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新春特別インタビュー 2021年の日本経済の展望

2020年の経済情勢の振り返り

新型コロナウイルス感染拡大の各国経済への影響

――新年おめでとうございます。さて、昨年は、年初から新型コロナウイルス感染症が世界中に拡大し、世界全体がまさに「コロナ危機」と言える状況に陥りました。昨年を振り返り、新型コロナウイルス感染拡大を受けた各国経済の動きについてお聞かせ下さい。

野澤 昨年1月に中国で新型コロナウイルス感染症の流行が確認され、その後、2月下旬から欧州や米国、そして世界へと拡大していきました。2020年はまさに、新型コロナウイルス感染症への対応に振り回された一年と言えます。新型コロナウイルス感染拡大前と言えば、日本を含め、世界経済は回復過程にあったものの、米中貿易戦争により回復のスピードは緩やかに減速していました。そうした中、新型コロナウイルス感染拡大に見舞われたという状況となりました。

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めをかけるべく、多くの国々において、外出や移動の制限によって経済活動を抑制する措置が講じられました。これにより、中国では2020年1~3月期、欧米などでは4~6月期の実質GDP成長率が大幅に落ち込みました。例えば、米国の4~6月期の実質GDP成長率は前期比年率でマイナス31%、ユーロ圏ではマイナス40%と、リーマン・ショック時を超えるマイナス成長を記録しています。

 しかし、その後は各国の経済対策の効果もあり、世界景気は夏場以降に持ち直しに転じたと見られます。昨年11月に発表された2020年7~9月期の実質GDP成長率は、米国で前期比年率プラス33%、ユーロ圏ではプラス61%となりました。このように、7~9月期にはいずれも経済成長率が大幅なプラスとなりましたが、米国やユーロ圏の実質GDPを実額で見ると、新型コロナウイルス感染拡大前となる2019年10~12月期の水準をいまだ4%程度下回っており、依然として戻りは限定的となっています。これは、今後2%の経済成長が2年間続かないと取り戻せない水準にあることを示しています。

 更に、昨年10月後半から、欧米を中心に新型コロナウイルスの感染が再び急拡大しています。これを受けて、欧州の主要国では、10月下旬より夜間の外出禁止や移動の制限、飲食店の営業時間の制限などの行動制限措置を実施しており、足元で景気は弱含んでいます。新型コロナウイルス感染拡大の動向と、それに伴う世界経済への影響については、予断を許さない状況となっています。

 

業種や属性の違いで回復ペースにばらつき

――日本においても、昨年4月の政府による緊急事態宣言の発出や、その後の自粛要請等を受け、過去に経験がないほど甚大かつ広範囲に影響がおよんでいます。日本経済についてはいかがでしょうか。

野澤 日本経済に目を転じると、欧米先進国と同様、昨年4~6月期を底に景気は持ち直しに転じています(下図)。4~6月期の日本の実質GDPは、前期比年率でマイナス29%と大きく落ち込みました。欧米諸国におけるロックダウン(都市封鎖)の影響により輸出が急減するとともに、政府による緊急事態宣言の発出を受けて、個人消費や設備投資などの国内需要も大幅に減少しました。

 しかし、昨年5月下旬に緊急事態宣言が解除され、経済活動が再開する下で、政府による経済対策の効果もあり、実質GDPが2020年7~9月期には前期比年率でプラス23%と、大幅なプラス成長に転じました。中国向けや欧米向けの輸出が回復し、それに伴って自動車関連や情報関連など、製造業の生産の回復傾向が徐々に明確になっています。

 国内需要については、緊急事態宣言の解除に伴い、ペントアップ需要、つまり抑制されていた需要の顕在化もあり、個人消費が全体として見れば持ち直しています。依然として、飲食や宿泊などのサービス消費を中心に水準は低いものの、7~9月期には政府の特別定額給付金の効果や、「Go Toトラベル」の効果が個人消費を支えました。

