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ウィズコロナ時代の家づくり ~業界に求められる変化とは~

 

株式会社新建新聞社 代表取締役社長 三浦 祐成 氏

コロナ禍は、人々に「ニューノーマル」という新たな世界観をもたらし、住宅業界においても、テレワークの浸透により「職住融合」のニーズが顕在化するなど、様々な変化への対応が求められています。いまだ収束が見通せない中、今回は、ウィズコロナ時代に工務店様や販売店様が取り組むべきことについて、工務店様向け専門紙「新建ハウジング」を発行する、株式会社新建新聞社の代表取締役社長を務める三浦祐成氏に伺いました。

 

ウィズコロナ時代に重要性を増す「DX」

 新型コロナウイルスの感染症拡大に伴う影響は長期化しており、国内経済は依然として厳しい状況が続く一方で、ワクチンの接種開始といった明るい話題が出始めています。「ニューノーマル」など、新しい価値観も、一気に広がりを見せました。

 こうした中、販売店様においては、このコロナ禍で一気に加速したDX(デジタルトランスフォーメーション)にどう取り組むかが最大のテーマと言えます。DXとは、将来の成長、競争力強化のために、進化したデジタル技術を活用し、新たなビジネスモデルを創出、もしくは柔軟に改変していくことを指します※。現下では、このDXを活用し、住宅設備機器・建材の販売・配送に関する生産性を向上させていくことが必須となっています。

 また、人口減少や少子高齢化といった経済社会構造の変化という長期トレンドにコロナショックが加わったことで、まさに今、事業ポートフォリオの組み換えを検討する必要が出てきています。例えば、工務店様支援の強化という点においては、これまでの受注支援から更に踏み込み、工務店様が苦手とする機能を補完するサービスの提供についても必要性が増してきています。元請け化も選択肢の一つとなるでしょう。また、独自商品の開発や、物販だけにとどまらないノウハウの販売なども検討課題となります。更には、事業規模についても、M&Aなどで拡大するのか、逆にスケールダウンを図るのかといった判断も求められてきます。

 

工務店様に求められる「標準化」「多層化」

 工務店様においては、今後景気が上向き、住宅需要が回復に向かうタイミングをチャンスとできるよう、今の段階から様々な対策に取り組んでおくことが大切です。

 現在、多くの工務店様が苦戦している要因としては、2,000万~3,000万円の価格帯だけで事業を展開していることが考えられ、多層化して提案の幅を広げることも対策の一つとなります。そのためには、性能レベル、設計基準、仕様などが標準化された規格型住宅の提案が重要です。コロナ禍で、希望していても予算的に注文住宅が検討できない消費者も増えている中、規格型住宅は、フルオーダーの注文住宅に比べて低予算で提案することが可能となります。

 また、事業を多角化し、地域に密着したワンストップモデルを目指すという選択肢もあります。具体的には、リフォームや賃貸化支援、インスペクション、非住宅、物販・住生活ショップなど、様々考えられますが、いずれも単独で取り組むのは難しく、販売店様が機能の一部を代行することで工務店様の多角化を支援していく必要があります。特に、リフォームについては、コロナ禍で在宅時間が増え、自宅の不具合などに気付く機会が多くなり、その需要が顕在化するため、景気回復以降すぐに提案のチャンスが訪れると考えています。

 また、非住宅については、3階建て以下の低層においてもいまだ8割弱を鉄骨造などの非木造が占めており、木造化という観点で今後の伸び代が大きい分野です。対象となる建物は、教育施設、福祉施設、医療施設、高齢者施設など多岐にわたり、これらの木造化を推進し、事業につなげていくことが重要です。

 そのほか、企業規模をあえてダウンサイジングすることも選択肢の一つです。小規模で身軽だからこそ、他社との差別化が図れる特長的な家づくりが可能となるという側面もあります。コスト重視の「量産型・販売型」と、高単価でこだわりの家づくりを行う「限定型・創造型」の工務店の二極化は今後ますます進むと見られる中、小規模だからこそ可能となる魅力的な家づくりで、高単価型にシフトすることも対策の一つとなり得ます。

 

変わりつつある住宅事業の「一等地」

 人々の消費傾向の変化に伴い、住宅についても単純に家を買う「モノ消費」から、家を買うことで暮らしの豊かさなどを手に入れる「コト消費」へと変化してきました。更に、いかに良い時間を過ごすかという「トキ消費」が加わり、今では誰から買うかが重視される「ヒト消費」の時代になっています。このように消費傾向が変化する中、家づくりにおいても「ヒトの魅力」「会社の魅力」を発信する場として、オンライン動画の共有プラットフォームである「YouTube」が活用されています。

 国内の利用者が多い「YouTube」では、家づくりに関するコンテンツが充実しており、家づくりに関する情報を「YouTube」から収集する消費者が増えています。発信する側も、直接的な広告や宣伝を行わず、自分たちが良いと考える家づくりや暮らし方について情報を発信しています。例えば、耐震性能や省エネ性能、耐久性といった性能面の重要性に関する発信などです。性能の高い住宅を普及させていくためには、消費者意識のボトムアップを図る必要があります。消費者が賢くなれば、家づくりにおいて重要なことは住宅性能だということを理解してもらうことができます。こうした情報を発信し続けることで消費者の信頼につながり、家づくりのナビゲーターのような存在となり得るのです。

 まさに、住宅事業における「一等地」が変わったと言えます。これまでは、総合展示場やテレビコマーシャル、雑誌やチラシなどによる宣伝・広告であり、いずれも資金がなければ得られないものでしたが、現在では「YouTube」や「Instagram」といったSNSがこれに取って代わり、「一等地」となっています。つまり、資金力が必要な「オークションマーケティング」ではなく、質の高い情報発信をした人が優位性を持つことができる「クオリティーマーケティング」が主流になりつつあるのです。かつてはハードルが高かったブログも、今では多くの工務店様が活用しているのと同様に、今後は「YouTube」「Instagram」での情報発信が当たり前になっていくと考えています。

 

サステナブル(持続性)×イノベーション(革新)

 現在、コロナ禍からの景気回復策として、気候変動への対応や生物多様性の維持といった、環境問題の解決を通じて経済を復興させようとする「グリーンリカバリー」の考え方が普及してきています。菅義偉首相が「2050年カーボンニュートラル」を宣言したことで、住宅業界においてもZEHなどの動きが加速すると見ています。

 こうした状況において、サステナビリティー(持続性)とイノベーション(革新)という二つの言葉を掛け合わせた「サステナベーション」という造語が注目されています。これは、ITを活用しながらサステナブルな社会の実現を推進し、経済成長につなげていくという考え方です。住宅業界における先行例として、気候変動対策に技術革新を重ねた「住宅の高断熱化」が挙げられます。また、今後の可能性としてはZEHの推進や省エネ基準の義務化、高耐久・長寿命化などが考えられます。その中でも最も欠かせないのが国産材の活用と林業の活性化です。そこに技術革新をどう関連付けていくかについては、木材・住宅業界の皆さんが日々取り組まれていることであり、まさにサステナベーションな取り組みと言えるのではないでしょうか。

 

※ 経済産業省 デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会 DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(サマリー)より抜粋