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政府 2021年度予算概算要求 7年連続100兆円超えに コロナ禍における 「新たな日常」 の形成に焦点

2021年度予算に向けた概算要求が各省庁から出揃い、一般会計の総額は過去最大の105兆4,071億円となりました。100兆円を超える要求は7年連続となります。また、財務省では、新型コロナウイルス感染症対策など緊要な経費は別途、所要の要望を認めるとしており、実質的な要求額は更に増額になると見られます。今回は、国土交通省、環境省、経済産業省、林野庁の概算要求について、住宅・建築関連の内容を中心にまとめました。

 

国土交通省

感染症と自然災害から暮らしを守る

 国土交通省の2021年度予算概算要求は、国費総額の一般会計が5兆9,617億円(前年度当初予算比1.01倍)となりました。同省は、基本方針として、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う社会経済や国民生活等への甚大な影響、近年頻発する大規模自然災害の深刻な被害から、国民の命と暮らしを守り抜き、生活様式の変化に対応した「新たな日常」を実現することを掲げています。そして、「国民の安全・安心の確保」「持続的な経済成長の実現」「豊かで暮らしやすい地域の形成と多核連携型の国づくり」に重点を置いて要求を行うとともに、防災・減災、国土強靭化等の強力な推進や新型コロナウイルス感染症への対応などに関する経費について、要望を行うとしています。

 住宅局関係予算については、「住まい・くらしの安全確保」「くらしの多様化に応える良質な住宅ストックと流通市場の形成」「誰もが安心して暮らせる住まいの確保」「住宅・建築分野の生産性向上と新技術実装の推進」を重点施策に据えています。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を踏まえた対策の検討と、消費増税に伴う住宅取得支援策を実施するとともに、住生活基本計画の見直しに向けた検討を進めるとしています。

 

耐震化をより一層推進

 「住まい・くらしの安全確保」については、災害等に強いまちづくりを推進するため、南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの大規模地震発生時に、大規模火災の恐れがある密集市街地の改善に向けた取り組みを促進するとともに、住宅・建築物の耐震化をより一層推進することが盛り込まれました。

 具体的には、住宅や避難路沿道の建築物、耐震診断義務付け対象建築物等の耐震改修等を引き続き推進するとし、密集市街地総合防災事業に45億円(同1.00倍)、防災・省エネまちづくり緊急促進事業に76億54百万円(同0.92倍)を計上しました。また、激甚化・頻発化する大規模自然災害を踏まえ、地域における防災拠点の整備を促進するため、避難者等の受け入れ施設の整備およびその耐震化に対する支援を強化するとし、地域防災拠点建築物整備緊急促進事業を新設、100億円を計上しました。加えて、水災害・強風災害等による被害の恐れがある住宅について、移転や改修等に対する支援の強化が盛り込まれました(図1)。

 

多様なニーズに応えたリフォームを支援

 「くらしの多様化に応える良質な住宅ストックと流通市場の形成」については、「新たな日常」への対応を含めた多様なニーズを踏まえ、既存住宅の改修や、住宅団地等におけるコワーキングスペース等、テレワーク環境の整備に対する支援を強化するとしています。また、住宅・建築物の省エネ化・長寿命化の推進に向けて、改正建築物省エネ法の周知・徹底等による省エネ住宅・建築物の体制整備や、中小工務店等の連携によるZEHをはじめとした省エネ性能の高い住宅の整備、住宅・建築物の省エネ改修等への支援を強化することが示されました。

 長期優良住宅化リフォーム推進事業には45億円(同1.00倍)、地域型住宅グリーン化事業には140億円(同1.04倍)が計上されたほか、長期優良住宅の認定取得促進に向けたモデル的な取り組みを支援するため、長期優良住宅認定取得促進モデル事業が新設され、60百万円が充てられました。

 既存ストックの有効活用と市場の活性化に向けては、安心R住宅制度や住宅リフォーム事業者団体登録制度等の普及促進を図る取り組みを支援する考えです。また、良質な住宅ストックが適正に評価される市場環境の構築に向けて、住宅ストックの維持向上・評価・流通・金融等の一体的な仕組みの開発・普及に対する支援を行うとしています(図2)。

 

