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林野庁・国土交通省・経済産業省 2017年5月からクリーンウッド法施行 持続可能で合法な木材の流通について

 地球規模における持続可能な森林の保全・育成に向け、合法的に伐採された木材や木材製品の利用などを促進する「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(通称:クリーンウッド法)が5月20日に施行されました。今回は、世界の森林の現状や違法伐採根絶に向けた取組と共に、合法性確認の方法と必要性についてまとめました。

 

森林が増加する日本、 減少する世界
 

日本は、国土面積3,780万haの約3分の2となる2,508万haを森林が占めています。森林蓄積は約49億m3に上り、半世紀前と比べて約2.6倍、特に人工林では約5.4倍に増加するなど、世界でも有数の森林資源大国となっています(図1)。
しかし、森林資源が年間約1億m3成長するのに対し、木材需要量は燃料用やシイタケ原木を含めても約2,500万m3に留まっているのが現状です。特に、戦後に造林された人工林では、半数以上を主伐期である10齢級以上(46年生以上)が占め、製材用材としての本格的な利用期を迎えています。
一方、世界の森林面積は、ほかの土地利用への転用速度の減少やアジア地域における森林面積の拡大により年平均の減少率は低下しているものの、2010~2015年の5年の間には依然として年平均で331万haも減少が続いています(図2)。森林面積の減少は、動植物を絶滅の危機にさらし生物多様性の損失につながっているほか、こうした森林の減少や大地の乾燥などによって、年間で四国と九州を合わせた面積と同等となる約600万haものスピードで進む砂漠化といった現象を生んでいます。

 

 

違法伐採による影響
 

森林の減少・劣化という世界的な課題を解決するためには持続可能な森林経営が不可欠となりますが、世界では違法伐採がその阻害要因の一つとされています。違法伐採とは、一般的に木材生産国における法令に違反して行われる伐採を指し、具体的には許可された樹種や量、サイズ以外の伐採や盗伐などが挙げられます。また、先住民の伝統的権利や伐採労働者の安全といった観点からの問題も指摘されています。エリアとしては、東南アジアやロシア、アフリカなど法執行体制が弱い国において、大きな利潤が見込めることなどから違法伐採が起きやすい状況にあります。
森林は地球温暖化防止に貢献しており、森林の減少・劣化は温室効果ガスの排出にも大きな影響を与えています。森林は大気中のCO2を吸収し、炭素を貯蔵する機能を有しています。国の試算では、40年生のスギ約600本おける1年間のCO2吸収量は、平均的な家庭における1年間のCO2排出量に相当するとしています。
昨年11月に発効された、京都議定書に代わる新たな地球温暖化対策の国際的取組「パリ協定」は、世界的な平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃未満、できれば1.5℃までに抑えることを目的としています。日本は、2020年度に2005年度比で3.8%の温室効果ガスを削減する目標を掲げており、そのうち2.7%(約3,800万CO2トン)を森林による吸収量で確保するとしています。

 

 

日本の違法伐採に関する取組
 

日本の持続可能な循環型社会の形成を目指す国際的な取組として、1998年のイギリス「G8バーミンガムサミット」では、違法伐採対策を含む世界の森林に関する行動計画「G8森林行動プログラムに合意しました(図3)。また、2000年には「G8沖縄サミット」で違法伐採対策に関する首脳声明を発表するなど、「違法に伐採された木材は使用しない」ことを基本的な方針に据えています。
国内では、政府調達の対象を環境負荷の低減に配慮した製品などを優先することなどを定めたグリーン購入法が2000年に制定され、製紙用材として間伐材を使用することなどが示されました。同法は2006年には見直しが行われ、その対象を合法性及び持続可能性が証明された木材とする措置を導入しました。更に同年、木材・木材製品の供給者が合法性を適切に証明できるよう、「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」を林野庁が策定しています。これに基づき、政府調達における木材・木材製品の合法性の証明方法として、①森林認証制度の活用、②森林・林業・木材産業関係団体による認定、③個別企業など独自の取組による証明の3つが運用されています。
現在、合法性の証明方法として②業界団体による認定制度が広く活用されています。これは、(一社)全国木材組合連合会や全国森林組合連合会、(一社)全日本木材市場連盟などの森林・林業・木材産業関係団体がそれぞれ「自主的行動規範」を作成し、これに基づいて事業者の分別管理体制や文書管理体制などの審査を行い、「合法木材供給事業者」を認定するものです。合法木材供給事業者は、納入する木材・木材製品について合法性を証明する書類を発行し、その連鎖を形成することで合法性の証明を行っています。2016年3月末現在、認定事業者数では12,388社に上っています(図4)。

 

 

