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林野庁 2016年度森林・林業白書を公表 森林・林業・木材産業に関する最新動向を紹介

 林野庁は5月26日、「2016年度森林・林業白書」を公表しました。林業の成長産業化と森林の適切な管理が課題としてあげられる中、林業の成長産業化に向けた新たな技術や取組が特集として掲載されました。今回は、森林・林業・木材産業の最新情報が盛り込まれた森林・林業白書の内容をまとめました。

 

林業の成長産業化が課題
 

「森林・林業白書」は、森林・林業基本法に基づき、林野庁が毎年1回公表するもので、日本における森林及び林業を取り巻く動向の解説をする第1部と森林及び林業施策について報告する第2部の二部構成となっています。
林野庁では林業の成長産業化を実現するため、原木供給力を増大させるとともに、川上から川下までをバリューチェーンでつなぐ原木供給体制の構築や、事業者間連携による木材加工・流通体制の整備の推進、国産材の安定供給体制の構築などに取り組んでいるとしています。
今回の白書の具体的な内容としては、冒頭にトピックスとして①新たな森林・林業基本計画の策定②「森林等の一部を改正する法律」の成立③「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(クリーンウッド法)の成立④CLT(直交集成板)の普及に向けた基準の整備と新たなロードマップの公表⑤平成28年熊本地震や台風災害の発生と復旧への取組⑥林業・木材産業関係者が天皇杯などを受賞の6項目が掲載されています。
トピックスでは、2016年5月に5年ぶりに更新された「森林・林業基本計画」が記述されました。今回の基本計画では、森林・林業・木材産業の成長産業化が図られており、本格的な利用期を迎えた森林資源を生かし、需要面においてはCLTや非住宅分野などにおける新たな木材需要の創出と、供給面での主伐と再造林対策の強化などによる国産材の安定供給体制の構築が盛り込まれています。
新たな森林・林業基本計画のポイントは、①資源の循環利用による林業の成長産業化②原木の安定供給体制の構築③木材産業の競争力強化と新たな木材需要の創出に向けた取組を推進することなどが示されています(図1)。
林業の成長産業化などを通じて、地方創生への寄与を図るほか、地球温暖化防止や生物多様性保全の取組を推進するとしています。
トピックスに続く第1部は、第1章「成長産業化に向けた新たな技術の導入」、第2章「森林の整備・保全」、第3章「林業と山村(中山間地域)」、第4章「木材産業と木材利用」、第5章「国有林野の管理経営」、第6章「東日本大震災からの復興」の6章からなっています。

 

 

新技術の導入で皆伐を推進
 

第1章では、「成長産業化に向けた新たな技術の導入」と題して林業の成長産業化に向けた課題や、課題解決の新たな技術の導入の必要性について掲載するとともに、「林業の生産性向上のための技術」、「ICT(情報通信技術)の活用」、「木材需要の拡大に向けた技術」、「花粉の発生を抑える技術」に分けて導入状況や課題を整理し、新たな技術導入のための条件整備について特集されました。
林業の生産性向上のため皆伐と再造林への取組が進められる中、新たな技術を導入していくことでコスト削減が図られています。
「伐採と造林の一貫作業システム」は、地ごしらえから植栽までの工程を省力化するもので、従来の再造林の方法と比較し6割程度に労働投入量が縮減された事例として紹介されています。
この他、造林や保育に要する経費を縮減するための取組として、コンテナ苗や草生樹種の導入、鳥獣被害対策、高性能林業機械、ICTを林業経営から木材流通まで幅広く活用するなど、新たな技術の導入が進められています。

 