 このように、日本経済全体としては持ち直しつつありますが、今回の新型コロナウイルス感染拡大による影響は、企業の業種や家計の属性によって大きく異なるため、回復のペースも業種や属性によってばらつきが見られる点に注意が必要です。企業活動を見ると、製造業の回復は比較的堅調ですが、非製造業の回復は緩慢となっています。また、非製造業の中でも、インターネット関連に代表される情報通信は、在宅勤務の浸透などもあって業績が好調な企業が見られる一方、消費関連では回復の実感がなかなか得られない企業も少なからず見受けられます。特に、旅行や宿泊、飲食といった対面型のサービス業では厳しい業況が続いています。

 こうした業種や属性の違いによる影響は、雇用情勢にも表れています。日本の完全失業率は足元で3%程度と、さほど大きく上昇しているわけではありません。これは、政府の雇用調整助成金の効果が大きいと考えられます。しかし、雇用形態別の就業者数を見ると、正規社員については前年比プラスを維持している一方で、非正規社員の雇用は飲食や観光関連などを中心に減少しています。企業の業種や家計の属性による回復のペースのばらつきは、他の主要国においても観察される現象であり、今回の景気持ち直しにおける大きな特徴と言えます。

 

金融市場にも大きく影響

――昨年は、新型コロナウイルス感染拡大に加え、米国大統領選挙の影響などもあり、金融市場が大きく変動しました。マーケットの動きを振り返ってお聞かせ下さい。

野澤 昨年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、株式相場が世界的に一時急落しました。新型コロナウイルス感染拡大前の昨年1月に2万3,000円台で推移していた日経平均株価は、2月下旬から下落基調が強まり、3月中旬には1万6,000円台まで下げました。しかし、その後、米国の株式相場がハイテク株を中心に切り返す中で、日本の株式相場も上昇に転じました。11月には、米国の大統領選挙で民主党のジョー・バイデン前副大統領の当選が確実になったことや、新型コロナウイルスワクチンの普及への期待などから、米国株が史上最高値を更新する中、日経平均株価も2万6,000円台を回復し、約29年半ぶりの高値水準を付けました。株価は、アフターコロナをかなり先取りした形で動いています。

 昨年の為替レート(対ドル円レート)を振り返ると、円高・ドル安基調で推移しました。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、3月に米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)がゼロ金利政策の導入と量的金融緩和の再開を決め、夏場以降もゼロ金利政策を長期化させる姿勢を示しており、米国の長期金利は極めて低い水準で推移しています。一方、日本の長期金利は、日本銀行による「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の下で、ゼロ%近傍で推移しています。このため、日米の金利差がほとんどない状態で変化しにくくなっており、対ドル円レートも大きく動きにくくなっています。

 こうした中、市場の不安感が強まる場面では、相対的に安全な通貨と言われている円が買われる傾向があります。つまり、新型コロナウイルス感染拡大が警戒されると、円買い圧力が高まります。なお、昨年12月公表の日本銀行「短観」によると、大手製造業における2020年度下期の想定為替レートは1ドル=106円程度です。また、最近の日本経済新聞社の集計によると、2020年度下期の想定為替レートを1ドル=105円台とする企業が7割に上っているとのことです。11月には一時、1ドル=103円台前半まで円高・ドル安が進む場面もありました。現状の1ドル=104円程度の対ドル円レートが2020年度末まで続く場合には、製造業の収益の下方修正圧力となる可能性があります。

 

2021年の経済情勢の展望

日本経済の回復の道筋は

――本年の日本経済について、どのような展開になると見ていらっしゃいますか。

野澤 本年の日本経済を展望すると、経済活動の正常化が進み、景気は引き続き改善基調をたどることが予想されます。ただし、当面は新型コロナウイルス感染症への警戒感が残る中で、家計や企業の心理的な負担は依然として重いことから、景気回復のペースは緩やかなものにとどまると考えられます。㈱浜銀総合研究所の予測では、日本の実質GDPは、2020年度に前年比マイナス5%程度と大幅なマイナス成長となった後、2021年度にはプラス3%程度の成長を見込んでいます。2021年度の経済成長率はプラスに転じると予想されるものの、残念ながら実質GDPの水準は、2021年度末時点においても、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年10~12月期の水準を回復することは出来ないと考えています。