合法性の確認が民間取引に拡大
 

2016年5月には三重県において「G7伊勢志摩サミット」が開催され、首脳宣言に持続可能な森林経営及び違法伐採の根絶が盛り込まれました。これに先駆けて超党派による議員立法として国会で可決・成立したのが「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(クリーンウッド法)」です。
これまで、グリーン購入法により政府調達では合法伐採木材の使用が義務付けられてきました。しかし、木材・木材製品の消費全体における政府調達の割合は数%で、それ以外の大多数について違法伐採木材の取引を防止する規制がありませんでした。5月20日に施行されたクリーンウッド法は、対象を民間取引にまで拡大し、合法伐採木材の利用について努力義務を課すものです。規制法ではないものの、合法伐採木材の流通や利用が促進されると期待され、更に違法伐採が少ない国産材の活用が進むとも考えられます。
対象となるのは木材及び木材を加工または主たる原料として製造した家具や紙などの物品で、建築関連では丸太、ひき板・角材、単板・突き板、合板・単板積層材・集成材、基材に木材を使用したフローリング、木質系セメント板、木材を使用したサイディングボードなどが挙げられます。
合法性の確認に努めることを求められる木材関連事業者には、木材の製造、加工、輸入、輸出、販売を行う事業者と、工務店やビルダー、住宅メーカーなど、木材を使用して建築または建設する事業者などが該当します。これらの事業者は、国内で最初に木材の譲り受けを行う事業者である「第一種木材関連事業者」と、それ以外の「第二種木材関連事業者」とに区分されます(図5)。

 

 

証明の連鎖で合法性を確認
 

合法性の確認の方法は、区分ごとに異なります。第一種木材関連事業者の場合、国内素材生産業者や日本に木材を輸出する事業者から、①品目、②樹種、③伐採国または地域、④重量、体積または数量、⑤事業者の名称と所在地、⑥合法的に伐採されたことの証明書を収集し、これらの内容について国が提供するリスク情報などを踏まえて合法性を確認します。そして、合法性が確認された木材である旨を納品書などに記載して流通させます。
第二種木材関連事業者は、納品書など購入先から提供された書類の内容を確認することで合法性の確認を行い、同様に納品書などに記載して流通させます。なお、「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」に基づき、業界団体による認定を受けている事業者は、これまでの通り納品書などに認定番号と合法性が確認できた木材である旨を記載する方法で運用できます。
このほか、木材関連事業者には、合法性の確認に関する記録や書類の5年間の保管や、合法性が確認された木材・木材製品とそれ以外とを分別管理することが求められます。
こういった木材を取り扱う事業者はあらかじめ登録する必要があり、今年の秋頃から申請がスタートします。

 

木材の合法性確認への対応を
 

林野庁と国土交通省が4月24日に公表した公共建築物等木材利用促進法に基づく基本方針の改正案においても、クリーンウッド法を受け、公共建築物等に利用される木材を供給する林業従事者や木材製造業者は合法伐採木材を供給する旨が規定されました。
また、同基本方針では3階建ての木造校舎などの建築の促進が示されており、今後増加が見込まれる公共建築物を中心とした建築物への木材利用と共に、合法伐採木材のニーズが高まっていくことが考えられます。
更に、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向け、6月に大会組織委員会が「持続可能性に配慮した木材の調達基準」を公表し、基準の一つとして合法性の確保が掲げられました。2020年に向けて、オリンピック関連施設と共に民間でも建設が活発化する中、木材の合法性に関する認識が一層強まっていくと考えられます。合法伐採木材がスタンダードになることは必至であり、木材関連事業者はこれに対応していくことが求められます。

 

森林認証材のニーズも拡大へ
 

クリーンウッド法の施行により木材の合法性を求める動きが加速するのと併せて、森林認証材のニーズの拡大も予想されます。
森林認証材とは森林認証制度に基づくもので、伐採における合法性に加え、中長期的な管理経営や生態系の保全といった森林の持続可能性、伐採に関する先住民などの人権への配慮、労働者の適切な安全対策といった観点が基準に付加されます。
森林認証制度は、認証機関が一定の基準に基づき、適切かつ持続可能な森林経営がなされている森林を認証(FM認証)し、それらの森林から生産された木材・木材製品を適切に加工・流通する事業者を認証(CoC認証)することで、持続可能性の連鎖を図る制度です(図6)。
現在、日本では国際的な森林認証組織として、WWF(世界自然保護基金)を中心として発足した「FSC」、ヨーロッパの認証組織が集まって設立した「PEFC」のほか、国内認証組織である「SGEC」(一般社団法人緑の循環認証会議)により森林認証制度が運用されています。昨年6月には森林認証材の活用拡大を図るべく、PEFCとSGECの相互認証が始まりました。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会のメインスタジアムとなる新国立競技場では、大屋根と軒庇に森林認証材を用いることが示されているほか、関連施設についても森林認証制度の活用が図られる見通しです。
今後は、木材の合法性や持続可能性に関する世界的なムーブメントが追い風となって、合法伐採木材に加え、森林認証材のニーズは拡大していくと見られます。また、更なる利用拡大を図るべく、木材関連事業者は地球環境の保全への貢献など、エンドユーザーに対して合法伐採木材の利用の意義を訴求していくことが重要となります。