1. TOP
  2. ナイスビジネスレポート
  3. 国土交通省 新たな住宅セーフティネット制度施行 空き家の賃貸住宅への改修に補助

国土交通省 新たな住宅セーフティネット制度施行 空き家の賃貸住宅への改修に補助

 国土交通省は10月25日、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律」(改正住宅セーフティネット法)を施行しました。これに伴い、「新たな住宅セーフティネット制度」として、空き家の活用による賃貸住宅の登録制度や登録住宅の改修への支援、住宅確保要配慮者の居住支援などがスタートしました。今回は、新たな住宅セーフティネット制度についてまとめました。

 

住宅確保要配慮者を巡る状況
 

現在、高齢者や子育て世帯、低額所得者、障害者、被災者などの住宅確保要配慮者を巡る環境は厳しい状況にあります。
日本は総人口が減少する一方、65歳以上の割合を示す高齢化率は年々増加しており、2016年は27.3%に上っています。高齢者世帯も増加を続け、高齢者単身世帯数は2015年の601万世帯から2025年には701万世帯と、10年間で100万世帯が増加すると推計されています(図1)。
子育て世帯については、30歳代の平均給与がピークだった1997年の474万円から2015年には416万円と、1割超が減少しています。また、一人親世帯や低額所得世帯の増加が社会的な問題になっています。
加えて、住宅確保要配慮者の賃貸住宅への入居に対しては、家賃滞納や孤独死、子どもの事故や騒音などへの不安から入居を拒否する大家が多いのも実情です。
一方、住宅ストック数は世帯数を大きく上回っています。空き家の総数はこの20年間で倍増し、2013年の空き家率は13.5%に上っています。中でも、居住世帯が長期不在であったり取り壊し予定といった「その他の住宅」は増大傾向にあります。2013年は318万戸に上り、空き家総数の3分の1以上を占めています(図2)。

 

 

 

賃貸住宅の登録制度がスタート
 

こうした背景のもと、国土交通省は10月25日に新たな住宅セーフティネット制度をスタートしました。これは、増加する民間の空き家の活用促進を図るとともに、住宅確保要配慮者の増加に対応するため、住宅セーフティネット機能を強化しようというものです。
同制度は、主に①住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の登録制度、②登録住宅の改修や入居者への経済的支援、③住宅確保要配慮者の居住支援の3つから成ります(図3)。
1つ目の住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の登録制度は、法施行同日に新たにスタートしたものです。都道府県・市区町村が国の基本方針に基づき、地域の実情に応じて登録基準の強化や緩和を行い、住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の供給促進計画を策定します。登録基準には規模や構造、設備などが定められています(図4)。賃貸住宅の大家やサブリース業者は、登録基準を満たしている、または改修により基準を満たす予定の住宅について、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として都道府県などに登録します。
登録制度の施行に先立ち、10月20日には住宅確保要配慮者に向けた登録住宅の情報提供を目的として、「セーフティネット住宅情報システム」の運用が開始されました(図5)。このシステムは登録住宅をウェブ上で検索できるもので、所在地や家賃などの情報を誰でも閲覧することが可能です。また、賃貸住宅の大家やサブリース業者は、ここから登録申請書のダウンロードや登録データの入力ができます。

 

 


 

最大100万円の改修費用を補助
 

  2つ目の登録住宅の改修や入居者への経済的支援としては、国や地方公共団体による登録住宅への改修費の補助、 独 住宅金融支援機構による改修費への融資、家賃や家賃債務保証料の低廉化への補助が挙げられます。
このうち改修費の補助については、今年度予算におけるスマートウェルネス住宅等推進事業(320億円)の中で「住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業」が実施されます。2017年度中に着手する事業を対象として、来年2月28日までを期限に募集されます。その名称の通り、住宅確保要配慮者の専用とする賃貸住宅への改修を補助するもので、入居者を次に掲げる世帯に限定することが求められます。

 

 

 補助要件には、専用住宅として10年以上登録するものであること、入居者の家賃が市区町村ごとに算出される上限額を超えないことが挙げられています(図6)。また、地方公共団体の「空家等対策計画」などで空き家を登録住宅として有効活用する旨が記載されていることが求められ、各地方公共団体に事前に確認することが必要です。