 日本経済のけん引役として期待されるのは輸出です。ただし、輸出を取り巻く環境を見ると、中国経済は今後も順調に回復すると見込まれますが、欧米を中心とする先進国では新型コロナウイルスの感染再拡大が警戒され、経済の復元に時間を要すると予想されます。そのため、当面、日本の輸出の回復力に多くを期待することは難しい状況です。

 一方、国内需要では、GDPに占めるウエートの大きい個人消費の動きが鍵を握ると考えられます。こちらも、新型コロナウイルス感染拡大への警戒が続く中で、当面、緩やかな回復にとどまると見込まれます。特に、ソーシャルディスタンスの確保が、引き続き飲食など対面型サービスの消費を抑制すると予想されます。なお、年後半に新型コロナウイルスのワクチンや治療薬などの実用化が進むようであれば、個人消費の回復力も徐々に持ち直してくることが期待されます。

 

新政権の政策や東京オリンピック開催に期待

――菅義偉内閣が昨年9月に発足し、新型コロナウイルスの感染防止策の徹底と、社会・経済活動との両立を図る方針で政策が進められています。新政権による政策効果については、どのようにお考えでしょうか。

野澤 新政権においては、引き続き、新型コロナウイルス感染拡大防止と経済活動とのバランスを取りながら、しっかりと景気を支える政策を講じていただきたいと思います。政府は昨年12月8日、「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」を閣議決定しました。同経済対策は、①新型コロナウイルス感染症の拡大防止策、②ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現、③防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保の三つを柱としています。先述したように、今回の新型コロナウイルス感染拡大による影響は、企業の業種や家計の属性によって大きく異なっており、回復のペースも業種や属性によってばらつきが見られます。こうした点を十分に踏まえた上で、回復が依然として鈍い業種を中心に、事業や雇用を支える政策をお願いしたいと思います。

 また、やや長期的な目線では、菅首相が昨年10月に新設した成長戦略会議において、「足腰の強い中小企業の育成」が主要な検討課題に位置付けられました。本年6月を目途に具体策を策定し、「骨太の方針」に反映されることが想定されています。検討される論点としては、①中小企業の定義の見直し、②最低賃金の引き上げ、③再編を促進する税制改革などが挙げられています。日本の中小企業における生産性の低さの背景として、他の先進国に比べて零細企業が多く、結果的にIT化やグローバル化への対応が遅れていることが指摘されています。成長戦略会議の検討も、こうした問題意識に基づいていると見られ、今後、合併や再編を通じた中小企業の規模拡大に議論が発展すると考えられます。

――本年7月には、新型コロナウイルス感染拡大により延期された東京オリンピック・パラリンピック競技大会が予定されています。開催された場合の経済効果については、どのようにお考えでしょうか。

野澤 東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、新型コロナウイルス感染症への対策に万全を期した上での開催となるでしょう。今後の感染状況にもよりますが、ソーシャルディスタンスを確保すべく、競技会場の観客数が当初の想定よりも制限されることが考えられます。しかし、どんな形になったとしても、東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催され、そして日本人選手が活躍すれば、人々のマインドが前向きになり、経済活動に大きなプラスの影響を与えることが期待できます。新型コロナウイルス感染拡大の影響で暗いニュースが続いている今だからこそ、人々の気持ちが前向きになるイベントの重要性が高まっていると思います。

 

住宅・木材業界の展望

住宅需要は緩やかに回復

――昨年の住宅業界は、一昨年からの消費増税の反動減に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた形となりました。本年の住宅需要については、どのように見ていらっしゃいますか。

野澤 昨年の新設住宅着工戸数の推移を見ると、2019年度からの減少基調が4~6月期まで続きました。しかし、7~9月期には、緊急事態宣言の解除によってペントアップ需要が顕在化したこともあり、年率換算値で前期比プラス2.6%の80万戸と、6四半期ぶりに増加しました。今後については、経済活動が正常化に向かう中、消費者の住宅購入意欲は徐々に持ち直してくると見られます。

