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2017年度税制改正 住宅関連税制の改正とポイント

 3月27日に税制改正法案と2017年度予算が国会で可決され成立しました。住宅関連税制では、消費税10%への引き上げが2019年10月に延期となったことを受け、消費税率10%引き上げによる負担軽減を図るため、減税制度の適用期限が2021年末まで延長されました。今回は住宅関連税制の主な改正とフラット35をはじめとする住宅ローンのポイントをまとめました。

 

消費税増税延期に伴う経過措置
 

昨年11月に消費税率10%への引き上げが2017年4月から2019年10月まで再延期されたことを受け、請負工事などに係る適用税率の経過措置の指定日を2019年4月1日とする改正が行われました。
住宅の取得に当たっては、土地に対しては消費税はかからないものの建物には課税されます。
住宅に対する消費税は、原則として引き渡し日における税率が適用となりますが、請負契約については、一般的に契約から引き渡しまでに時間がかかることを考慮し、経過措置の特例が定められています。これにより税率引き上げの半年前である2019年3月31日までに契約した請負契約などは、引き渡し日が2019年10月1日以降となっても8%の税率が適用されます(図1)。
なお、新築分譲住宅など売買契約の場合は、原則として引き渡し時点の税率が適用となりますが、建具や設備など一部注文工事の請負が発生する場合には、経過措置が適用となります。

 

 

住宅ローン減税などが延長に
 

消費税率10%引き上げによる負担軽減を図るため、減税制度の適用期限が2021年末まで2年半延長されました。延長された制度は、「住宅ローン減税」、「認定住宅新築等特別税額控除」、「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」、「住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度」、「リフォーム減税」などです。
住宅ローン減税は、住宅ローンを利用して自己居住用の住宅を取得やリフォームをした場合に、毎年末のローン残高の1%に相当する金額が10年間にわたり所得税から控除される制度です。
一般住宅の場合、対象となる年末ローン残高の上限は4,000万円、控除率は1%で年間の控除限度額は40万円、10年間での最大控除額は400万円となります。長期優良住宅や低炭素住宅では対象となる年末ローン残高の上限が5,000万円に拡充されるため、年間の控除限度額は50万円、10年間での最大控除額は500万円と一般住宅よりも優遇されます(図2)。
なお、所得税から控除しきれなかった場合は、13万6,500円を上限として所得税の課税総所得金額の7%が住民税から控除されます。

 

 

すまい給付金制度は、住宅ローン減税の拡充による負担軽減効果が十分に及ばない収入層に対して、住宅ローン減税とあわせて消費税率引上げによる負担の軽減を図る制度です。消費税8%時は10万円から30万円の3段階、消費税10%時は10万円から50万円の5段階となり、収入や扶養人数などによって給付額が変わる仕組みとなっています。
住宅ローン控除額やすまい給付金については国土交通省のすまい給付金のホームページでシミュレーションできます。

 

認定住宅新築等特別税額控除は、自己資金で住宅を取得する場合の投資型減税で、対象となる長期優良住宅と低炭素住宅の認定基準に適合するために必要となる標準的なかかり増し費用の10%に相当する金額を、原則としてその年分の所得税額から控除できる制度です。控除対象限度額は650万円で、最大控除額は65万円となります(図3)
対象となる主な要件は自らが居住する新築住宅で、床面積50㎡以上、合計所得金額が3,000万円以下です。

 

 

贈与税の非課税措置なども延長
 

住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置は、住宅取得などに係る資金に限り贈与税を軽減する措置です。非課税枠は一般住宅と質の高い住宅で異なります。質の高い住宅は、断熱等性能等級4または一次消費エネルギー消費量等級4をクリアした省エネ性能の高い住宅、耐震等級が2以上などの耐震性の高い住宅、高齢者等配慮対策等級3以上のバリアフリー性が高い住宅のいずれかです。消費税率8%が適用される場合は一般住宅は700万円、質の高い住宅は1,200万円が非課税枠となりますが、消費税率10%が適用され2019年4月から2020年3月までの契約分については、質の高い住宅で3,000万円、一般住宅では2,500万円とそれぞれ過去最大の非課税枠となります。
相続時精算課税制度は、贈与を受けた際に納税するのではなく相続が発生した時に贈与の総額と相続財産を合算した額に対して納税する制度です。特例では、住宅取得資金については親や祖父母の年齢が60歳未満であっても、20歳以上の子や孫への贈与の際に、累計で2,500万円まで贈与税が非課税となります。
自己の居住用に住宅を取得する際、所有権の保存と移転登記、その家屋の取得のため住宅ローンを組んだ場合の抵当権の設定登記に係る登録免許税の特例措置、不動産取得税の標準課税及び税率の特例措置、固定資産税の減額については、適用期限が2018年3月31日まで延長となりました(図4)。

 

 

