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林野庁 特別講演 国産材利用拡大に向けた林野政策の動向

 木材資源が本格的な利用期を迎える中、11月9日に開催された素適木材倶楽部第7期総会の中で、2025年の国産材自給率50%の目標達成に向けた国の林野政策について、林野庁林政部木材利用課長の玉置賢氏と同林政部木材産業課調査官武田義昭氏による講演が行われました。今回はこれらの講演内容についてまとめました。

 

木材需要の拡大について
木材利用課長 玉置 賢氏
 
公共建築物の木造化・木質化を推進
 

現在、日本の森林蓄積量は49億m3に達し、毎年1億m3が増加しています。2016年の国産材の供給量は2,714万m3と2002年から1,000万m3以上が増加し、木材自給率も34.8%にまで上昇しています。「森林・林業基本計画」では、2025年までに国産材の供給量を4,000万m3(木材自給率50%)とする目標が示されており、この実現のためには「新たな木材需要の創出」と「国産材の安定供給体制の構築」という両輪を回していくことが不可欠となっています(図1)。
公共建築物における木材利用については、2010年の「公共建築物等木材利用促進法」の施行以来、上昇傾向で推移し、3階建て以下の低層の公共建築物については26%が木造となっています。都道府県別で見ると、秋田県(55.3%)や島根県(47.8%)、宮崎県(47.6%)が高く、これらの県では公共建築物への木材利用の促進を図るべく部局横断的な体制が構築され、市町村連携の下で木造化が進んでいます。
一方で、東京都をはじめとした都市部においては、規制の点などから木造化率は低くなっています。例えば、東京23区においては、区域面積の92%が防火地域または準防火地域に指定されているほか、整備床面積に占める4階建て以上の建築物の割合が65%を占めています。こうした中、都市部における木材利用をいかに進めていくかが課題です。
そのためには、CLTや木質耐火部材をはじめとした新たな製品・技術を普及拡大するとともに、建築関係者へ内装制限に関する規制など内装木質化に関する適切な知識や理解の浸透を図っていく必要があります。また、低層公共建築物の6割超は民間によるもので、そのうち85%を医療福祉施設が占めています。木を使うことで快適性が向上するといった、施設の用途にふさわしい木材の効果的な活用法を追求し、施主様の側から木造化・木質化の要望が出るような取り組みを行っていきます。

 

 

ウッドデザイン賞で木の文化を発信
 

一般消費者に木材利用の機運を醸成することも大切です。林野庁では、木材の良さに対する国民の理解を一層醸成することで木材製品の需要拡大につなげる「木づかい運動」を実施し、幅広い消費者に対して木材の適切な利用が森林の再生産につながることを伝えています。
2015年度に創設されたウッドデザイン賞は、木の良さや価値を再発見させる木製品や建築物、取り組みなどを幅広く表彰する顕彰制度です。木は多様なコンセプトを実現できるマテリアルで、多くの企業や団体、デザイナーなどから木材の新たな可能性を感じられる製品やデザインが誕生しています。このほかにも、木工教室の開催や木製玩具とふれ合える機会の提供など、様々な取り組みが各地で行われており、木づかい運動が全国で広がっています。

 

合法で高品質な木材製品の輸出を拡大
 

本年5月に「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(クリーンウッド法)が施行されました。既にアメリカやEU、オーストラリアなどでは、違法伐採された木材の流通を規制する法律ができています。今後の木材の輸出拡大を図るに当たって合法伐採木材等の取り扱いは大変重要であり、ぜひ本制度の中で取り組みを進めていただきたいと思います。
農林水産物・食品の輸出については、2020年までに輸出額1兆円を目標としています。林産物の輸出額については、2016年で274億円となっていますが、全体の輸出目標を達成するためには更なる輸出拡大に向けた取り組みが必要となっています。安定的に輸出を拡大するためには、丸太中心から付加価値の高い木材製品の輸出へとシフトしていく必要があります。中国や韓国などアジア諸国に向け、実需者向けの展示会やセミナーの開催、マンションのモデルルームを活用した内装材の紹介などを通じて、日本産木材の認知度向上と木材製品のブランド化を推進しています。

 

無垢材製品を巡る情勢について
木材産業課調査官 武田 義昭氏
 
JAS製材品の流通を拡大
 

2016年の建築着工統計調査によると、木造非住宅の床面積は322万㎡にとどまっています。これは非住宅全体の床面積の10%弱、つまり非住宅の90%以上が非木造であるのが現状です。
国内の人工林資源が成熟し大径化しつつある中、今後の木材需要の拡大に当たっては非住宅分野での一般流通無垢製材品の利用が重要となっています。大径材の活用に向けた新たな部材・工法についても開発が進められており、大断面のJAS製材や、JAS製材を重ね合わせて接着した材を利用した建築物などの事例も出てきています。こうした技術開発を推進するためにも、品質・性能の確かなJAS製材の安定供給が求められています。
建築分野においてJAS製材品を利用するメリットとしては、構造計算に不可欠な基準強度が明確となっている点が挙げられます。JAS製材では、曲げやたわみといった変形のしにくさを示す数値であるヤング係数(E)ごとに基準強度が示されています。スギで比較した場合、最も低い基準であるE50で24.0N/mm2、最も高いE150で51.6N/mm2と強度が明確化されており、強度自体を見ても無等級材の22.2N/mm2に対して高く、優位性があります。また、準耐火建築物で木材を現しにすることができる燃えしろ設計に活用できる製材品は、含水率が15%以下(条件によっては20%以下)のJAS製材品に限定されています。
2018年度の予算概算要求においてJAS無垢材利用拡大対策に5億円を掲げています。これは、JAS製材品を積極的に活用する「JAS無垢材活用拡大宣言」を行った事業者を登録し、支援する制度を創設するものです。更に、同宣言を行った事業者に対しては、JAS無垢材利用の利便性や効果などを実証する取り組みについて、JAS無垢材の調達費を一定の枠内で支援していくこととしています。
木材は、鉄やアルミニウムなどに比べて製造時の炭素放出量が少ないことに加えて、成長時に炭素を固定化していることから、木造住宅は鉄筋コンクリート住宅のおよそ4倍の炭素を貯蔵しています。いわば木造住宅の街並みは第2の森林とも言えます。木材で建築物をつくることは、環境に負荷を与えないだけでなく、街で炭素を蓄えるという循環を生み出し、地球温暖化の防止にも貢献するなど、社会的にも高い意義を持っています。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、関連施設に木材を利用することで、日本が培ってきた伝統的な木材利用法から新たな技術を活用した最新の事例まで、「木の文化」を国内外に発信する絶好の機会でもあります。木材利用への理解の醸成がより一層進み、JAS製材の流通がより一層拡大することを期待しています。