1. TOP
  2. ナイスビジネスレポート
  3. 国土交通省 制度施行10年経過を見据えた住宅瑕疵担保履行制度のあり方に関する検討会 既存住宅流通・リフォームへの保険の普及を促進

国土交通省 制度施行10年経過を見据えた住宅瑕疵担保履行制度のあり方に関する検討会 既存住宅流通・リフォームへの保険の普及を促進

国土交通省はこのほど、「制度施行10年経過を見据えた住宅瑕疵担保履行制度のあり方に関する検討会」を開催し、全面施行から10年が経過した住宅瑕疵担保履行法について、この10年間の市場環境の変化を踏まえた今後のあり方について最終報告書案を公表しました。

 

住宅瑕疵担保履行法施行から10年

建設業者および宅地建物取引業者は、2000年4月に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づき、新築住宅の構造耐力上主要な部分および雨水の侵入を防止する部分について10年間の瑕疵担保責任を負うことが義務付けられています。しかし、その後の構造計算書偽装問題により、新築住宅の売主等の財務状況等によって瑕疵担保責任が十分に履行されない場合、住宅取得者が極めて不安定な状態に置かれることが分かりました。このため、「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)」が2009年に施行され、新築住宅の売主等に対して資力確保措置を義務付けるとともに、住宅瑕疵担保責任保険の引き受け主体の整備および紛争処理体制の整備を行うことで、住宅取得者の利益の保護が図られています。
国土交通省は、住宅瑕疵担保履行法の施行から今年で10年が経過するのに当たり、昨年7月に「制度施行10年経過を見据えた住宅瑕疵担保履行制度のあり方に関する検討会」を設置し、同制度の今後のあり方について議論を重ねてきました。同検討会では、この10年で得られた住宅瑕疵担保責任保険の実績などの各種データや、ストック活用型社会への転換による既存住宅流通・リフォーム市場の重要性の向上といった市場環境の変化を踏まえ、「新築住宅の資力確保措置」「既存住宅流通・リフォーム市場拡大と住宅瑕疵保険(2号保険)」「現場検査のあり方」「住宅紛争処理制度等」などを骨子とする報告書を策定し、同制度の今後の方向性を示しました。

 
基本的な枠組みは維持

住宅瑕疵担保履行法では、資力確保措置として、瑕疵担保保証金を供託するか、住宅に関する瑕疵担保責任の履行によって生ずる損害をてん補する住宅瑕疵担保責任保険に加入することを、新築住宅の売主等に義務付けています。今年3月31日の基準日現在、措置が講じられた新築住宅は累計で約810万戸となり、そのうち供託が390万戸、保険が420万戸となっています。
報告書では、新築住宅の売主等による資力確保措置を通じて、住宅取得者等の保護を図る必要性は現時点においても変わらず、供託と保険の併用による基本的な制度の枠組みは維持すべきと提言しています。その上で、国土交通省に対して、供託保証金については、10年の満期を迎えた保険契約の事故実績の分析結果や、建築費水準といった社会経済情勢の変化等を踏まえ、供託保証金水準の見直しの必要性を検討するべきと訴えています。また、保険加入に関しては、保険を引き受ける住宅瑕疵担保責任保険法人(以下、保険法人)に対して、再保険の引き受け主体である損害保険会社の協力の下、満期契約の事故実績が把握できるなるべく早いタイミングで、保険料水準について検証に着手するべきといった方向性を示しました。

