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2020年の木材業界の展望

 

2019年の木材業界を振り返って

2020年の新春を迎えるに当たり、謹んでお慶びを申し上げます。さて、2019年の国内の木材加工業界は、合板工場やLVL工場といった大規模工場を中心に活況を呈しました。直近では、年間原木消費量が10万m3を超えるような大型工場が新たに4カ所で稼働し始めたことで、需給バランスが崩れることも懸念されましたが、外国産材から国産材への切り替えが進んだことで払拭されました。地場の小規模な製材工場についても比較的好況で、後継者不在などを要因とする黒字廃業こそ見られたものの、いわゆる経営破たんは限定的なものにとどまりました。
また、昨年も台風15号および台風19号が日本に上陸するなど、大きな自然災害が相次ぎました。こうした大きな自然災害が毎年のように発生しており、これに伴って復旧・復興に必要な土木用資材や住宅用資材などの需要が、一時的かつ特定地域において発生する傾向にあります。こうした需要に速やかに対応していくために、特定の一工場へ依存するのではなく、複数の地場工場が連携していくことが、生産側、流通側ともに求められた年となりました。

 

2020年の展望
新設住宅着工戸数の将来的な見通し

総務省が昨年4月に発表した住宅・土地統計調査によれば、2018年10月時点の空き家率は過去最高の13.6%と上昇を続けています。一方で、新設住宅着工戸数はそれほど急激な落ち込みを見せてはいません。これは、目には見えない人口の流動化が要因だと考えています。例えば、現在では祖父母世帯は町村に、父母世帯は県庁所在地に、子供世帯は大都市に、そして孫世帯は仕事の都合で別の都市で暮らすといったことがよくあります。一つの地域に人が定住しないため、常に新たな住宅が必要となり続けているのです。大都市においても、郊外型ニュータウンから都心への回帰や、建て替え需要も引き続き生じています。また、国内の労働力不足に対して、外国人技能実習生や研修生の受け入れによる対応が進められており、こうした人たちが現在30万人超います。更に、昨年4月には「出入国管理及び難民認定法(入管法)」の改正により新たな外国人労働者を受け入れる制度も開始されており、人口動態に含まれない人の流れが常に生じています。地方の企業は、以前のように地域内だけでは労働力を確保できなくなっており、こうした外国人たちの受け入れを進めています。そして、受け入れのために住まいを用意するケースも多いことから、社宅の需要が顕在化しています。
これらを踏まえると、新設住宅着工戸数の長期的な減少ということは避けられないものの、直近でそれほど急激に落ち込んでいくことはないだろうと考えています。

 

国産材需要の裾野が拡大

2018年の木材の総需要量は8,247.8万m3(前年比0.8%増)と、それほど大きく増加していません。しかし、足元の大きな流れの一つとして、国産材への転換が間違いなく起きています。例えば、複合床板基材における国産材合板比率は上昇を続けており、外国産材のOSB(配向性ストランドボード)も徐々に国産針葉樹の構造用合板へと切り替わっています。更に、ホワイトウッドの集成材の管柱や2×4スタッド(間柱)についても、国産スギ材が利用されるケースが増加しています。建築用材以外についても、例えば、ラジアータパインなどが使われていた梱包用材が、今後はスギへの転換が進んでいくと考えています。これまでは外国産材のみが使用されていた分野においても国産材の利用が拡大していく可能性が高く、国産材需要の裾野はますます広がっていくと考えています。
また、たとえ新設住宅着工戸数が減少したとしても、1戸当たりの木材使用量を増加させることができれば木材需要の減少は避けられます。そのためには、これまで木質化がなされてこなかったキッチンや浴室、トイレといった水回りの部材や、住設メーカーが既製品として販売する住設機器など、可能な部分は木材で代替することで、新たな木材利活用の芽を早急に生み出していかなければならないと思っています。

 

JAS製材の需要は高まっていく

現在、鉄筋コンクリート造の建設にかかわる鉄筋工や型枠工といった職人について、高齢化による人手不足が顕著となっており、工期や人件費の面で相対的なコスト高となっています。中層建築物を中心に非住宅の木造化が進められることはある意味で必然と言えます。
木造で建築する大きなメリットの一つに、機械プレカット技術があります。鉄骨造や鉄筋コンクリート造では、建設地で順序通りに建築するしかありませんが、木造では建設地で躯体部分を建築すると同時に、プレカット工場においてトラス部分の部材を製造することができます。つまり、現場が二つあり、並行作業を進めることで工期短縮につなげることができるのです。今後、老健施設などの社会福祉施設、保育園や幼稚園などの幼保施設などをはじめ、工場や倉庫、郊外型店舗において、木造が選ばれる可能性は更に高まっていくと考えています。
また、こうした動きに連動して、合法性証明などの出所の明確性や、JAS製品をはじめとした品質・性能が明確な木質材料の需要が確実に増加していきます。これには、設計事務所等が木造に携わるケースが増えたことで、構造計算が可能な部材が求められることに起因しています。つまり、設計サイドから実質的な材料指定が行われるようになっているのです。もはや、かつての大工さんによる「板図」の時代ではありません。構造計算を必要とする木造軸組工法へと転換してきたことの意味がここにも現れてきていると言えます。

 

森林環境譲与税に期待

林政史に残る大きなできごととして、2019年度は約200億円の森林環境譲与税が、初めて各自治体へ配分されます。この森林環境譲与税が活用されていくに当たって、今後、顕在化される影響が二つあると考えています。
一つ目は、森林を有さない大都市において木材利用が進むことで、地方へも還元されるということです。大都市における木材の利活用では、かねてより交流がある地域の木材が積極的に使われることが容易に予想されます。これによって民間レベルでの交流がより進み、新たな需要の創出につながることも期待できます。
二つ目は、今後、地方を中心に起こるであろう市町村の広域合併によるケースです。森林環境譲与税が、吸収された山側の町村の森林整備や、林業活性化のために使用されるほか、この合併により公共施設の再編等が起これば、新たな施設において木造化・木質化の財源として使用されることも十分に考えられます。

 

物流構造の変革が必要

今年最大のテーマになると考えているのは物流の効率化です。運送業界は慢性的な人手不足状態に陥っており、早急にドライバー不足に対応するシステムを構築していかなければなりません。今後、物流については直送が増加せざるを得ないでしょう。このような中で、問屋さんが担ってきた「在庫」の機能を生かして、いかに安定供給を維持していくかが課題となっています。
また、これほど時代が変化を遂げても、家の上棟は「大安」に行うといった風習は、依然として根強く残っています。若者世代はそれほど気にしていないかもしれませんが、住宅の購入は親世代が資金を提供することが多いということが影響しています。「大安」のピーク時の在庫量に合わせて保管用の敷地を確保する必要性に駆られて、郊外に大きな倉庫を用意するといったケースも見られます。建築時期をいかに平準化して、効率を上げていくかについても考える必要があります。

 

外国人からも学ぶ年に

今年は、夏に東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されることもあり、例年以上に訪日外国人数が増加するでしょう。外国人に対する「おもてなし」という意味でも、日本が世界に誇る潤沢な循環資源である木をふんだんに使った施設などが続々とオープンしています。一般の方が木にふれることも多くなり、一般の方や外国人から、思いもよらない木の使い方を教わるようなこともあるのではとも期待しています。いずれにしろ、期待できる1年になると思っています。

 

 
ノースジャパン素材流通協同組合
http://www.soryukyo.or.jp/