 また、足元で検討されている住宅ローン減税の特例の延長が実施されれば、住宅需要の下支えになることが見込まれます。ただし、当面、新型コロナウイルス感染症への警戒感が残ることを踏まえると、住宅需要の回復も緩やかなものにとどまる可能性が大きいと予想されます。㈱浜銀総合研究所では、2021年度の新設住宅着工戸数を前年比プラス2.1%の83.6万戸と予測しています。

――住宅ローン金利の動向についてはいかがでしょうか。

野澤 住宅ローン金利は既に最低の水準にあり、当面は、現在の低水準で推移すると予想されます。その理由としては、日本銀行による「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」政策が続くと見込まれるからです。日本銀行は、「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定め、その目標の実現に向けて金融政策を講じています。しかしながら、足元の消費者物価指数は前年比ゼロ%前後で推移しており、2%の目標達成には程遠い状況です。先行きを展望しても、当面、日本経済の回復スピードは鈍く、それゆえに物価上昇を期待しにくい状況にあり、日本銀行が現在の金融政策を解除する目途は全く立っていません。

 更に、今回のコロナ禍で米国のFRBは2023年末まで現行のゼロ金利政策を維持する姿勢を示しています。今後の新型コロナウイルス感染拡大の状況によって、FRBの政策スタンスは変化する可能性がありますが、少なくとも現行のゼロ金利政策を続けている間は、日本銀行も現在の金融政策を継続せざるを得ないと考えられます。理由としては、もし日本銀行がFRBよりも先に金融緩和策の解除に取り組んだ場合、外為市場の対ドル円レートが円高・ドル安方向に動く可能性があり、日本の輸出企業に悪影響を与える恐れがある政策を取るとは考えにくいからです。いずれにしても、日本銀行による大規模な金融政策は依然として続くと見込まれるため、住宅ローン金利も当面、現在の低水準で推移すると予想されます。

――不動産価格、特に土地価格の動向については、どのように見ていらっしゃいますか。

野澤 国土交通省が昨年9月に発表した7月1日時点の都道府県地価調査(基準地価)によると、全国の住宅地・商業地を含む全用途平均は前年比マイナス0.6%と、3年ぶりの下落となりました。新型コロナウイルス感染拡大によって景気の先行き不透明感が強まる中で、不動産に対する需要が減退したと見られます。また、全国主要100地区の地価変動を比較する、国土交通省の「地価LOOKレポート」によると、2020年第3四半期には、3カ月前と比較して下落した地区数が45地区と、前回調査の38地区から拡大しています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、オフィスや小売り、飲食店の集まる商業地を中心に地価が上昇から下落へと転じています。不動産価格は、景気の動きにやや遅れて動く傾向があります。昨年11月から新型コロナウイルスの新規感染者数が急拡大している点も踏まえれば、不動産価格の調整局面はしばらく続く可能性があります。ただし、波はありながらも経済活動の正常化は徐々に進み、2021年の日本経済は緩やかに改善すると見込まれることから、年後半には商業地の下落に歯止めが掛かり、徐々に地価が持ち直してくるのではないかと考えています。

 

木材業界の可能性

――SDGs達成への取り組みという世界的な潮流が後押しとなり、地球温暖化防止および持続可能性の側面から、木材に関心が高まっています。木材業界についてはどのように見ていらっしゃいますか。

野澤 環境や社会、企業統治を重視するESG投資の拡大などを背景に、日本でもESG経営に取り組む企業が着実に増えています。木材に関連した例を挙げると、持続可能な素材である木材の利用を経営戦略に取り込む企業が出てきており、様々な業界でプラスチックの代替素材として木材を採用する動きや、事業用の建築物を木造で建設する動きなどが見られます。東京オリンピック・パラリンピック競技大会に関連して言えば、国立競技場も「杜のスタジアム」をコンセプトに掲げ、国産木材がふんだんに使用されています。こうした点から、今後、木材の利用は更に進み、建築物の木造化も拡大していくと考えられます。木材業界は今後、市場規模の拡大が見込まれる有望な業界の一つと見ています。

 