 
加入手続きを簡素化し普及促進

総務省の住宅・土地統計調査によると、2018年の既存住宅流通戸数は16万戸程度とされ、新築住宅を含めた全住宅流通量の14.5%を占めていると推計されています。既存住宅流通やリフォームについては、既存住宅売買瑕疵保険やリフォーム瑕疵保険といった住宅瑕疵担保履行法第19条第2号に基づく保険(以下、2号保険)が既にありますが、消費者保護の観点から保険商品の充実策および普及策を講じていくことが重要だと指摘しています。そのために、加入手続きの簡素化・効率化を行う余地がないか検討をするとともに、認知度向上、普及に向けた方策を講じていくべきと提言しています。
加入手続きの簡素化については、長期間性能が変わらないと考えられる配筋については、新築時等の検査結果を活用して検査を省力化する方向で検討すべきとしたほか、新築時等の検査と同一の保険法人が2号保険の現場検査を担う場合は、新築時等の検査結果を活用することを認める方向を示すべきだとしました。また、住宅履歴情報の活用も簡素化に向けた有効な手段の一つと考えられるため、検査に必要な書類等について統一し、保管ルールを策定していくことも必要だとしています。
また、今後、1号保険の満期を迎える住宅について、経年に伴うリフォーム工事が行われたり、既存住宅市場で流通していくことも考えられ、これらの住宅に対して引き続き何らかの保証を求める消費者ニーズが一定程度想定されるとした上で、新たな保険商品の開発についても提案しています。例えば、住宅事業者に延長保証保険の申し込み意向がない場合に住宅所有者の判断で加入できる延長保証保険や、事故発生防止に向けて施工状況に関する検査を充実する仕組み、保険料の割増引の弾力化、工事頻度に合わせた弾力的な保険期間の設定など、今後の市場環境の変化等を受けた商品の開発や改善の検討を推進すべきだと提言しています。

 
検査実態を踏まえた見直しを

保険の付保に当たっては、検査基準に適合しているかなどを確認するために現場検査が実施されます。報告書では、防水に関する事故件数の多さや、既存住宅の2号保険に関する事故率の高さを踏まえ、現状の現場検査にも改善や見直しが望まれる面があり得ると述べています。
現在、新築住宅については、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分に関して、基礎配筋工事完了時など決められたタイミングで検査が実施されます。このうち、構造耐力上主要な部分に関しては、建築基準法令に基づく規程などの公的な基準が定められているのに対し、雨水の浸入を防止する部分に関しては、標準的な施工基準やガイドラインが存在しないことを課題として挙げています。
この点については、国土交通省と保険法人が連携して、住宅事業者に対し改めて設計施工基準を分かりやすく周知していくとともに、防水工事の施工方法等で、学会規準等の工学的な知見が得られたものについては、設計施工基準等においてより詳細な仕様を明示すべきとの方向性を示しました。そして、適正な現場検査のあり方について、引き続き検討していく必要があるとしています。
既存住宅の現場検査については、現行の設計施工基準の解説書等が既存住宅のリフォーム等には必ずしも適していないことや、既存住宅売買瑕疵保険の現場検査やインスペクション、フラット35の適合検査など、検査制度が複数存在することで宅建業者と消費者いずれにとっても分かりづらくなっているといった指摘があるとの認識を示しました。
これらの点については、既存住宅における事故率の低減を図るため、リフォーム等に関する設計施工基準について、保険法人に対しては改修工事の実態を踏まえた見直しの検討を、国土交通省に対しては劣化事象等の生じている範囲を特定し、不具合の原因を総合的に判断する「二次的インスペクション」の方法等に関するガイドラインを策定するべきといった方向性が示されています。
また、ドローンや点検ロボット等の新技術の活用について、既存住宅の劣化事象等の検査を念頭に、現場検査および損害調査における導入コストも含めた活用可能性について検討すべきとの見解を示しました。

 
既存住宅にも紛争処理制度を拡大

住宅瑕疵担保責任保険が付された住宅等に関して、売主と買主といった契約当事者間で紛争が生じた場合は、住宅リフォーム・紛争処理支援センターにおいて、建築士、弁護士といった専門家への相談や指定住宅紛争処理機関による紛争処理手続きを受けることができます。報告書では、こうした制度の認知度および利用実績は着実に増加しており、消費者が専門家の支援を得ながら住宅事業者との紛争に対応することができるという意味で、本制度の必要性、有効性は今後とも引き続き高いとしています。その上で、既存住宅の取引が拡大していく可能性やリフォームに関する相談事例が多いことを踏まえ、対象とする住宅の範囲の拡大を検討するべきとの方向性を示しました。具体的には、一定の要件を満たすリフォーム・既存住宅売買契約に関する紛争や、2号保険が付された住宅の請負契約および売買契約に関する紛争などが想定されています。
また、更なる周知・活用を推進するために、瑕疵担保責任期間の終了を控えた住宅取得者等についてリマインドのためのダイレクトメールを送付する仕組みづくりや、保険法人等の協力の下、自身の住宅が制度対象住宅か否か問い合わせが可能なワンストップ窓口の創設といった案が提示されています。

 

 
国土交通省 制度施行10年経過を見据えた住宅瑕疵担保履行制度に関する検討会
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000159.html