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特別対談 世界をリードする日本の給湯技術

 給湯機器をはじめ、厨房機器や空調機器など、日々の暮らしに欠かせない熱エネルギー機器を幅広く提供しているリンナイ㈱。同社は、世界中でグローバルに事業を展開し、その高い技術力と品質で現地の住環境の向上に貢献しています。今回は、リンナイ㈱内藤弘康社長をお招きし、給湯機器を中心に、グローバルな事業展開や製品を通じた環境貢献への取組などについてお聞きしました。

 

 

給湯器を中心にグローバルに展開
 

平田 リンナイさんは東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に創業100周年を迎えられます。大変長い歴史をお持ちの会社ですが、改めて事業内容についてご紹介いただけますか。
内藤 当社は1920(大正9)年に、初代社長の内藤秀次郎と二代目社長の林兼吉の創業者両名の姓を取って「林内商会」としてスタートしました。当初は石油コンロの製造を手がけていましたが、1957年にはドイツ・シュバンク社と技術提携して製品化した国内初のガス赤外線ストーブが一気に普及し、暖房器具が事業の中心となりました。その後は、業界で初めてガステーブルコンロにグリル機能を搭載したり、国内初となる電子ジャー付ガス炊飯器を開発するなど、「厨房機器のリンナイ」と呼ばれるようになりました。そして、現在では、ハイブリッド給湯器・暖房システム「ECO ONE」をはじめとする給湯器が売上高の57%を占めるまでに成長しています。
平田 リンナイさんは台湾進出を皮切りに積極的に海外展開されており、住宅業界の中でもかなりグローバル化が進んでいますね。
内藤 海外16カ国に製造・販売会社や販売会社を展開しており、販売先は約80カ国に及びます。売上高全体における海外比率は約50%で、売上規模の大きい国別に見ると、中国、韓国、アメリカ、オーストラリア、インドネシアの順となります。
当社の海外事業における考え方は、現地生産・現地販売が基本です。アメリカなど、一部販売のみを行っている国もありますが、それも現地生産を始める方向で検討を進めています。現地生産にこだわる理由の一つとして、当社の主力商品である給湯機器や厨房機器などは、カメラやパソコンといったグローバル商品と違ってローカル色が強いことが挙げられます。
例えば、日本では魚を焼くのにコンロにグリルが必要ですが、焼き魚という調理法は日本以外にはあまりなく、世界では必要ありません。また、日本ではコンロの燃焼音が大きいとクレームとなりますが、中国では大きな音が火力の強さの象徴であり、音の大きい方が高級品となります。お風呂についても、浴槽にお湯を張って浸かるのは日本くらいで、ほとんどの国がシャワーしか使用しません。また、気候やエネルギー事情も様々です。
平田 給湯器について、日本製品の性能の高さは群を抜いていますね。海外に行くとその素晴らしさを強く実感します。
内藤 日本は瞬間式湯沸かし器が一般的で、湯切れしないのが当たり前ですが、世界では違います。アメリカで女性に生活上一番嫌なことを尋ねたところ、冬場に髪にシャンプーをつけてお湯を出したら水が出てくることだという答えが返ってきました。世界の標準は貯湯(タンク)式であり、お湯を沸かすのに時間がかかります。だいたい5~6時間かけて徐々に温度を上げていくため、冬場にお湯が切れてしまうと冷たい水しか出ないという大変な状況になってしまうのです。また、瞬間式湯沸かし器は湯切れの心配がないだけでなく、世界では温度調節も手動が標準的な中、デジタルでの細かい設定が可能です。
給湯器市場を国別に見ると、アメリカでは約900万台の市場規模のほとんどが貯湯式で、瞬間式湯沸かし器は50万台程度となっています。しかし、瞬間式湯沸かし器の効率の良さは政府も認めており、昨年も高効率の瞬間式湯沸かし器に200ドルの補助が出るなど、着実に普及しつつあります。
オーストラリアも貯湯式が市場の大半を占めています。環境への負荷に大変厳しい国であり、電熱貯湯式が給湯機器の中でエネルギー効率が最も低いことから、20年ほどかけて瞬間式湯沸かし器のシェアが4割にまで上るようになりました。
韓国では古来の暖房方式であるオンドルという床暖房が一般的に普及しており、給湯機器についてもボイラーがほとんどです。ボイラーとは暖房を主な目的とし、沸かしたお湯が部屋を暖めた後に器具に戻ってきて、それをまた沸かし直すという循環を繰り返すものです。韓国企業のナビエン社とキトラミ社と当社との三つ巴で、3社でボイラー市場の約8割を占めています。
中国は、鉄鋼や造船、セメントなどの重厚長大産業の経済は停滞気味であるものの、一般市民の給与所得は毎年10%程度上昇するなど中間層が豊かになってきており、瞬間式湯沸かし器の設置が伸びてきています。当社でも中国市場の拡大を見据え、2013年に上海にグループでも最大規模となる6万7,900㎡の工場を建設し、生産能力は以前と比べて倍増しました。また、中国はPM2.5による空気汚染の問題も抱えています。河北省などでは未だに暖房に石炭が用いられていますが、省政府から使用禁止の命令が出ていることもあり、現在、ガスのボイラーが特需に沸いています。
平田 リンナイさんの品質の高さは日本のみならず世界でも高い評価を受けていますね。
内藤 現地企業は商品をビルダーに販売するだけで、クレーム対応はビルダーに任せるので完全に情報が途切れてしまうのですが、当社ではいただいたクレームの全てについて機種別、現象別に統計を取っており、クレームの多いものから順に問題を解消する取組を継続しています。
クレームの真意を追究するためには、部品だけを見ても不十分で、使用機種や現象、再現性の有無などをまとめて分析しないと分かりません。例えば、部品に不備があり、部品メーカーに修理を依頼しても、そもそも設計的に見て部品の使い方に問題があったらどうしようもありません。品質の向上に向けては、技術を社内に蓄積することが重要であると考えており、これらの取組を通じて、不良品のない「ゼロ・ディフェクト」を目標としています。