木造建築物の生産体制を強化

 「誰もが安心して暮らせる住まいの確保」では、新型コロナウイルス感染症の影響など、住まいの確保について配慮が必要な世帯を手厚く支援するべく、住宅セーフティネット機能を強化するとしています。また、高齢者が自立して暮らせる住生活の実現に向けて、サービス付き高齢者向け住宅等の整備促進などを図るとし、スマートウェルネス住宅等推進事業に250億円(同1.00倍)を計上しました。

 「住宅・建築分野の生産性向上と新技術実装の推進」については、「新たな日常」の原動力となる社会全体のデジタル化に向けて、住宅・建築分野におけるIT活用等の新技術実装等を進める考えです。BIMの活用環境整備、住宅・建築関係手続きのオンライン化、新技術・サービスの開発・実証等により、業務効率や生産性向上を促進するとしています。

 更に、木造住宅・都市木造建築物における生産体制整備事業に6億円(同1.20倍)を計上しました。ここでは、木造住宅の担い手である大工技能者の減少・高齢化が進む中、地方創生に資する木造住宅や非住宅・中高層の木造建築物の強化を図るため、民間団体等が行う大工技能者の確保・育成、都市木造建築物を担う設計者の育成・サポート等の取り組みを支援するとしています。

 そのほか、CLT等の新たな部材や木造建築技術を活用した住宅・建築物の整備、地域の気候風土に応じて環境負荷の低減を図るモデル的な木造住宅等の整備について支援する方針です。

 

国土交通省

https://www.mlit.go.jp/page/kanbo05_hy_002080.html

 

環境省

ゼロカーボンシティを後押し

 環境省の概算要求額は、総額で7,571億円(前年度当初予算額1兆174億円)となりました。世界中が新型コロナウイルス感染症と、「気候危機」とも言われる気候変動問題という重大な脅威にさらされる中、同省では、「脱炭素社会への移行」「循環経済への移行」「分散型社会への移行」により、持続可能で強靭な経済社会への「リデザイン(再設計)」を強力に進める方針です。

 このうち、「脱炭素社会への移行」については、ゼロカーボンシティ(2050年にCO2実質排出量ゼロを宣言した自治体)の動きを後押しするべく、地域における再生可能エネルギーを最大限に導入するための計画づくりや、地域の状況に応じた再生可能エネルギー等の自立・分散型エネルギーの導入などを支援します。また、ウィズコロナ・ポストコロナ時代にニーズが高まるデジタル分野や物流、住宅・建築物の省エネなど、「新たな日常」の脱炭素化を推進するほか、脱炭素社会の早期実現に向けたイノベーションの加速を図るとしています。

 

ZEHへの定額補助を継続

 「新たな日常」の脱炭素化に向けては、住宅の脱炭素化・防災機能・健康維持増進機能の強化を図るとしています。具体的には、エネルギーの自給自足により災害に強く、ヒートショック対策にもなるZEHについて、更なる普及と、高断熱化の推進を図るとし、経済産業省と国土交通省との連携事業として、戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業に65億50百万円を計上しました。ZEH以上の省エネ性能と、設備の効率的運用等により、再生可能エネルギーの自家消費率の拡大を目指したZEH+(プラス)に1戸当たり105万円を、一定の施工経験に満たないZEHビルダーによるZEHに同じく60万円を定額補助します。また、併せて家庭用蓄電池を設置する場合や、既存一戸建住宅の断熱リフォームに対して補助を行うとしています。

 このほか、経済産業省・国土交通省・厚生労働省との連携により、業務用施設のZEB化・省CO2化に資する高効率設備等の導入を支援する、建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業に166億65百万円(同54億円)を計上しています。

 

環境省

https://www.env.go.jp/guide/budget/index.html

 

経済産業省

広葉樹のバイオマス利用の実証を支援

 経済産業省の概算要求総額は1兆4,335億円(前年度当初予算額1兆2,719億円)となりました。新型コロナウイルス感染症を契機とした、接触回避、職住不近接、ギグエコノミー(新しい働き方、無人化、AI化)、グローバリズムの修正といった「新たなトレンド」への対応を加速し、ウィズコロナ・ポストコロナにおける「新たな日常」の先取りを通じて、企業行動・産業構造・社会システムの転換を図る方針です。

