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消費税駆け込み需要に期待感 2018年度の住宅取得意欲は上向き

 日本銀行が4月28日に発表した「経済・物価情勢の展望」では、2018年度はきわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、潜在成長率を上回る成長を続けるとされています。今回、ナイスビジネスレポート編集部では、ゴールデンウィークにおける住宅展示場への来場状況などから、今年度の住宅需要の動向を探りました。

 

2017年度は2.8%減
 

 国土交通省が4月27日に発表した2017年度の新設住宅着工戸数は、94万6,396戸となりました。前年度比2.8%減と、3年ぶりの減少となったものの、2009年のリーマンショック以降では、消費税の駆け込みがあった2013年度と、2016年度に次ぐ水準となりました。
利用関係別に見ると、持ち家が同3.3%減の28万2,111戸となったことをはじめ、貸家は同4.0%減の41万355戸、分譲住宅は0.3%減の24万8,495戸となり、全てが3年ぶりの減少となりました。分譲住宅のうち、マンションは3.6%減の10万8,278戸となりましたが、一戸建住宅については同2.3%増の13万7,849戸となり、3年連続の増加となりました。
都市圏別では、三大都市圏がいずれも3年ぶりの減少となり、首都圏が同4.6%減の32万7,384戸、中部圏が同0.8%減の10万7,562戸、近畿圏が同4.1%減の13万6,197戸となりました。

 

2018年度の見通しは
 

 (一財)建設経済研究所および(一財)経済調査会は、四半期ごとに「建設経済モデルによる建設投資の見通し」と題した見通しを発表しています。そのなかで、前回1月の調査時と比べ、投資総額については民間と建設投資の見通しが上方修正され、2017年度分で4,300億円増の53兆8,300億円(前年度比2.6%増)、2018年度分は4,700億円増の53兆8,600億円(同0.1%増)となっています。また、2018年度の新設住宅着工戸数については、前回に引き続き、前年度比微増の96.5万戸との予測が示されています。
2018年度の新設住宅着工戸数の見通しの内訳としては、持ち家が29.9万戸、貸家が40.8万戸、分譲住宅については戸建てが14.5万戸、マンション・長屋などが10.8万戸となっています。持ち家と分譲住宅については、消費増税による駆け込み需要の影響により着工は増加すると予測される一方で、貸家は相続税の節税対策による着工が一服するとともに、駆け込み需要の影響も小さいと考えられ、減少すると予測しています。分譲住宅については、マンションは販売価格と在庫率の高止まり状態や販売に適した土地の減少による影響が今後も続くとともに、駆け込み需要の影響も小さいと考えられ、前年度比で減少すると予測しています。戸建ては駆け込み需要の影響により前年度比で増加し、分譲住宅全体では増加の予測となっています。
また、民間非住宅投資については、企業収益の改善や生産の増加、個人消費の持ち直しなどを背景に企業の設備投資が増加し、今後も底堅く推移していくことが見込まれるとした上で、こちらも前回予測値より上方修正しました。2017年度分を300億円増の16兆2,000億円、2018年度分を1,200億円増の16兆1,600億円とし、東京オリンピック・パラリンピックを見込んだ投資を含め、緩やかな回復が続くとの予測が示されました。
なお、シンクタンクや金融機関などが公表している2018年度の新設住宅着工戸数については、多いところでは第一生命研究所が100万戸、みずほ銀行が95.7万戸、明治安田生命が95万戸となっています(図1)。持ち家については、住宅ローン金利が引き続き低い水準で推移することが見込まれることや、住宅ローン減税をはじめとした住宅取得支援策が継続するとともに、一戸建住宅向けのZEH補助金、更に省エネ性が高い住宅向けの「ZEH+」補助金などの各種支援策が、ある程度下支えするとしています。

 

 

消費者の半数以上が「買い時」
 

 (独)住宅金融支援機構では2~3月に、2018年度に住宅取得を検討している25~59歳の一般消費者1,100名をはじめ、733社の住宅事業者と62名のファイナンシャルプランナーを対象に、今後の住宅市場動向に関するアンケートを実施しました。そのアンケートの集計結果を4月に公表しました。
2018年度の買い時感については、一般消費者の50.6%が「買い時」と回答し、8.6%が回答した「買い時ではない」を大きく上回りました(図2)。買い時だと思う要因については、「今後消費税率が引き上げられるから」がトップで75.0%を占め、次いで「マイナス金利政策の導入後、住宅ローン金利が一段と低下しているから」が49.7%、「今後住宅ローン金利が上がると思うから」が32.1%と続き、増税を意識した結果となっています。
一方、ファイナンシャルプランナーに行った同質問では、64.5%が「2017年度と比べて買い時である」と回答しています。「どちらとも言えない」は20.7%、「2017年度と比べて買い時ではない」は12.1%にとどまりました。買い時とする要因については、「マイナス金利政策の導入後、住宅ローン金利が低水準だから」が85.0%と圧倒的に高くなっています。続いて、「消費税率引き上げ前の駆け込み効果」が62.5%、「金利先高感があるから」が45.0%となりました。
マイナス金利政策の継続により、住宅ローンの低金利が続いています(図3)。それに加え、消費増税が買い時感に強く影響している結果となりました。

