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防災の日特集 来たるべき地震災害に備える 改めて住宅の耐震化の更なる促進を

9月1日は、10万人以上の死者・行方不明者を出した関東大震災に由来し、「防災の日」となっています。この日を含む1週間は「防災週間」となっており、社会全体の防災意識向上のため、防災に関する広報活動等が全国的に実施されます。今回は、防災の日特別企画として、日本において発生が懸念されている巨大地震に備えるべく、住宅の耐震化の重要性についてまとめました。

 

活発化する地震活動

 近年、世界中で自然災害の頻発化・激甚化が危惧されています。特に、現在の日本では地震活動が活発化していると言われており、2010~2019年までの10年間で、ほぼ毎年、歩行困難など大半の人が行動に支障を感じるとされる震度5強以上の揺れを観測した地震が発生しており、その回数は合計70回に上ります(図1)。更に、2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)以降、2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震ではいずれも最大震度7を観測しました。今年3月13日には、石川県能登地方を震央としたマグニチュード5.5の地震が発生し、石川県輪島市で最大震度5強を観測したほか、震度1以上の有感地震は今年だけで既に1,142回に上っています(8月17日時点)。

 

迫り来る南海トラフ巨大地震

 国は、地震防災対策の強化と地震被害の軽減に向け、政府の特別機関として地震調査研究推進本部を設置し、調査研究を行っています。

 今年1月24日、同推進本部の地震調査委員会は、長期評価による地震発生確率値を公表しました。これによると、海溝型地震のうち、今後30年以内の地震発生確率が26%以上と、最も高い「Ⅲランク」に分類されたものの中で、特に南海トラフ地震については、マグニチュード8~9クラスの規模の地震が10年以内に30%程度、30年以内に70~80%、50年以内では90%程度もしくはそれ以上の確率で発生するとしています。更に、前回の発生から74年が経過し、平均発生間隔である88.2年にかなり近付いている状況にあるとしています。

 南海トラフ地震は、東海地方から九州地方まで、広範囲で被害が生じることが想定されています。政府は、中央防災会議において「南海トラフの巨大地震モデル検討会」を設置し、科学的に想定される最大クラスの南海トラフ地震(以下、南海トラフ巨大地震)が発生した際の被害想定を実施しています。昨年6月に公表された被害想定によると、人的被害は最大で死者数が約23万1千人、負傷者数が約52万3千~52万5千人に上り、全壊および焼失棟数は200万棟を超えると試算されています(図2)。

 

耐震性の有無で被害に差

 前述した南海トラフ巨大地震の被害想定においては、建物の耐震性強化による被害の軽減効果も推計されています。これによると、住宅の耐震化率を2013年時点の約82%で試算した場合には、地震の揺れによる全壊棟数が約107万1千棟、建物倒壊による死者数が最大で約6万5千人であるのに対し、耐震化率を95%に引き上げた場合には、揺れによる全壊棟数が約51万5千棟、建物倒壊による死者数は最大で約2万9千人にまで抑えられると推計しています(地震動は陸側ケースを想定)。

 実際、過去の大地震において、住宅の建築時期の違い、即ち耐震性の有無によって被害に差が出ていることが分かっています。建築基準法における耐震基準は、1981年6月の大規模改正以降の基準を「新耐震基準」、それ以前は「旧耐震基準」として区別されており、「新耐震基準」により建てられた住宅については耐震性があると判断されます(図3)。更に、木造住宅については、阪神・淡路大震災を受けて2000年に耐震基準の厳格化が図られ、これが現行の耐震基準となっています。つまり、木造住宅については、旧耐震基準、新耐震基準、そして現行基準の建築物が混在している状況にあります。

 2016年の熊本地震で震度7の揺れに2回見舞われた熊本県益城町において、国土交通省の国土技術政策総合研究所などが同町の住宅被害の実態に関する調査を実施しています。これによると、調査・分析した1,955棟のうち、297棟(15.2%)で倒壊・崩壊の被害があり、そのうちの72.1%に当たる214棟が旧耐震基準で建てられていたことが分かりました(図4)。また、新耐震基準で建てられた住宅の中でも、特に現行の耐震基準で建てられた住宅の被害は小さく、倒壊した7棟のうち大半は施工不良や地盤の変形等が原因とされています。更に、住宅性能表示制度の耐震等級3の住宅については、大部分が無被害で、高い耐震性が実証された結果となりました。

 

 

進まない耐震改修

 総務省による「2018年住宅・土地統計調査」のうち、今年1月31日に公表された住宅の構造等に関する集計の結果、持ち家の総数3,280万2千戸のうち、1980年以前の旧耐震基準で建てられた住宅は891万5千戸(27.2%)、1981年以降の新耐震基準で建てられた住宅は2,264万1千戸(69.0%)となりました。

 2014年以降に耐震診断が行われた持ち家は全体の9.1%に当たる296万9千戸となっています。その内訳は、旧耐震基準による住宅が47万2千戸(15.9%)、新耐震基準による住宅が247万9千戸(83.5%)と、そのほとんどが新耐震基準の住宅であることが分かります。また、耐震診断の結果、新耐震基準の住宅の95.6%で耐震性が確保されていたのに対し、旧耐震基準による住宅は50.9%にとどまり、半数は耐震性を有していない結果となりました。

 耐震改修工事の実施状況については、2014年以降に耐震改修工事をした持ち家は、全体の1.8%に当たる59万5千戸となっています。このうち、旧耐震基準による住宅は22万戸(37.0%)で、これは旧耐震基準による持ち家のわずか2.5%であるのが現状です。また、新耐震基準による住宅は36万3千戸で、新耐震基準による持ち家の1.6%となっています。

 

耐震化率95%を目指して

 国は、現状、住生活基本計画や南海トラフ地震防災対策推進基本計画などにおいて、住宅の耐震化率について、2013年の約82%という推計値を踏まえ、2020年までに95%を、2025年までに耐震性を有しない住宅ストックのおおむね解消を目標に掲げています(図5)。

 一方、このたび国土交通省の「住宅・建築物の耐震化率のフォローアップのあり方に関する研究会」が公表したとりまとめによると、2018年の耐震化率の推計値は約87%となりました(図6)。2013年の約82%から5年間で5ポイント上昇したものの、このペースでいくと2020年までに95%には到底およばない状況が見て取れます。更に、同研究会では、2018年の耐震化率を初めて住宅種別に公表し、一戸建住宅の耐震化率は約81%にとどまっていることが明らかとなりました(図6)。

 現在、国は住生活基本計画の見直しに向けて、来年3月の閣議決定を視野に検討を進めています。それらを踏まえ、同研究会では同とりまとめの中で、今後の耐震化の目標のあり方についての方向性を示しました。これによると、住宅については、2018年の耐震化率および南海トラフ地震などの大地震発生の切迫性を踏まえ、これまで以上に行政庁をはじめとする関係者の積極的な取り組みを求めています。その上で、現状の目標は達成困難であるとして、目標を5年間スライドさせ、2025年までに耐震化率95%、2030年までに耐震性を有しない住宅ストックをおおむね解消するという新たな案を提言しています(図7)。

 今後、住生活基本計画など、新たな耐震化の目標が設定されることとなりますが、地震大国である日本において、来たるべき大地震に備え、目標達成を現実のものとすることが重要です。住宅の耐震化が大地震時に大切な命を守ることにつながるという認識を強く持ち、住宅業界に携わる一人ひとりが住宅の耐震化を一層促進していくことが求められます。