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国土交通省 都市計画基本問題小委員会 コンパクトシティ推進に向けた中間とりまとめ

都市の持続性の確保へ大きく転換

国土交通省の都市計画基本問題小委員会は7月30日、「安全で豊かな生活を支えるコンパクトなまちづくりの更なる推進を目指して」と題した、コンパクトシティ政策に関する中間とりまとめを公表しました。
日本の都市政策は、人口減少や高齢化の急速な進行に起因する様々な課題が顕在化するに伴い、拡散した市街地をコンパクト化して都市の持続性を確保する「集約型都市構造化」へと大きく転換しています。2014年には改正都市再生特別措置法の施行により、立地適正化計画制度が創設されました。これは、居住機能や福祉・医療・商業等の様々な都市機能を計画的に誘導するとともに、公共交通を充実させることにより、生活サービス機能へアクセスしやすい環境を整えることで、コンパクトシティ・プラス・ネットワーク型のまちづくりを目指すものです(図1)。
中間とりまとめでは、同制度の創設から5年を迎える中、現時点で見えてきた課題に対応し、コンパクトシティ政策を次のステージに進めるための施策について提言がなされています。

 

 

住民への丁寧な説明が必要不可欠

 中間とりまとめでは、これまでの取り組みに関し、地方公共団体においては改善の余地がある、国においては更なる取り組みや環境整備を図る必要があるとしています。更に、昨今の自然災害の頻発・激甚化を踏まえ、災害リスクを勘案した、安全でコンパクトなまちづくりについても更なる取り組みが求められるとしています。
これらの状況を踏まえ、①コンパクトシティの意義等を改めて分かりやすく整理・共有すること、②立地適正化計画の制度・運用を不断に改善し、実効性を高めること、③分野や市町村域を超えた連携を進めること、④居住誘導区域外に目配りすること、⑤市街地の拡散を抑制すること、⑥立地適正化計画等と防災対策を連携させること、以上の6項目について今後の方向性を示しました。
このうち、①については、コンパクトシティへの理解が一定程度進んでいるものの、一極集中を目指すものといった誤解や、誘導区域外の住民は切り捨てられるのではといった不安の声が取り組みのネックになっているとしています。これについて、コンパクトシティの意義はまちを単に縮小するものではなく、人口減少等を契機にまちなかや拠点の価値を高め、より豊かな生活の実現を目指すものであることを改めて整理し、住民、民間事業者、行政機関の間で共有すべきとしています。

 
市街地の拡散を抑制

⑤市街地の拡散の抑制については、居住誘導区域において、日常生活に必要な病院や店舗といった施設を適切な立地に促進するなど、まちなか等の魅力の向上とともに、車の両輪とした取り組みの強化が提言されています。このなかで、50戸程度の建築物が連なっているといった地域について条例で区域・用途を定めた場合に、市街化調整区域であっても開発を認める、都市計画法第34条第11号条例について、コンパクトシティの理念に則った運用の適正化を図るべきとしています。

 
新たに防災対策との連携を開始

新たな施策の方向性として、⑥立地適正化計画等と防災対策との連携が示されました。自然災害の頻発・激甚化により、広範囲にわたる土砂災害・浸水等による被害が発生しており、安全な都市形成に向けた取り組み強化の必要性を挙げています。
この点については、土砂災害特別警戒区域など、災害の恐れがあるとの指定等がなされているハザードエリアについては、災害リスク評価の環境整備等により、居住誘導区域からの除外を徹底していくべきとしました。
また、防災部局と連携し、立地適正化計画において、居住誘導区域の内外で地域特性に応じた安全確保対策のあり方や、優先順位の考え方等をあらかじめ位置付けることの必要性を述べています。このほか、ハザードエリアからの住民の自主的な移転の誘導・支援をすること、不特定多数が利用する学校や旅館、集会所などの建築物について、災害リスク情報の提供等により開発の抑制に取り組むことなどが求められるとしています。