 具体的には、「デジタル~仕組みと事業のアップデート」「グリーン~コロナを機に脱炭素化を深化~」「健康・医療~健康な暮らしの確保~」を重点取り組みに挙げています。また、分野横断的課題として、「レジリエンス~安心して生活できる環境の構築~」「中小企業・地域」「人材・イノベーション」を掲げています。その上で、柔軟な事業再構築・事業再編、投資の加速、労働移動の円滑化、スタートアップとの連携等を支援し、規制・制度の改革を進めるために関連制度の見直しを行うとしています。

 このうち、資源・エネルギー関連では、再エネ主力電源化・省エネの推進に2,310億円(同1,988億円)を計上しました。この中で、新規事業として、木質バイオマス燃料等の安定的・効率的な供給・利用システム構築支援事業を創設し、15億円を充てました。燃料材に適した早生樹・広葉樹等の樹種の選定、育成手法等に関する調査・実証を行い、国産木質バイオマスの活用促進、安定供給の確立を図る考えです。

 また、住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業には84億20百万円を計上しました。より性能を深堀りしたZEHであるZEH+等の実証や、大規模建築物のZEB化の実証、先進的な建材や工法を用いた既存住宅の省エネリフォームの実証等について支援を継続します。

 

経済産業省

https://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2021/index.html

 

林野庁

都市部におけるJAS構造材利用を支援

 林野庁は、森林資源の適切な管理と林業の成長産業化の実現を掲げ、3,482億84百万円(前年度当初予算額3,006億円)を計上しました。このうち、森林整備事業に1,491億58百万円(同1,222億61百万円)、治山事業に740億58百万円(同607億3百万円)、農山漁村地域整備交付金に1,131億30百万円(942億75百万円)、林業成長産業化総合対策に173億24百万円(同128億68百万円)を計上しました。

 林業成長産業化総合対策は、意欲と能力のある林業経営者の育成や経営の集積・集約化を進めるため、路網整備・機能強化、間伐、高性能林業機械の導入、木材加工流通施設の整備等のほか、スマート林業・新素材開発等の林業イノベーションの推進、都市の木造化の推進、CLT等の木質建築資材の利用環境の整備等、川上から川下までの取り組みを総合的に支援するものです。

 同対策内では、林業・木材産業成長産業化促進対策に106億14百万円(同86億4百万円)、林業イノベーション推進総合対策に19億73百万円(同10億50百万円)、木材産業・木造建築活性化対策に19億31百万円(同13億10百万円)、木材需要の創出・輸出力強化対策に9億9百万円(同7億円)が計上されています。

 このうち、木材産業・木造建築活性化対策では、都市部における木材需要の拡大に向け、木質建築資材の利用に関する実証への支援や大径材の需要拡大に向けた技術開発等への支援、CLT・LVL等の建築物への利用環境整備への支援を行います。併せて、需給情報の共有やマッチングの取り組みを推進し、効率的なサプライチェーンの構築を図るとしています。

 具体的には、都市の木造化促進総合対策事業に6億42百万円(同4億48百万円)を計上し、JAS構造材や木質耐火部材等について、都市部における利用の実証を支援するほか、大径原木や羽柄材・内装材等の利用拡大等に向けた取り組みを支援します。そのほか、CLTを用いた先駆的な建築物の設計・建築や街づくりの実証等を支援する、CLT・LVL等の建築物への利用環境整備事業に10億29百万円(同6億61百万円)、川上から川下までのマッチングや、木材需給情報を収集・分析し発信する取り組み等を支援する生産流通構造改革推進事業に2億61百万円(同2億1百万円)を計上しています。

 

産官学連携のイノベーションを推進

 林業イノベーション推進総合対策では、林業イノベーション現場実装推進プログラムの実現に向けて、自動化機械や木質系新素材等の開発・実証、スマート林業や先進的造林技術等の開発技術の実装、森林資源デジタル管理や高度技術者育成等の普及に向けた環境整備を行うとしています(図3)。この中で、林業イノベーションハブ構築事業を新設し、68百万円を計上しました。産官学のトップランナーからなるプラットフォームを設立し、各事業への助言や技術開発の方向性の提言等、PDCAプロセスを支援していく考えです。

林野庁

https://www.rinya.maff.go.jp/j/rinsei/yosankesan/R3gaisan.html