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文化庁 ユネスコ無形文化遺産  日本の伝統建築工匠の技を申請

 政府・文化庁は2018年2月より、国連教育科学文化機関(ユネスコ)にて、「伝統建築工匠の技:木造建築物を受け継ぐための伝統技術」を無形文化遺産へ登録するための活動を進めています。

 

伝統建築技術を無形文化遺産へ
 

無形文化遺産への登録が申請されている「伝統建築工匠の技:木造建築物を受け継ぐための伝統技術」は、宮大工や左官などが継承する伝統的な建造物の修理や木工、屋根瓦葺などの14の技術を合わせたものです。木や草、土などの自然素材を建築空間に生かす知恵や、周期的な保存修理を見すえた材料の採取や再利用、建築当初の部材と、その後やむを得ず取り替える部材との調和や一体感を実現する高度な木工・屋根葺・左官・装飾など、建築遺産とともに古代から途絶えることなく、工夫を重ねて発展してきた伝統建築技術となります。
無形文化遺産とは、口承による伝統や表現、芸能、社会的慣習、儀式・祭礼行事、自然や万物に関する知識・慣習、伝統工芸技術などを、人類の文化遺産として認定するものです。日本では、昨年に秋田県の「なまはげ」などに代表される「来訪神:仮面・仮装の神々」が登録され、これまでに合計22件が登録されています(図1)。現在、(一社)伝統を未来につなげる会が中心となって無形文化遺産登録へ向けた活動が進められており、政府は今後、3月末にユネスコ事務局に提案書を再提出し、2020年11月ごろに登録の審議・決定がなされる予定です。

 

 

日本の高度な木造建築技術
 

歴史的建築遺産と、技術の継承を実現するために行われる適切な周期の保存修理は、郷土の絆や歴史を確かめることにつながるとともに、木材や漆、い草などの資材育成と採取のサイクルによって多様な森林や草原の保全を実現することで、持続可能な開発にも寄与します。文化庁は、日本の伝統建築技術をユネスコ無形文化遺産へ登録することは、法隆寺をはじめとした世界文化遺産の木造建造物とともに、日本の建築文化を支える無形文化遺産の保護・伝承の事例として、世界の建築に関わる職人や専門家との技術の交流や対話を深めることにつながるとしています。その上で、これにより国際社会における無形文化遺産の保護の取り組みへ大きく貢献できるとしています。
日本における文化財建造物の保存修理は、120年以上の伝統があり、現在まで約2,200棟の建造物が保存修理を受けています。これらの建造物は、7世紀から20世紀初頭まで約1,300年にわたる各時代の遺構です。その種別は、社寺や城郭、住宅、墓碑、橋梁等あらゆる分野にわたり、地域差や工匠の系統によっても異なっています。そのため、その保存修理に当たる技術者には高度な専門知識に基づく技術が要求されます。
そうした技術の中でも、木工技術は日本を代表する技術の一つです。しかし、近年では、材料、工具などの変化に伴い、古式の木工技術の習熟人数は減少し、しだいに技術水準が低下しつつあるとされています。特に、文化財建造物の保存修理に当たっては、各時代の木工技術の正確な踏襲・再現が求められることから、古式の木工技術を伝承し、錬磨することでその水準を確保していく必要があります。
また、日本の森林資源は戦後の植林により充実し、現在利用期にあります。そのような中、大径材の利活用は日本の森林における課題の一つとなっています。日本の伝統的な建築技術は、大径材を生かす技術にも長けており、森林資源の更なる活用を進めるとともに、日本の街なみを維持するためにも、伝統的な建築技術を持った職人を育成することが重要となっています。

 

「木造建築」の技術を未来につなぐ専門学校
 

静岡県富士宮市にある学校法人 富嶽学園 日本建築専門学校は、1987年に創立された木造建築の設計技能と匠の技の双方を持った技術者を養成する4年制の専門学校です。同学校は、建築系4年制大学と同等のカリキュラムを備えており、建築士の資格も同等に取得することができます。また、通常の大学では深く学ぶことがない木造建築、更には日本の伝統建築の知識と技術を幅広く学ぶことができます。これにより、このたびのユネスコ無形文化遺産の登録に向けた活動の中で注目されはじめています。
同校の創始者の一人である故中村昌生氏(京都工芸繊維大学名誉教授、(一社)伝統を未来につなげる会前理事長)は、学校創立30周年を迎えた際に、「木を選び、木の性質を見極め、生かし、技を施し、組み立てるのが伝統技術である。千年磨き上げられてきた技術を継承し、次代へ伝えていく使命を放棄して、日本の輝かしい未来が訪れるとは思えない」との言葉を残しています。