太陽光発電システムの開発・販売を行うスマートパワー㈱では、太陽光発電システムや蓄電池について設置状況に応じた活用提案を、ウッドファイバー㈱では、木質繊維断熱材の供給を通じて、高性能で環境に配慮した住宅の供給に取り組んでおり、ナイスグループの脱炭素化に向けた取り組みの一翼を担っています。

 

ナイスサポートシステム

省エネ計算・適合審査の申請を代行

 ナイスサポートシステムでは、省エネ住宅の推進に当たって、工務店様がつまずきやすい省エネ計算と適合審査の申請代行を行っています。メニューの一つである「省エネ計算書作成システム」では、外皮計算や一次エネルギー計算を行い、各種審査の申請に利用できる外皮計算書や外皮面積算定図、一次エネルギー計算書について、お申し込みから約2週間でご提供しています。

 また、長期優良住宅や認定低炭素住宅、性能向上計画認定、BELS評価書に関する申請代行も行っています。適合審査の申請は、経験が不足していると数カ月程度掛かる場合もありますが、ナイスサポートシステムではスムーズに手続きを完了させることができます。

 

一戸建住宅の標準仕様策定を包括的にサポート

 ZEHをはじめとした高性能な住宅をお施主様に提案していくためには、自社の家づくりの特長を整理し、仕様・性能をまとめた規格を策定しておくことが重要です。この規格を基にお施主様と打ち合わせを重ねることで、自社のメリットを分かりやすくご提案できるとともに、仕様説明や省エネ計算の時間を短縮できます。

 ナイスサポートシステムでは、これまで省エネ・創エネ・蓄エネ・IoTといった複雑化する高性能住宅の提案をまとめた標準仕様書を、自社名義のカタログとして製作する「戸建て住宅パッケージサービス」を提供してきました。それを更に進化させ、工務店様のこだわりに応じてカスタマイズするサービスを開始しています。これは、33坪、2階建ての木造一戸建住宅のモデルプランをベースとして、省エネ基準適合レベルから、ZEH基準レベル、更にはHEAT20 G1~2レベルまで、外皮性能やBEIといった求められる性能値を満たすために、断熱材やサッシ、玄関ドア、エアコン、換気設備、給湯設備のほか、太陽光発電設備や蓄電池といった建材・機器について、個別のご要望に応じて包括的なパッケージ提案を行うというものです。なお、ご要望があれば、こちらの仕様をまとめ、自社の社名入りでカタログ化するサービスも実施しています。

 

ウッドファイバー㈱

国産材による多機能な木質繊維断熱材

 住宅の脱炭素化を進めるに当たって、高性能な断熱材は重要なファクターです。ウッドファイバー㈱が製造する「ウッドファイバー」は、カラマツやトドマツなどの北海道産針葉樹を原料とした、日本で唯一の国産木質繊維断熱材です。地球環境に優しく、持続可能な資源である木材の利用は、脱炭素社会の実現に貢献します。

 性能面では、グラスウールなどの充填用断熱材と同等レベルの断熱性能を持っていることに加え、蓄熱性能や吸放湿性能といった木材ならではの優れた性質を併せ持っています。高い蓄熱性能により、年間を通して室内の温度変化を少なくして快適な住空間をつくり出します。高い吸放湿性能により室内の調湿効果に寄与するとともに、壁体内の結露の発生を抑制し、住宅を長持ちさせる効果も有しています。

 ウッドファイバーは、適度な密度と柔軟性を持ち合わせており、柱の間に隙間なくしっかりと納めることができます。地震などで躯体が揺れ動いても、形状の変化や位置のズレなどが生じにくく、断熱材としての性能を維持し続けることができるなど、多くのメリットを有しています。

ウッドファイバー株式会社

https://www.woodfiber.jp/

 

スマートパワー㈱

住宅から非住宅までエネルギーソリューションを提案

 スマートパワー㈱では、ZEHに最適な対応、更には、自然災害による停電への備え、カーボンニュートラルに向けた取り組みのソリューションとして、高効率・高出力型の太陽光発電システムや蓄電池システムなどを提案しています。また、電気自動車向けV2Hや、可搬型充放電機器、充電器の設置も行っています。

 更に、将来的に電気代の高騰が懸念されていることから、各家庭でのエネルギーの自給自足に向けて、停電時に家全体で電気が使える「全負荷型」の蓄電池を組み入れた「電気を買わない家」シリーズなど、停電時も安心なプランをご用意しています。

 そのほか、工場や倉庫、事務所といった建物に対する「自家消費型太陽光発電設備」についてもサポートしています。導入に当たっては、電気代やCO2排出量削減のご提案から、最適なプランの設計および施工・保守まで、ワンストップサービスをご提供しています。

スマートパワー株式会社

http://www.smart-power.co.jp/