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シリーズ 木材需要の拡大に応え『現場の力』③ ㈱庄司製材所 製材所を核とした地域循環圏を構築

東北地方でも有数の規模を誇る製材メーカー㈱庄司製材所様は、閉校した中学校を製材工場としてリユースしたり、最新の製材機械を導入するなど、積極的な設備投資を行っており先導的な取り組みで業界をけん引されています。今回は、脇を固める3人のご子息とともに持続可能な地域社会に向けた経営を実践されている、同社の庄司和敏社長にお話を伺いました。

「お金は現場にしか落ちていない」

――庄司製材所様の経営方針、注力事業についてお聞かせ下さい。

庄司 当社は、1976年に製材業を開始し、1986年に会社として設立しました。「地元の資源を活かし、地元との共存を目指す」「市場ニーズにいかに応えられるか」「在庫にならない売れる製品作りの追求」「温かみのある職場づくり」「地元産業の柱に」、以上の五つを方針に掲げています。

 山形県産や秋田県産の良質なスギによる、住宅用建材やホームセンターなどで販売される木材の製材事業を主力事業としており、「マルエス」ブランドとして、関東・関西の各市場や大手ホームセンターへ、ナイスさんなどを通じて販売しています。最近では、海外において、フェンスなどへのスギの利用が増えていることから、アメリカをはじめ、海外への輸出も行っています。また、県内において、木材製品の直売と、キッチンなどの住宅設備を販売する店舗3店を運営し、エンドユーザーへ向けた小売り事業も展開しています(図1)。

 現在は、山形県最上郡において、本社工場、ウッドトラス金山、釜淵(かまぶち)工場、及位(のぞき)中学校工場、大滝West工場の5工場を稼働させ、製材事業において年間8万5,000m3㎥超の原木を挽いています。

――工場を訪れると美しく積まれた丸太に目を奪われます(図2)。

庄司 この山積みされた木材は、いわゆるインスタ映えスポットとして地域の観光資源の一つになっており、海外の大手自動車メーカーの2020年版カレンダーにも採用されました。当社では、常時、約半年分に相当する原木をストックしています。これにより、相場価格の変動に左右されずに原木の仕入れが可能であり、出荷量・価格の双方で安定的な供給を実現しています。原木は樹皮(バーク)を剥いてから保管することで、虫害や腐食による材質の劣化を防ぐことができます。更に、乾燥が進むことで品質の安定にもつながっています。

 当社では、製材所を中心とした150㎞圏内から原木を仕入れるようにしています。この範囲外から仕入れると、運送料等の関係で採算が合いません。言い換えると、このエリア内で産出された原木は、小・中径木から大径木、低質材まで、全て取り扱う覚悟で生産体制を整備しています。

 圏内全ての原木を製材して、全国で使っていただくとともに、おがくずやチップ、バークに至るまでエネルギーとして無駄なく活用していくことで、山側も安心して伐採でき、再造林を進めることができます。こうすることで、先人たちから受け継いできた豊かな山を守り、発展させ、次の世代につなぐことができると思っています。そのためには、企業として利益を確保して事業を存続し、地域の雇用を守っていかなければなりません。「お金は現場にしか落ちていない」が私の信念であり、日々現場を駆け回って改善点を発見し、今日よりも明日が少しでも良くなるようにとの思いで、取り組み続けています。

 

合理化が従業員の幸せにつながる

――工場では積極的に最新設備を導入していますね。

庄司 製材業は、市場のニーズに応えていくためにも、作業の合理化を図るためにも、設備が資本だと思っています。当社の創業当時、製材と言えば12尺材が主流でした。6尺材の需要はあったものの、作業工程が増えるため採算が合わず、多くの製材所からは敬遠されていました。そこで発想を転換して、6尺材で利益が確保できれば、どんな材を挽いても事業化できるのではないかと考え、設備投資を行って工業化を進めてきました。

 今年はスイス製のバイオマスボイラーを導入する予定で、当社としては4台目となります。高額な投資となりますが、1台追加することで、当社において発生している全てのバークをエネルギー資源として活用できるようになります。資源を余すことなく活用するためには必要な投資だと考えています。