ポストコロナの企業経営

不確実性の認識と環境変化への対応を

――コロナ禍により、デジタルシフトの加速や人々の価値観の変化など、様々な変化が生まれています。ポストコロナにおける企業経営について、どういった点を重視すべきとお考えでしょうか。

野澤 すでに様々な取り組みをされている企業経営者の方もたくさんおられると思いますが、今回のコロナ禍での経験からいくつか見えてきたことがあります。一つ目は、私たちを取り巻く環境の再認識です。VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった造語で、2016年のダボス会議で用いられて注目されるようになりました。社会環境が複雑化する中、想定外のことが次々と起こり、なかなか先を見通せない状況を意味しています。不確実性というと、ブラックスワンという言葉を思い浮かべる方もいるかもしれません。ブラックスワンとは、事前にほとんど予想ができず、起きた時の衝撃が大きい事象のことを表しています。今、まさに予想や予測を超えたブラックスワンが飛来しています。新型コロナウイルス感染症の拡大も1年前には予想していませんでしたし、そのほかにも10年に一度、あるいは100年に一度といった事象が様々に生じています。こうした状況は、決して昨年に限ったことではなく、これからも起こり得るものとしてしっかりと認識しておく必要があります。そうした認識の下で、BCP(事業継続計画)を策定し、有事に備えた訓練を行っておくことが重要です。更に、既成概念に捉われることなく確かな情報を集め、アップサイドとダウンサイドの両面に目配りしていくことが求められると思います。

 二つ目は、環境変化への対応、特に、デジタル化やロボティクス化への取り組みです。今回の新型コロナウイルス感染症への政府の対応で、デジタル化の取り組みの遅れが浮き彫りになりました。新政権の下、デジタル庁の創設が示されましたが、デジタル化の必要性は政府に限ったことではなく、民間企業も同様です。新聞等でも報道されているように、日本はこうした分野で決して進んでいるわけではなく、むしろ他の先進国に比べて遅れています。経済社会のグローバル化が進展する中で、デジタル化やロボティクス化の流れから取り残されることは致命傷にも成り得ます。デジタル化と言うと、システムを導入することと思われがちですが、システムを単に導入するだけでなく、それに伴い業務内容を見直す、すなわちBPR(Business Process Re-engineering)を行うことがとても重要な要素となります。非効率な業務を洗い出し、ロボットに置き換えることで効率化が図れるならば、積極的に導入していくことも必要ではないでしょうか。現下のコロナ禍で、テレワークやWEB会議を推進されている企業も多いと思いますが、今は、社員の働き方を含め、企業経営の在り方が大きな節目を迎えています。目覚ましい進歩を遂げているテクノロジーを上手に活用して、顧客満足度、社員満足度、そして生産性向上のための取り組みが求められていると思います。

 三つ目は、人材の育成・教育です。経営環境の不確実性や不透明感が強まる中でも、企業が切り開いて前進していくための鍵は人にあります。何が起こるか予測できないからこそ、多様な経験や知識、強みを持った人材を集め、それぞれの持ち味を生かし、組織としての対応力や突破力を高めていくことが大切なのです。コロナ禍による変化を前向きに捉え、行動した企業が業績を伸ばしているように思いますし、そうした企業の行動を支えているのは優れた経営者や社員です。AIやロボットの発達はここのところ目覚ましいものがあり、肉体的な労働だけでなく、知的な労働の領域にも入ってきています。こうした動きをポジティブに捉え、経営や業務に賢く活用できる人材の発掘・育成・教育が、ポストコロナにおける企業経営においては、これまで以上に重要になると考えています。

 

脱炭素社会実現への重要な担い手に

――最後に、住宅・木材関連事業者の皆様へメッセージをお願いいたします。

野澤 菅首相が昨年10月の所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言したことを受けて、今後、脱炭素化に資する素材として、木材のニーズは一層高まっていくと予想されます。木造住宅や木造建築物などに携わる事業は、まさに脱炭素化に直結するものです。住宅・木材業界におかれましては、これら環境意識の高まりに伴うニーズの変化に適切に対応していくことが重要です。そして、脱炭素社会の実現の重要な担い手となっていただくことを期待しています。

――本日は誠にありがとうございました。