長期優良住宅化リフォームに減税措置
 

2017年より長期優良住宅化リフォーム等の促進に向けた既存住宅のリフォームに係る特例措置として、長期優良住宅化リフォーム減税が創設されました。耐震リフォームや省エネリフォームに加え耐久性向上リフォーム(小屋裏換気口の設置や配水管を更新しやすい位置に移動するなど)を行なうことにより、既存住宅の長期優良住宅の認定を受けた場合、所得税や固定資産税について控除を受けることができます。
自己資金でリフォームを行なった場合、最大で50万円(太陽光発電を設置した場合は60万円)、ローンを利用した場合は年間最大12万5,000円を5年間で最大62万5,000円が税額控除されます。固定資産税については工事翌年度分を対象に3分の2が1年間減額されます(図5)。
新たに長期優良住宅化リフォームの項目が加わったことで、これまで耐震と省エネのリフォームのみが対象だったものが、耐久性向上リフォームも減税の対象となり減税効果をより受けやすくなりました。

 

 

平成29年度国土交通省税制改正事項
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/
 
 
住宅ローン金利が底打ち、上昇局面に
 

2%の物価上昇率(インフレ)の達成とデフレ脱却に向け日本銀行が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」政策を昨年1月に発表して以降、(独)住宅金融支援機構の全期間固定金利型ローン「フラット35」の借入金利は、最頻金利が1%を割り込む史上初の事態となりました。昨年後半より緩やかながら上昇が見られたものの現在の金利は1.12%と依然として史上最低水準が続いています(図6)。
住宅ローンの金利は種類ごとに指標があり、それを基に各金融機関が金利を決定します。長期固定型の金利は、償還期間10年の国債の流通利回りが指標として適用されます。
4月になり、昨年度の過度な金利競争を回避するため、金利を引き上げようとする銀行の姿勢がみえました。10年固定金利型住宅ローンの金利は主要73行のうち16行が金利を引き上げ、平均金利は1.010%(前月比プラス0.019%)となっています(WhatsMoney㈱調査より)。
一方、変動金利は業績や財務状況が良い優良企業に銀行が貸し出す際の最優遇貸出金利のうち、1年以内の短期貸出金利の「短期プライムレート」が指標として適用されます。短期プライムレートの最頻値は2009年より現在まで1.475%と変わらず推移しており、各行の店頭金利は2.475%と横ばいが続いています。実際には各行が定めた条件を満たすことで店頭金利より主として1.85%程度優遇され金利が引き下げられ、0.6%台が適用金利となっています。

 

 

「フラット35S」金利引き下げが10月より縮小へ
 

省エネルギー性、耐震性、高耐久性、可変性など「フラット35」に求められる技術基準より質の高い住宅を建設する場合「フラット35S」が適用されます。「フラット35S」は一定期間にわたり金利がさらに0.3%引き下げられます。
「フラット35S」は適合する条件により「金利Aプラン」と「金利Bプラン」の2つに分かれます。Aプランは認定低炭素住宅、長期優良住宅などの基準に適合する住宅に適用され、金利引き下げ期間は当初10年間となります。Bプランは断熱性能等級4の住宅などに適応され、金利引き下げ期間は当初5年間となります。
「フラット35S」金利Aプランで借入額3,000万円、借入期間35年で試算した場合、当初10年間の毎月返済額は82,192円、11年目以降は85,212円となります。総返済額は3,542万6,562円となり、「フラット35」と比較すると約85万円も返済額が少なくなります(図7)。
なお、2017年10月1日の申込受付分より金利引き下げ幅を0.3%から0.25%に縮小することが決まり、建設の予定がある場合は早めの申込が必要です。

 

 

「フラット35」新たな制度を創設
 

2017年度から「フラット35」でアシューマブルローンが利用できるようになりました。アシューマブルローンとは、債務承継型と呼ばれ、長期優良住宅の認定を受けた住宅について、借入対象となる住宅の売却時に当初の借入金利のまま債務を引き継げる住宅ローンのことです。ご利用条件は通常の「フラット35」と同じで、借入対象となるのは長期優良住宅であるため、「フラット35S」の金利が適用となります。金利上昇局面においては、住宅購入者は新規に住宅ローンを借りるよりも低い金利のまま住宅ローンを利用することができる場合があることがメリットです。ただし、「フラット35」アシューマブルローンの債務を引き継げるのは1回限りとなります。「フラット35」の申し込みができる金融機関のうち「フラット35」アシューマブルローンの取り扱いを行っていない金融機関もあります。
このほか、「フラット35子育て支援型」及び「フラット35地域活性型」が創設されます。これは、地方創生と子育て環境の整備を促進するため、「子育て支援」、「UIJターン」及び「コンパクトシティ形成」に係る施策を実施している地方公共団体と 独 住宅金融支援機構が連携し、地方公共団体による財政支援とあわせて、有識者委員会において事業内容が認められた自治体にて「フラット35」の金利を当初5年間、0.25%引き下げるものです。4月3日から同機構ホームページで、本制度に参加希望の地方公共団体を募集します。
「フラット35子育て支援型」は、若年子育て世帯が対象で既存住宅が対象となります。また、若年子育て世帯と親世帯などによる同居や近居の場合は、新築住宅と既存住宅が対象となります。「フラット35地域活性型」は、UIJターンによる移住と居住誘導区域内に移住する世帯が対象で新築住宅と既存住宅が対象となります。それぞれ対象となる要件は、地方自治体が地域の実情を踏まえて設定します。詳細は決まり次第、「フラット35」のホームページなどで掲載されます。

(独)住宅金融支援機構
http://www.jhf.go.jp/index.html