――製造品目が多岐にわたり、しかも、オートメーション化が進んでいます。

庄司 市場のニーズが変化していく中で、それに応え続けていかなければ、エリア内の原木を持続的に消費することができません。そこで、限られた製材品を大量に製造する少品種大量生産ではなく、多品種少量生産とするのが最適だと考えました。そのために、当社では大規模かつ流れ作業的な「ライン生産方式」ではなく、数人で作業を完結させる「セル生産方式」を採用しています。工場には工場長を配しておらず、社員一人ひとりが責任感を持って仕事に取り組んでくれています。

 ライン生産方式は、生産量が増えるほど生産性は高まりますが、一部の不具合が全体に影響するほか、生産品目を変更するためには多額の設備投資が必須となり、臨機応変な対応が難しいといったデメリットがあります。一方、セル生産方式は、数人規模のグループワークで作業工程を完結させるため、機械の不具合で一つの製品の製造が止まったとしても、それ以外は生産し続けることができます。しかも、比較的少ない投資で新しい製造機械を導入できるといったメリットもあります。更に、当社では小売事業も行っているので、自社の店舗で得たエンドユーザーおよび施工者の新たなニーズや、取引先様からの要望に対応していくこと、日々気付いた作業改善のアイデアを迅速に実行していくことができます。

 工場での作業に当たっては、作業中の歩数をいかに減らすかが大切で、回転イスのようなオペレーションが理想だと思っています。つまり、ぐるりと体の向きを変えるだけで済む作業が最も効率が良く、そうできないのであれば、そこには何らかの無駄があるということです。その場合は、作業工程を変更するのか、あるいはロボットなどの機械で補完してオートメーション化を進めていくのかを考えていく必要があります(図3)。設備は、購入時に多額の資金がかかるものの、長期的な視点で設備投資を確実に進めていくことが、結果的にローコストオペレーションにつながるのです。

 作業の合理化を進めていくことは、社員の幸せにもつながると考えています。当社では、終業30分前には清掃を始め、原則、定時で帰宅するようにしています。無理をしたところで、疲労から、そして夜の暗さによって事故が起きる確率が高まるだけです。そして、何よりも夜は家族とゆっくり過ごしてほしいと思っています。

 

製材所は熱産業で地域の中心になる

――5年前、閉校した中学校を取得し、工場として活用されています。

庄司 学校というのは、集落の中心に位置しています。そこで製材事業を始めて雇用を確保すれば、人が集まるようになり、再び集落が形成されていくのではないかと考え、2015年に及位(のぞき)中学校工場を新設しました。グラウンドに製材工場を建て、バイオマスボイラーを設置してバークを処理しています(図4)。このボイラーで沸かした温水を、パイプを使って体育館と校舎に循環させて室内を温室状態にしています。これにより、体育館を製品の低温乾燥とボイラー燃料の乾燥を行う施設として再利用しています。(図5)。湿気は上にたまるため、天井が高い体育館は乾燥施設としてうってつけでした。そのほか、教室においては、山形大学と協働して冬季の野菜栽培などの実証実験を行いました。同工場は、自給自足体制を整え、地域の防災拠点としても機能することから、行政からも高い評価をいただいています。

 バイオマスと言うと、日本では発電事業が一般的ですが、デンマークをはじめ、ヨーロッパの寒冷な地域では域内への熱供給源として積極的に利用されています。地域内にパイプを張り巡らせ、そこに温水を流して施設や住宅に送り、暖房や給湯に利用するという「地域熱供給」のシステムが古くから構築されており、私も実際に視察してきました。これを参考に、当社でも、実際に工場に隣接する施設までパイプを伸ばして、暖房する試みをしています(図6)。建物内の各部屋に循環させることで、輻射熱(ふくしゃねつ)による暖房効果もあります。また、熱交換器を設置することで、夏季は冷房とすることもでき、冬暖かく、夏涼しい住環境を実現することができます。

 今後、東北芸術工科大学の三浦秀一教授とともに、実際に10棟ほどの住宅を建て、実証実験を行う予定です。課題はありますが、こうした熱供給の仕組みを地域に広げていくことで、製材業は今後、熱産業になっていくと考えています。電力事業は電力を広域に拡散できるというメリットはありますが、熱として近隣で消費した方が、エネルギー効率は格段に高まり、資源の有効活用につながります。持続可能な資源である木材を活用して建築物を建て、その製材過程で出たバークを使ったバイオマスボイラーで隣接地域にエネルギーを供給するというのは、今後目指すべき循環型社会の一つのあり方だと思っています。

――本日はありがとうございます。今後もお力添えをお願いいたします。