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特別対談 超高齢社会のビジネスチャンスを掴む ~パナソニックが描く融合型成長戦略~

 世界に先駆けて超高齢社会に突入した日本は、今後も少子高齢化が続くと予測されており、構造的な課題に直面しています。今回は、パナソニック㈱の戦略事業担当執行役員とエコソリューションズ社の副社長を務められ、6月よりパナソニックエイジフリー㈱の社長に就任された片山栄一氏に、超高齢社会におけるパナソニックグループの事業展開やエイジフリー事業についてお聞きしました。

 

 

 

ビジネスチャンスを捉える
 

平田 片山さんはこれまで金融市場において世界的に活躍されており、住宅関連業界においては異色の経歴をお持ちです。金融市場の目線から、現在の世界及び日本の経済についてどう捉えていますか。
片山 2016年にパナソニック㈱へ入社する前は、アメリカの投資銀行であるバンクオブアメリカ・メリルリンチでアジア大洋州地域調査本部の副本部長を務めており、それ以前も野村證券時代を含めて、長く金融市場に身を置いてきました。これらの経験から、パナソニックグループの中でも「異端児」との言われ方をすることがあります。私自身、異業種の血を混ぜることでどれだけ組織を活性化できるかが、パナソニック㈱における一つの役割であると考えています。
世界市場全体での変化を見ると、業種別の株式時価総額は、2010年末時点では金融がトップで、石油、ITと続いていました。これが2017年10月時点ではITがトップで、金融が続き、石油は5番手に沈んでいます。ITやインターネット関連の企業が価値を向上させており、現在の世界市場のけん引役を担っています。
IMF(国際通貨基金)によると、世界の経済成長率は2017年が3.6%、2018年が3.7%と堅調な数字が予想されています。日本の成長率は2017年が1.5%で、2018年は0.7%と厳しめの予想となっているものの恐らく1%は超えてくると見られ、こちらも比較的堅調と見ています。
為替についても来年にかけて波乱要因になることはないと見ており、輸出環境は世界、日本、新興国のいずれも貿易量ベースで確実に回復しています。これらのことからも、2018年の世界経済は巡航速度で進むと考えています。
平田 日本の経営環境についてはいかがですか。
片山 企業の設備投資などの法人需要を計る指標の一つに従業員数があります。現在の日本企業のうち、資本金1億円以上の大企業では従業員数が増加傾向にあるものの、リーマンショック前の水準を超えていません。一方、資本金1,000万円以下の企業では減少していることから、総需要はそれほど増えていない状況にあります。
従業員数の内訳としては、女性と65歳以上の高齢者が圧倒的に増加しています。また、業種別に見ると、ほとんどの業種で従業員数が減少もしくは微増する中、医療・福祉・介護の分野が飛び抜けて大きく増加しているというのが労働市場の現状となっています。
今後の経営環境として、労働力の中心となる25~44歳までの人口は2016年の3,162万人から2030年には2,500万人を割り込み、大きく減少すると予想されています。一方で高齢者数は激増し、2030年には高齢化率31.2%と3割を超える予想がなされ、その後もどんどん上昇していく見通しです。
これだけを見ると経営環境は将来的に厳しさばかりのように思われますが、成長マーケットは確かに存在しています。その一つは既知の通り高齢者向け市場です。今後の人口動態として独身の割合が増加し、中でも60歳代の男性と80歳以上の女性が大幅に増えていくと見込まれており、このマーケットをいかに掴んでいくかが重要となります。
もう一つは外国人マーケットです。日本は他国と比べて比較的容易に永住権が取得でき、取得に要する期間も1年程度と短いことから、実質的な移民解禁国となっています。外国人労働者数の推移を見ると、2016年は108万3,769人と前年同期比で19.4%増となり、4年連続で過去最高を記録するなど大幅に増加しています。特に、建設や農業、医療分野において大きく伸びており、全体をけん引しています。
こうした外国人の方々は、永住権を取得して日本に定着することで、労働供給の担い手としてだけではなく、将来の需要家として日本国民を代替するマーケットの担い手になり得ると考えるべきだと思います。そして、高齢者向け市場と外国人市場という新たな成長市場をしっかりと捉えることが、ビジネスチャンスにつながります。

 

