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国土交通省 2019年版国土交通白書を公表 令和時代の「豊かな生活空間」を展望

 国土交通省は7月2日、2019年版の国土交通白書を公表しました。平成を振り返りつつ、令和の時代に求められる「豊かな生活空間」に向けた国土交通政策について展望しています。今回は、同白書についてまとめました。

 

平成における新技術の進歩

 

国土交通白書は、国土交通省の施策全般に関する年次報告として、年に1回公表されるものです。特定のテーマについて課題や施策を報告する第1部と、国土交通行政の動向を報告する第2部とで構成されています。

令和で初の公表となった今回は、第1部で「新しい時代に応える国土交通政策」をテーマに、平成における「技術の進歩」と「日本人の感性(美意識)」に関する変化等を振り返りながら、新たな時代に求められる国土交通政策の方向性について整理しています。
「技術の進歩」に関する変化については、平成で特に進展した情報通信技術(ICT)や、省エネルギー技術、地震対策技術のほか、超スマート社会(Society5.0)につながる新技術の進歩に着目し、概観しています。
このうち、地震対策技術の進展として、コンピューター解析能力の向上による免震技術の進歩が挙げられています。そして、阪神・淡路大震災があった1995年以降、マンションなどの集合住宅を中心に、建築物への免震構造の採用が広がりを見せ、新潟中越地震や東日本大震災など、大規模な地震災害が発生した翌年には、その数が増えているとしています。
また、超スマート社会(Society5.0)につながる新技術の進歩として、IoT及びビッグデータの拡大や、人工知能(AI)の進歩を挙げています。特に、日常生活のあらゆるものがインターネットにつながり、相互に情報交換し制御するIoTの進展について、インターネットにつながる機器の数が2003年の5億台から、2015年には250億台にまで増加し、2020年には500億台に達するとの予想を示しています。今後は、IoTの進展により、ビッグデータがますます膨大なものとなっていくとしています。

 

「物の豊かさ」 から 「心の豊かさ」 へ変化

 

「日本人の感性(美意識)」に関する変化について、内閣府が行った国民生活に関する世論調査によると、1970年代後半には「物の豊かさ」と「心の豊かさ」は均衡していたものの、平成においては一貫して「心の豊かさ」重視へと国民の意識が変化しています。また、度重なる自然災害や不況を経たことにより、他者を思いやり、周りの人々との関係を大切にするといった「義理がたさ」や「和」を重視する人が増えてきたと考えられると紹介しています。
こうした感性(美意識)の変化の現れの一つとして、ボランティア活動の広がりや消費スタイルが変化していることなどを挙げています。具体的な事例として、環境への負荷軽減や、開発途上国支援などにつながることを目指して、商品やサービスを選択的に消費する「倫理的消費」の世界的な広がりを紹介しています。
その一つであるフェアトレードについて見ると、全世界における国際フェアトレード認証製品の種類は3万点以上に及び、2017年の推定市場規模は1兆円を超えています。日本の市場規模についても、約120億円とまだ小さいものの、年々拡大しているとしています。

 

「時間的・場所的な制約」から解放

 

同白書では、平成における社会の変化などを踏まえた上で、新しい時代に求められる国土交通政策のあり方について考察しています。その中で、人々の生活に大きな影響を及ぼすと考えられる新技術について、想定される変化とともに紹介しています。
具体的に、現在、建設が進められているリニア中央新幹線は、その開通により東京都・大阪市間が67分で結ばれ、巨大な都市圏(スーパー・メガリージョン)が生まれるとしています。また、近年注目を集めている自動運転技術の進展は、人々の移動時間を自由な時間へと変化させることにつながります。更に、ICTやビッグデータを活用しつつ、計画、整備、管理・運営などのマネジメントが行われ、全体最適化が図られるスマートシティの実現は、個人の生活をより効率的にすることが期待されています。
政府による働き方改革の一環であるテレワークの推進なども含め、こうした新技術は、人々の生活を「時間的・場所的な制約」から解放し、多様な生活スタイル・ワークスタイルの選択を可能とするとしています。

 

居住者の感性が反映される「住空間」の創出

 

「生活空間」に豊かさを創出するため、今後の方向性についても考察がなされています。
「住空間」については、国土交通省が実施した国民意識調査において、未来の生活を豊かにするためにどのような「住宅」に住みたいかを尋ねたところ、「自分の好みで変えられる住宅」と「伝統・自然と快適さを備えた住宅」について、「とてもそう思う」と「ややそう思う」が合わせて7割を超える結果となっています(図1)。このことから、全体として自分らしさや自然との調和、伝統の尊重など、居住者の感性(美意識)を取り込める住宅を求める傾向が見られたとしています。
また、年代別に見ると、20代、30代においては「AI/IoTの活用で快適な住宅」について、60代においては「人との交流ができる住宅」について、肯定的な人が多い結果となっています(図2、図3)。若い世代は新技術による快適さに、高齢の世代は人との交流に、それぞれ生活の豊かさを感じる傾向にあると推察しています。
これらを踏まえ、今後の「住空間」の方向性について、IoTや人工知能(AI)をはじめとする新技術が更に住空間に取り入れられてくることが想定される中、これらと居住者の感性(美意識)が融合することで、より快適で自分らしい空間をつくり出すことができると言及しています。また、建築技術等の進展により、木材の更なる利活用をはじめ、新たな住空間の創出も期待されるとしています。