補助額は、改修工事費用の3分の1以内で、1戸当たり50万円を上限としています。ただし、耐震改修工事や間取り変更工事のほか、一戸建住宅をシェアハウスに改修するなど、共同居住用住居に用途変更するための改修工事のいずれかを含む場合は50万円が加算され、最大で1戸当たり100万円が補助されます。

 

 

改修とインスペクションの費用が対象
 

 補助の対象となる工事は、1981年以前の旧耐震基準による住宅の耐震性能を向上させる耐震改修工事や、間取り変更工事、共同居住用住居への用途変更に伴い法令適合のために必要となる改修工事のほか、手すりの設置や段差解消、廊下幅の拡張といったバリアフリー改修工事が挙げられています。
また、居住支援協議会などが入居者の居住の安定確保のために必要と認める工事も対象です。居住支援協議会とは、住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居を促進するべく、地方公共団体や不動産関係団体、居住支援団体などで組織されるもので、7月末現在、全都道府県と22区市町で設立されています。  同協議会などが必要と認める改修工事とは、車いす対応の台所の設置などの入居者の身体の状況などに応じて必要となる工事や、クッション床への改修など安全性能の向上工事、断熱材や断熱サッシの設置などのヒートショック対策工事などとなっています。一方、太陽光パネルや貯湯式給湯器、床暖房、エアコンなどの設置工事は対象外とされています。
更に、国土交通省の「既存住宅インスペクション・ガイドライン」に基づき専門家がインスペクションを実施するなど、調査設計計画を実施する場合はその費用も補助されます。ただし、従前賃貸住宅は除き、かつ3カ月以上空き家であったものが対象で、インスペクションの結果、構造や防水などについて居住のために補修や改修が必要であると指摘された場合に限られます。この際、調査設計計画と改修工事それぞれの補助額の合計が補助上限額以内となります。

 

専用住宅の登録後に申請
 

 事業の手続きとして、まずは前提条件である住宅確保要配慮者専用住宅としての登録を都道府県などに行い、その後、改修工事の補助金交付申請を行います。改修工事は交付決定通知日以後に着手することが必要で、工事終了後には遅滞なく完了実績報告書を提出します。そして、審査を経て補助金額が決定し、補助金が支払われるという流れになります。
インスペクションなど調査設計計画を実施する場合には、調査設計計画費用と改修工事費用とを分けて交付申請を行います(図7)。その際、調査設計計画の補助金交付が確定し、インスペクションの完了実績報告までに都道府県などへの登録手続きを終える必要があります。また、調査設計計画の補助金の交付決定通知日から6カ月以内に改修工事に着手しなければならず、期限内に着手できないと補助金の返還が求められます。
補助金の交付申請は、改修工事の発注者となっていますが、空き家の所有者である大家のほか、サブリース業者が代理で登録・申請などを行うことが可能です。ただし、同事業では交付申請者に対して、改修工事の終了後も10年以上にわたって住宅の利用状況や管理状況などの定期調査が実施されるため、サブリース業者が代理となる場合には注意が必要です。
交付申請に関する要領や書式などの書類一式は、同事業の事務局であるスマートウェルネス住宅等推進事業室のホームページよりダウンロードできます。なお、同事業はほかの補助金との併用は原則不可となります。

 

家賃債務保証業者の登録制度も
 

 新たな住宅セーフティネット制度の3つ目の構成要素である住宅確保要配慮者の居住支援については、居住支援協議会などによる住宅確保要配慮者及び賃貸人の双方への住宅情報の提供など、居住支援活動の充実が掲げられています。
また、賃貸借契約において全体の約6割が家賃債務保証会社を利用していることを背景に、一定の要件を満たす家賃債務保証業者を国に登録し、適正な業務を行う事業者の情報を提供するべく、家賃債務保証業者の任意の登録制度が創設されました。これにより、住宅確保要配慮者への家賃債務保証の引き受けの推進を図るとしています。
国は、これらの新たな住宅セーフティネット制度の活用により、住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の登録戸数を年間5万戸相当ずつ増やし、2020年度末までに17.5万戸とする目標を掲げています。

 

 

国土交通省 新たな住宅セーフティネット法
第40回建築分科会・第13回建築基準制度部会
http://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000115.html
 

セーフティーネット住宅情報システム
http://www.safetynet-jutaku.jp/

 

住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業
http://snj-sw.jp/

 
既存住宅インスペクションガイドライン
http://www.mlit.go.jp/common/001001034.pdf