 

給湯器の省エネが住宅の省エネに

平田 住宅でもエネルギー効率が重視され、国がZEHの標準化を進めている中、リンナイさんは省エネ性能に優れたハイブリッド給湯・暖房システム「ECO ONE」を2010年に製品化されています。
内藤 「ECO ONE」は簡単に言うと、ヒートポンプとガス高効率給湯器とを組み合わせ、快適な暮らしをご提供する製品です(図1)。通常にお湯を使用する時にはヒートポンプで効率よくお湯を沸かし、タンクのお湯を使い切ってしまった時にヒートポンプをガス高効率給湯器がバックアップするというものです。過去7日間の給湯利用を学習し、需要期に備えて沸き上げ時間を最適化するため、一次エネルギー効率を高めることができます。一次エネルギー効率はどんどん進化しており、初代は112%だったものが、今年8月に発売予定の新商品は156%にまで高まっています。
では、「ECO ONE」を使用することで実際にどのくらいの給湯一次エネルギー消費量の削減につながるかと言うと、東京などの6地域では46%の削減、東北地方などの3地域や4地域でも36~38%の削減が可能となります。また、ランニングコストについても、従来型のガス給湯器の場合に年間11万2,800円かかっていたものが、「ECO ONE」では年間4万2,300円にまで63%削減されます(※)。
平田 世帯における一次エネルギー消費量のうち給湯が約3割を占めることを考えると、給湯機器のエネルギー効率の向上が住宅全体での省エネに大きく貢献しますね。
内藤 また、「ECO ONE」には様々な便利な機能を搭載しています。まず一つ目に、昼間の太陽光発電による余剰電力については、売電価格の低下により「売る」から「自家消費」へと注目が移ってきています。「ECO ONE」では、太陽光活用モード「PV活用」を設定することで、通常より湯張り用の沸き上げ時間を前倒しして昼間に行い、余剰電力を有効活用します。また、通常より高めの温度で大容量のタンクに蓄熱することで、更なる給湯光熱費の節約が可能となります。
二つ目に、蓄電池と組み合わせて使用することにより、エネルギーが遮断されてもお湯を供給できます。電気が停止した場合は、蓄電池にある少量の電気で電子制御系をまかない、メインである湯沸かしについてはガスでまかないます。つまり、停電時にはガス機器として使用できるわけです。また、電気とガスの両方が遮断された場合には、蓄電池の電気を有効に使うため、電力抑制沸き上げ制御に切り替えたヒートポンプを稼働させてお湯を沸かします。電力消費を抑制するため蓄電池の電気がすぐになくなってしまうこともなく、災害時でもお湯を供給できます。
このほか、スマートフォンとリモコンが連動しており、帰宅途中などでも浴槽のお湯張りの運転開始といった操作が可能です。

(※)試算条件:年間給湯+追い炊き負荷18.3Gj
LPガス料金450円/m3、電気料金25.6円/kWh(基本料金を除く平均単価)

 
 
 

健康で快適な暮らしのために

 

平田 私たち住宅業界の重要な使命として、住宅の省エネ化の先には、スマートウェルネス住宅、つまり住む方の健康寿命の延伸に寄与するような住宅を普及させていくことが挙げられます。
住まいと健康という観点において、リンナイさんの取組をお聞かせください。
内藤 当社では、日本における暖房文化の向上を図ることを目指しています。現在、入浴中に亡くなる方が年間で1万7,000~9,000人いると言われています。これは交通事故による死亡者数の4倍以上に及びます。入浴中の死亡者のほとんどが居室間の温度差からのヒートショックによるものです。冬場に温かいリビングから冷たい脱衣所や浴室に行くと血圧が上がります。それが浴槽でお湯に浸かることで一気に血管が膨張して血圧が下がり、気を失ったまま浴槽内で窒息死してしまうのです。ヒートショック対策として、浴室暖房で事前に浴室を暖めておくことが効果的ですが、現在の設置率はわずか20%以下にとどまっています。当社の浴室暖房は、15分で約35℃まで暖めることが可能であり、これを普及させていきたいと考えています。
また、暖房文化という点で見ると、日本は欧米諸国と比較しても非常に劣っていると言わざるをえません。日本において最も多い暖房機器は未だに石油ファンヒーターとなっています。つまり、直接排気により汚れた空気の中で生活しているのです。一方、欧米諸国ではパネルヒーターなどに代表される輻射熱暖房が主流です。輻射熱暖房は、太陽の光のように暖房器具から出される赤外線により壁や床などが温められることで、部屋全体がじんわりと穏やかに暖められるもので、空気が乾燥することもありません。
当社では、部屋の空気を汚さず、穏やかで質の高い輻射熱暖房として、床暖房や温水ルームヒーター、パネルヒーター、浴室暖房乾燥機などを提案していきます。
平田 最後に、販売店様や工務店様へのメッセージをお願いします。
内藤 当社は創業以来、「熱を通じて快適な暮らしを社会に提供する」ことを目指して事業に取り組んでいます。「ECO ONE」をはじめとして、快適性、利便性、施工性に優れ、環境に優しく健康にも貢献する商品の開発・販売を通じて、お客様に快適な暮らしを提供し、日本と世界の住環境を変えていきたいと考えています。
100周年となる2020年に向け、総合熱エネルギー機器メーカーとして更に大きく飛躍していきますので、今後とも当社商品をご愛顧いただきますようお願いいたします。
平田 本日はご多用のところ誠にありがとうございました。