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林野庁 2018年度 森林・林業白書 製材需要の拡大で木材自給率の達成を

 林野庁がこのほど発表した2018年度の森林・林業白書では、2025年の木材自給率50%の目標達成に向けて、JAS製材品をはじめとした競争力のある木材製品を供給できる体制の構築を課題として挙げ、安定的かつ効率的な供給体制に対する支援を実施するとしています。今回は、国内における製材需要の変遷と林野行政における需要促進の取り組みについてまとめました。

 

2025年に木材自給率50%
 

「2018年度の森林・度林業白書」によれば、日本の木材需要は近年では回復傾向にあり、2017年の木材の総需要量は前年比4.8%増の8,185万m³と、10年ぶりに8,000万m³台を回復しました(図1)。その内訳を見ると、製材用材が32.2%、合板用材が13.0%、パルプ・チップ用材が39.5%、その他用材が5.4%、燃料材が9.5%を占めています。また、木材自給率についても7年連続で上昇を続けており、2017年は1986年の水準を超える36.2%(前年比1.4ポイント増)にまで回復しました。
林野庁は、2016年に策定した「森林・林業基本計画」において、2025年の木材総需要量を7,900万m³と見通した上で、木材供給量及び利用量を4,000万m³とし、木材自給率50%の達成を目指しています。

 

 

製材需要を喚起して自給率を向上
 

国産材の供給量は、2002年の1,692万m³を底として増加傾向にあります。これには、森林資源の充実や、合板における国産材利用量の増加、バイオマス発電施設での利用の増加等が背景にあります。2017年には、前年比9.3%増の2,966万m³となり、このうち大多数を占める用材部門は、前年比4.3%増の2,331万m³となりました。用材における用途別の内訳は、製材用材1,263万m³、合板用材412万m³、パルプ・チップ用材519万m³で、自給率はそれぞれ、製材用材47.9%、合板用材38.6%、パルプ・チップ用材16.1%という状況にあります(図2)。
製材について詳細を見ると、2008年以降の製材需要はピーク時の4割程度で推移しており、2017年には前年比0.8%増の2,637万m³となっています。日本においては、製材品の約8割が建築用として使用されており、年間の新設住宅着工戸数と密接な関係にあります。2017年の新設住宅着工戸数96万戸のうち、木造住宅の着工戸数は55万戸で、木造率は57%です(図3)。
このうち、一戸建住宅の木造率は89%と高い水準にある一方で、共同住宅は19%にとどまっています。ただし、3階建て以上の木造共同住宅については、2017年は2,934棟となり、2013年の755棟から約4倍に増加しています。
林野庁は、2017年は丸太輸入量の減少に加え、燃料材の需要が増加して国産材供給量が増加したことで、自給率が上昇しているとしています。ただし、木材供給量及び利用量は全体としては順調に推移しているものの、製材用材については微増の状況にあり、目標の達成に向けては製材利用の拡大を図る必要があるとして、取り組みを強化しています。

 

 

 

製材需要の動向
 

林野庁は、現在の製材需要の動向として、住宅の品質・性能に対する消費者ニーズや非住宅分野への対応等により、寸法安定性に優れ、強度性能が明確な木材製品が求められているとしています。そのほか、プレカットの普及に伴い品質の均一な乾燥材等への需要が高まり、2018年の人工乾燥材の割合は42.7%と2008年から21.1ポイントも増加しています。これらを踏まえながら、製材分野を中心とした木材製品の競争力の強化を図っています。

 

 

性能・品質が確かなJAS材の流通を拡大
 

林野庁は、今年度の林産物の供給及び利用の確保に関する施策として、木材産業の競争力を強化するために、①木材加工・流通体制の整備、②品質及び性能の豊かな製品供給等、③地域材の高付加価値化の3つを推進しています。
①木材加工・流通体制の整備については、地域における森林資源、施設の整備状況等を踏まえながら、製材工場等の規模ごとの強みを生かした木材加工・流通体制の整備を進めるとしています。具体的には、CLT等の新たな製品への供給をはじめとする需要側のニーズに的確に対応した、地域材の安定的かつ効率的な供給体制の構築に資する木材加工流通施設等の整備への支援を実施します。そのほか、生産性向上等の体質強化を図るための木材加工流通施設の整備、間伐材の生産、路網整備等への一体的な支援、地域材の供給力の増大と品質及び性能の確かな木材製品の安定供給のための木材加工設備についてのリースによる導入支援、製材業、合板製造業等を営む企業が実施する設備導入に対する利子の一部助成などを実施しています。
②品質及び性能の確かな製品供給等については、こうした木材製品を供給できるようにするため、乾燥施設の整備、大径材から得られる製材品の強度予測技術や製材及び乾燥技術の開発等を支援するとともに、JASマーク等による品質及び性能の表示を促進するとしています。
③地域材の高付加価値化については、A材丸太を原材料とする付加価値の高い構造材、内装材、家具、建具等の普及啓発等の取り組みに対して支援を行うとしています。
そのほか、公共建築物や民間非住宅、土木分野での新たな木材需要の創出などにより製材利用の拡大を図っていくとしています。