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特集 「平成」の地震災害を振り返る 「令和」で更なる耐震化の促進を

 阪神・淡路大震災、東日本大震災と、2度の大きな震災を経験した「平成」という時代は、地震や豪雨、台風、噴火といった自然災害が多発した「災害の時代」であったとともに、人々の災害に対する関心が高まり、2017年には国土強靭化基本法が施行されるなど、国を挙げて災害に対する備えが進められた時代でもありました。今回は、平成に起きた地震災害と、耐震化を中心とした住宅行政の変遷をまとめました。

 

地震災害が多発した平成
 

 平成の30年間では、大規模な災害がいくつも発生しました。気象庁は、顕著な災害を起こした自然現象について名称を定めています。これは、防災関係機関等による災害発生後の応急・復旧活動の円滑化を図るとともに、当該災害における経験や貴重な教訓を後世に伝承することを目的としています。平成において、気象庁が名称を定めた気象現象は合計30に及び、その内訳は地震が15、豪雨・台風・豪雪が13、火山が2となっています(図1)。
地震については、1995年に阪神・淡路大震災、2011年に東日本大震災と2度の震災を経験したほか、2016年には連夜の震度7の揺れに見舞われた平成28年熊本地震(以下、熊本地震)など、各地で大きな地震が発生し、多くの被害が生じました。東日本大震災以降、日本は地震の活動期に入ったとも言われており、平成における震度5弱以上の地震発生は355回と、63年に及んだ昭和の時代に起きた154回の2倍以上にも達しています(図2)。

 

 

 

変遷を遂げてきた建築基準法
 

 最大震度7を記録した阪神・淡路大震災では、死者6,434人、住宅被害25万棟超という大きな被害が生じました。中でも、住宅の倒壊等が原因で4,831名が犠牲となり、これは震災関連死を含まない地震による直接的な死者数のうちの88%にも上ります。住宅が倒壊しなければ、死者数はもっと抑えられた可能性が高いと考えられます。
建築基準法における耐震基準は、大きな地震のたびに見直され、改正されてきました。1978年に発生した宮城県沖地震を受けて、1981年6月に大規模改正された建築基準法の基準が、「新耐震基準」と呼ばれています。一方、同改正以前の基準は「旧耐震基準」として区別されています。
新耐震基準では、それまでの「中規模程度の地震動(震度5強程度)でほとんど損傷しない」ことに加え、「大規模の地震動(震度6強~7)で倒壊・崩壊しない」ことが求められています。
阪神・淡路大震災で被害を受けた建物の損傷具合は、建築年代によって大きく異なりました。「旧耐震基準」で建てられた建物では28.6%が大破・倒壊、37.3%が中・小破と、全体の約66%に被害が及びました。これに対し、「新耐震基準」で建てられた建物では、大破・倒壊、中・小破は合わせて約25%にとどまり、74.7%はほぼ無被害でした。
阪神・淡路大震災を受けて2000年に更なる改正がなされ、木造住宅の耐震基準の厳格化が図られました。耐力壁をバランス良く配置することや、構造部材の接合部に金物を施工すること、地盤の強さに応じた基礎形状といった規定が新たに設けられました。この改正により、木造住宅については現状、旧耐震基準、新耐震基準、更には現行基準の建築物が混在していることになります(図3)。

 

※1981年及び2000年の耐震基準の切り替えは6月1日以降に建築確認を受けたものから適用。
NPO法人住まいの構造改革推進協会資料より作成

 

住宅の耐震化に向けた国の施策
 
 
 大地震による被害を最小限に食い止めるためには、地震が起こる前にできる限りの備えをしておくことが重要です。建築物の耐震化については、国の成長戦略、国土強靭化基本計画、住生活基本計画といった基本政策にも明確に盛り込まれています。政府はあらゆる防災対策の中で最重要課題として掲げ、耐震化率の向上に取り組んでいます。

 阪神・淡路大震災を受け、耐震改修促進法が制定されました。これにより、倒壊等の恐れがある多数の者が利用する建築物等の所有者に対して、耐震診断・改修の努力義務を課し、所管行政庁が指導・助言等を行うことで耐震化の促進を図っています。2005年には、同法において国が建築物の耐震診断・改修の促進を図るための基本方針が定められました。都道府県では、これに基づいて耐震改修促進計画を定め、計画的な耐震化を進めています。既に、全都道府県が策定済みで、努力義務である市町村においても97.7%に当たる1,701の市区町村が策定しています(2018年4月1日現在)。また、2009年度からは「住宅・建築物安全ストック形成事業」を実施、国と地方公共団体が一定額を補助することで、住宅・建築物の耐震診断・改修の更なる促進を図っています。