高成長事業としてのエイジフリー
 

平田 パナソニックグループ全体の事業展開についてお聞かせください。
片山 当社グループは、家電や住宅設備などを含む「住空間」、EV(電気自動車)におけるソリューションを展開する「モビリティ」、そして取引先であるパートナー様に向けた「B2B」の領域で事業を展開しています。この3領域を柱とし、それぞれの領域を横串でつなげることで、これらの接点を新領域として「クロスバリューイノベーション」を実現していきます。
私が担当しているエイジフリー事業は「住空間」領域にあり、高成長事業に位置付けています。その事業会社であるパナソニックエイジフリー㈱は、パナソニック㈱の社内カンパニーであるエコソリューションズ社の下で独立した会社として2016年4月に設立されました。パナソニックグループとしては、介護保険制度が開始される前の1988年より介護事業に取り組んでおり、来年で20年を迎えます。
平田 パナソニックエイジフリー㈱の事業内容について改めて教えていただけますか。
片山 パナソニックエイジフリー㈱は3つの事業領域を有しています。1つ目が、在宅介護サービスや施設介護サービスを提供する「ライフサポート事業」です。2つ目は、介護用品や高齢者施設向け製品などの開発を行う「ケアプロダクツ事業」、3つ目が地域密着で介護用品の販売やレンタル、リフォームを行う「リテールサポート事業」となっています。全国に介護事業者は多くありますが、この3つの全て行っている事業者は当社だけとなっています。当社では、介護関連製品を自社で開発し、販売やレンタルを行うとともに、それらを実際に用いて更なる良質な介護サービスを提供していくというサイクルをつくっています。
1つ目のライフサポート事業では、「かかりつけ介護」の実現を目指し、在宅介護サービス拠点として「エイジフリーケアセンター」を全国180拠点で展開しています。ここでは、各地域に密着して在宅介護を支援するべく、通所介護(デイサービス)と訪問介護のサービスをワンストップで提供しています。このうち42拠点では、短期入所生活介護(ショートステイ)のサービスも提供し、「泊まり」「通い」「訪問」の全てに対応しています。
また、単身住まいでケアが難しいとか、認知症が進んで家族では介護できなくなった場合など、在宅ケアが難しい方に向けては、サービス付き高齢者向け住宅「エイジフリーハウス」を全国50拠点で展開し、サービスを提供させていただいています。ナイスさんに建設していただいた横浜市の「エイジフリーハウス横浜十日市場町」も来年2月にオープンする予定です。
平田 「エイジフリーハウス横浜十日市場町」は木造2階建ての施設となっています。構造躯体には木と鉄のハイブリッド梁を用いたパナソニックの耐震工法「テクノストラクチャー工法」を採用し、間口6.5m、奥行き10.2mという大空間の食堂・談話室を実現しました。
木造は現在、準耐火構造だけでなく耐火構造にも対応できるようになっており、介護施設の分野でも木造化が進むことを期待しています。
片山 「ケアプロダクツ事業」では、ライフサポート事業における現場の声を生かし、介護度の軽い方から重い方まで全てに対応できるよう、排泄用品や入浴用品、就寝支援用品、移動支援用品といった介護用品の開発に取り組んでいます。
具体的には、移動が困難な方に向けた「ラフィーネ」「アウーネ」といったポータブルトイレ、膝が悪くて入浴時に立ち上がりにくい方にはシャワーチェアや浴槽内で使うバススツールなどの商品を手掛けています。
また、高齢者向けの住宅改修関連商品や高齢者施設向けの商品開発も行っています。住宅改修関連商品には、玄関における段差の昇降を補助するための手すりや踏み台などがあります。高齢者施設向けの商品としては、代表的なものとして、バリアフリー対応のユニットバス「アクアハート」が挙げられます。これは、滑りにくい仕様にしたり浴槽と洗い場の段差を小さくしているほか、福祉用具との連動や移乗がしやすいように工夫している商品です。車いす対応の洗面化粧台「アクアハート洗面」は、一般的な洗面台と異なり、車いすに座ったままで手が届く位置にカランが設置されています。また、立ち上がる際に掴みやすい形状になっていたり、介護する側にも使いやすいよう両サイドにものを置けるスペースを確保しています。これらの商品は、サービス付き高齢者向け住宅や特別養護老人ホーム、デイサービスといった施設にて活用していただいています。
平田 今後のエイジフリー事業に関する新たな展開についてお聞かせください。
片山 パナソニックグループでは現在、パナホーム㈱を中心に大阪府にて2つの再開発プロジェクトに参画しており、その中でエイジフリー事業の展開を図っています。
その一つが「大阪大学グローバルビレッジ施設整備運営事業」です。これは、大阪大学が老朽化した宿舎を建て替えるに当たり、大規模な職員住宅や外国人留学生・日本人学生混住型の学生寮を整備するものです。施設を高層化して集約化することにより生み出される土地を活用し、民間付帯施設を設けることで、異文化交流や地域交流などの教育的なソフト面を含めたグローバル人材育成拠点を構築します。パナホーム㈱を代表とするコンソーシアムによりプロジェクトが進められており、パナソニックエイジフリー㈱では、民間付帯施設の一つとして建設されるサービス付き高齢者向け住宅の整備・運営を担当します。
もう一つは、吹田市と摂津市にまたがる北大阪健康医療都市(愛称:健都)のプロジェクトです。これは両市が来年度に予定されている国立循環器病研究センターの吹田操車場跡地への移転建て替えを見据え、医療に関連する企業や研究機関、病院などを集中させた国際級の医療クラスターを実現させるべく取り組んでいるものです。この中で、高齢者向けウェルネス住宅の整備・運営に関する公募がなされ、当社グループが選定されました。地上7階建ての施設を予定しており、1階が物販店、2階が保育・学習・医療施設、3~5階がサービス付き高齢者向け住宅、6~7階が一般向け賃貸住宅で構成されています。このうちサービス付き高齢者向け住宅の整備・運営をパナソニックエイジフリー㈱で担当して進めていきます。
エイジフリー事業は今後、これまで取り組んできた介護施設の整備・運営の拡大を図りながら、次の動きとして特定の地域にフォーカスし、高齢者向け施設の整備・運営を含めた街づくりに取り組んでいきたいと考えています。