木材自給率が上昇
 

第2章では、「森林の整備・保全」として、森林蓄積の推移や森林の有する多面的機能について説明がなされ、施策の基本方針が示されました。
林業の持続的かつ健全な発展には、スケールメリットを生かした林業経営により、人材の育成が進み、望ましい林業構造の確立と原木の安定供給体制の構築が進むとともに、林産物の供給及び利用の確保のために、木材産業の競争力強化や新たな木材需要の創出、木材利用意識の醸成が必要としています(図2)。
国産材の利用割合を高め、新たな木材需要を創る取組を進める中、国産材利用の指標である木材自給率は5年連続で上昇し、2015年は33.2%となりました。木材自給率を目的別にみると、製材用材は47.3%、合板用材は35.6%、パルプ・チップ用材は16.4%、燃料材は70.8%となっています(図3)。
林業・木材産業などの事業活動などの指針となる「林産物の供給及び利用」の目標は、木材自給率50%を超える水準としています。2025年における国産材と輸入材を合わせた木材の総需要量7,900万m3の内、2014年の実績の約1.7倍にあたる4,000万m3を国産材とするとしています。
「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の公共建築物の木造化の実施状況については、2015年度に着工された住宅を含む建築物全体の木造率(床面積ベース)が41.8%に対し、公共建築物の木造率は11.7%、3階建て以下の低層は26%となり、いずれも2014年度を上回る結果となりました(図4)。
木造化については、木造公共建築物の耐久性を確保するための維持管理や低コスト化などが課題となっていることが林野庁と国土交通省の検証から明らかとなりました。
文部科学省は、「木造校舎の構造設計標準(JISA3301)」の改正に続き、2016年3月に「木の学校づくり-木造3階建て校舎の手引き-」を作成し、地域材を活用した木造校舎の建設が進むだけでなく、木造校舎を含む大規模木造建築物の設計などの技術者の育成などが図られ、更に3階建て木造校舎の整備が進められることにより、学校施設などでの木材利用の促進が期待されています。
そのほか、木造軸組工法の部材以外にも、国産材割合の低いツーバイフォー材やフロア用合板、梁・桁などの横架材、木製サッシなどの技術開発・普及も進められているとしています。

 

 

 

 

CLTの普及に向けたロードマップ
 

欧米諸国では、新たな木材製品であるCLTを建築物の壁や床などの建物に活用して、木造の共同住宅、オフィスビルなどの建築が進められています。日本においても、CLTの活用を契機として、木造の中高層建築物などの建設が進むなど、新たな木造需要を創出することが期待されています。
林野庁ではCLTを用いた建築物の施工方法を確立させるとともに、CLTを活用した先駆的な建築物の建設などに対する支援を実施しています。これらの建築による実証を通じて得られる設計や施工方法の普及にも取り組み、CLT製造施設の整備を支援しました。2016年度にはJAS認定を取得した工場が岡山県や宮城県、石川県、鳥取県、宮崎県、鹿児島県の6県にて稼動し、特に岡山県では国内初となる量産工場が稼動を開始するなど5万m3/年の生産目標を達成し、生産体制の構築に向けた取組も進みつつあります。
CLTは、建物全体の構造材として使われる「CLTパネル工法」や、木造軸組や鉄筋コンクリート造、鉄骨造など他の工法と組み合わせて、床や壁などで部分的に利用するなど幅広い使い方ができます。
今後は、まとまった需要を確保してコストを縮減し、広く民間建築物におけるCLTの需要を創出することが重要な課題となります。1月に「CLTの活用促進に関するロードマップ~需要の一層の拡大を目指して~」を公表し、建築意欲の向上や設計・施工者の増加、技術開発の推進、コストの縮減などCLT需要の一層の拡大に向けて関係省庁が連携・協力し取組を推進するとしています。

 

国産材の輸出は5年で2.5倍
 

第4章では、木材需給や木材産業の動向について記述するとともに、木材利用の意義と普及などについて紹介されています。
海外でも木材に対する注目が高く、日本の木材輸出は、中国などアジア圏で住宅建設に伴う需要が好調です。円安方向への推移などを背景に、2013年以降増加しており、2016年の木材輸出額は、前年比4%増の238億円で、5年前の2011年に比べ約2.5倍に拡大しました(図5)。
国・地域別の昨年の輸出額は中国が最多の90億円で、5年前の約3.8倍となる他、フィリピンや韓国向けの伸びも目立ちました。
スギやヒノキについては、丸太中心から、高度な加工技術を生かした製品の輸出への転換を推進するとともに、新たな輸出先の開拓に取り組むこととしています。

 

 

消費者に対する木材利用の普及
 

2015年のCOP21でパリ協定が採択され、政府は、地球温暖化対策計画を作成し2016年5月に閣議決定、パリ協定が2016年11月に発効し、日本は同月に本協定を締結しました。
同計画では、2020年度の温室効果ガス削減目標を2005年度比の3.8%減以上、2030年度の温室効果ガス削減目標を2013年度比26%減とし、この削減目標のうち、それぞれ約3,800万CO2トン(2.7%)以上、約2,780万CO2トン(2.0%)を森林吸収量で確保することを目標としています。木材利用の促進は、温室効果ガス排出量削減の観点からも重要となります。
このため、林野庁は、最終需要家である一般消費者へ木材利用の意義を広め木材利用を拡大する国民運動として2005年度から「木づかい運動」を展開しています。
2015年度からは木材利用を促進するための顕彰制度であるウッドデザイン賞が開始され、2016年度は251点が受賞し、ナイスグループでも2点、累計で10点が受賞しました。
これまで木材利用とは縁が薄いと考えられていた他の業種・業態へ木材利用が波及していくことが期待されています。