 
 
耐震等級3の必要性
 
 
 また、2000年には「住宅の品質確保の促進等に関する法律」を制定、国の認定を受けた第三者機関が構造耐力や遮音性、省エネルギー性能等の住宅性能を評価する、「住宅性能表示制度」を開始しました。このうち、「構造の安定に関すること」の項目で、建築基準法で求められる耐震強度があるものを等級1とし、等級1の1.25倍の耐震強度を等級2、同じく1.5倍の耐震強度を等級3とする「耐震等級」が導入されました。現在、長期優良住宅制度や住宅金融支援機構の「フラット35S」などの要件として、耐震等級2と同等以上の耐震性能が求められており、新築住宅の耐震性能の向上が図られています。
2016年の熊本地震では、熊本県益城町において震度7の揺れに2回見舞われました。国土技術政策総合研究所などが同町で住宅被害の実態に関する調査を実施した結果、調査・分析した1,995棟のうち、297棟(15.2%)で倒壊・崩壊の被害があり、そのうちの72.1%に当たる214棟が旧耐震基準で建てられていました(図4)。また、新耐震基準以降に建てられた住宅の中でも、特に現行基準で建てられた住宅の被害率が小さいことも判明しています。現行基準の住宅は7棟が倒壊しましたが、このうち4棟は施工不良や地盤の変形等が原因とされています。
更に、耐震等級3の住宅については、壁量が多く確保されたことでより高い耐震性を有し、大部分が無被害でした。京都大学工学研究科の竹脇出教授(建築構造学)らの解析によると、震度7の連続した揺れに耐えるには、現行の耐震基準の約1.5倍の強度(耐震等級3相当)が求められるとの見解が示されています。
今後、熊本地震のように、本震と同程度の規模の余震が連続して起こることも考えられることから、現行の基準を更に上回る耐震性能を備えることが減災に向けた重要な手段になると考えられます。  

 

 

住宅の耐震化の現状
 

国は、南海トラフ地震防災対策推進基本計画、首都直下地震緊急対策推進基本計画、住生活基本計画における目標を踏まえ、住宅及び多数の者が利用する建築物の耐震化率について、2020年までに少なくとも95%にすることを掲げています(図5)。また、2025年までに耐震性が不十分な住宅をおおむね解消することを目標としています。
住宅の耐震化率は、2013年時点で全国約82%と推計されています。その内訳は、総戸数約5,200万戸のうち、新耐震基準以降で建設されたものが約3,700万戸、旧耐震基準で建設されたもののうち、耐震改修等により耐震性を備えたものが約600万戸で、合わせて約4,300万戸が耐震化されています。耐震性が不十分な住宅は約900万戸で、2003年から10年間で約250万戸減少しています。この約250万戸のうち、195万戸が建て替えによるもので、改修によるものは約55万戸と推計されています。目標達成のためには、2020年までに少なくとも約650万戸(うち耐震改修は約130万戸)の住宅を耐震化する必要があり、建て替え促進を図るとともに、耐震改修のペースを約3倍にする必要があるとされています。

 

 

減災には耐震化が有効
 

政府の地震調査研究推進本部によれば、今後、南海トラフ沿いの地震、千島海溝沿いの地震、相模トラフ沿いの地震といった甚大な被害が想定される海溝型地震が、高い確率で発生すると見込まれています。今後30年以内の地震発生確率について、南海トラフ沿いにおいてはM8~9クラスの地震が70~80%、千島海溝沿いにおいてはM8.8程度以上の地震が7~40%、相模トラフ沿いにおいてはM7程度の地震が70%と評価しています。また、陸域における地震についても、その震源は浅い場合が多いため、今後も、熊本地震のような大きな被害が想定される地震が発生する恐れがあるとしています。
中央防災会議では、建築物の耐震化率を100%に高めるなどの適切な防災対策を講じれば、南海トラフ地震における最悪のケースの死者数を約5分の1程度にまで抑えることができるとしています。首都直下地震においても、建築物の耐震化や出火防止対策などの防災対策をとることで、被害を10分の1にまで減らせるとしています。
地震大国である日本においては、「大地震は必ず起こるもの」として認識することが必要であり、いつどこで発生してもおかしくない大地震に備えることが重要です。住宅業界においては、大地震が発生した際の被害を最小限に抑えるためにも、耐震化のスピードを上げていくことが求められています。