 

真のダイバーシティーを実現
 

平田 今後の企業経営を考えるに当たり、10年後を見据えた際、経営者にとって何が重要だとお考えですか。
片山 まず、人間の特性として不安定な未来に対しては過小評価し、その一方で目の前の現実に近い近未来を過大評価する傾向があることを理解する必要があります。10年前の2007年を振り返ってみると、原油価格は1バレル100ドルを超えており、サブプライムローン問題で日経平均株価が上昇する見通しはないとされていました。しかし、2017年の今、原油価格はシェールガスの台頭や東日本大震災による原発問題など様々が影響し、1バレル48ドルと半分になっています。日経平均株価は2万円台を突破しており、11月9日には一時26年ぶりに2万3,000円台を上回るなど、10年前より上昇しています。
10年後を考える時、電気自動車の普及率が10%を超えるとか、介護事業も20兆円規模になるといったことが予測されていますが、私はこれらの全てを疑ってかかる必要があると考えています。その一方、高齢化が進むことにただ悲観するのではなく、外国人の定着による需要の創造など、プラスの要素もしっかりと捉え、将来を見据えていくことが重要です。
平田 最後に、パナソニックグループの更なる飛躍に向けた取り組みをお聞かせください。
片山 私は、パナソニックグループにおける次の100年を輝かせるため、外国人との交流、世代の異なる人々との交流、そして教育システムの構築が柱となると考えています。教育システムは一朝一夕で完成するものではなく、大変な時間を要します。しかし、これが成されなければ企業としての底上げは実現しません。現在、当社グループでは経理、営業、開発など職制に関わらず、全ての部門から経営者となる人材が育つような仕組みづくりに取り組んでいます。
現在、「シェアード」という考え方が注目され、個人の自家用車を共有するサービスや、個人宅を宿泊先として提供するサービスが世界中で展開されています。例えば、世界の自動車の稼働率はわずか3%と言われており、これらの事業が伸びているのは当たり前のことと言えます。私は、同様のことが人材にも当てはまり、人材が活性化しておらず稼働率が低いことこそが、日本の一番の問題なのだと思います。当社グループでは、多くの事業領域と豊富な人材を有しており、これらの人材の活性化を図っていきます。
現在、日本においてダイバーシティーと言うと女性の登用といった捉え方がなされているケースが多く見られます。しかし、真のダイバーシティーとは人種、世代、性別を超えた交流であり、実現するためには教育システムの充実が必要となります。パナソニックグループでは、真のダイバーシティーを実現することで、介護事業を含め全ての事業領域で社会に貢献するべく、成長を続けていきたいと考えています。
平田 本日はお忙しいところ誠にありがとうございました。