 

 

連休中の来場は好調
 

 ナイス㈱住宅システム事業部の取引先企業に対して行ったヒアリング調査の結果によると、ゴールデンウィークの住宅展示場への来場者数は、20社中7社で前年比120%を超えるなど、活況を見せはじめています。中には、高齢者層と家族世帯層について、2通りのモデルハウスで差別化を図るなど、各世代に絞った集客を図るところもありました。増加の要因としては、「金利の割安感や住宅取得支援策の充実」「消費税率引き上げ前の駆け込み」などにより、消費マインドが上がっていることが見て取れます。
来場者の傾向や消費マインドに対する各社のコメントは以下となっています。

 

 

消費増税の影響は
 

 2019年10月に予定されている消費増税については、2014年を上回るような大きなインパクトはないという見方が、各シンクタンクなどで大勢を占めています。17年ぶりの引き上げとなった2014年と異なり、引き上げまでの期間が短いことに加え、再度の税率引き上げの予定が示されており、需要の先食いなどがみられたためです。しかし、増税1年前となる第3四半期以降については、一定程度の押し上げ効果が見込まれています。
今回の増税時にも同様に、消費増税への経過措置の適用が示されています。請負工事などにかかる適用税率の経過措置の指定日は2019年4月1日とされています(図4)。住宅の取得に当たっては、土地に対して消費税はかからないものの、建物には課税されます。住宅に対する消費税は原則として、引き渡し日における税率が適用となりますが、請負契約については、契約から引き渡しまでに時間がかかることを考慮して、経過措置の特例が定められています。これにより、税率引き上げの半年前となる2019年3月31日までに契約した請負契約などは、引き渡しが2019年10月1日以降であっても8%の税率が適用となります。
2014年4月の増税時の新設住宅着工戸数は、持ち家については1年前の2013年3月より上昇し、経過措置の指定日となった9月を過ぎた11月に前年比で22.6%増とピークを迎えています(図5)。今回も同様な動きをするとした場合、5月の連休に住宅の購入を検討しはじめた方が商談を重ねた上でプランを決定し、10月ごろに着工に至るという状況もあると言えます。

 

 

住宅取得に関する措置が延長
 

 住宅の取得支援策については、2018年度に適用期限を迎えていた各種税制特例措置が軒並み延長されています。土地に係る固定資産税の負担調整措置と市町村が一定の税負担の引き下げを可能とする条例減額制度である「新築住宅に係る固定資産税の減額措置」が2年間延長されました(図6)。これは、住宅取得者の初期負担の軽減を通じて、良質な住宅の建設を促進し、居住水準の向上及び良質な住宅のストックの形成を図るもので、住宅を新築した場合の固定資産税につき、一戸建住宅は3年間、マンションについては5年間にわたり、税額を2分の1に軽減します。国土交通省の推計によれば、2,000万円の住宅を新築した場合の負担軽減効果は約26万円に上るとしています。
また、宅地評価土地の取得に関する不動産取得税の課税標準の特例措置が3年間、住宅と土地の取得に関する不動産取得税の税率の特例措置も3年間延長されたほか、長期優良住宅に関する特例措置についても2年間の延長がなされています。昨年度には、住宅ローン減税やすまい給付金、贈与税の非課税措置なども延長されており、引き続き住宅取得に関する負担の軽減が図られています。

 

 

既存住宅取得への措置が拡充
 

 既存住宅の流通に関しては、買取再販で扱われる住宅の取得等に関する特例措置が延長されるとともに、一定の条件を満たす場合に敷地まで対象が拡充されました。また。既存住宅の耐震、バリアフリー、省エネ、長期優良住宅化リフォームにかかる特例措置なども延長され、耐震基準を満たさない住宅を取得後、耐震改修を行った場合の特例措置についても対象が敷地まで拡充されています。
買取再販で扱われる住宅の取得に関する特例措置は、既存住宅流通、リフォーム市場の活性化を図るため、一定の質の向上が図られた既存住宅を取得した場合の登録免許税を軽減するもので、この特例措置が2年間延長されました。更に、今年度より、「安心R住宅」の認定を取得、もしくは、既存住宅売買瑕疵担保責任保険に加入できるよう、買取再販事業者が既存住宅を取得しリフォームを行った場合に、敷地に関する不動産取得税を減額する措置が開始されました。減額は、45,000円か土地1㎡当りの評価額×1/2×住宅の床面積の2倍(上限200㎡)×3%のいずれか多いほうとなります。
そのほか、住宅ストックの性能向上を図るため、既存住宅の耐震化・バリアフリー化・省エネ化・長寿命化リフォームを実施した場合に、工事翌年の固定資産税を一定の割合で減額する特例措置も2年間延長されています。