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木と住まいの大博覧会2017東京 木材総合シンポジウム 第1弾 木材新時代!! 木材から地方創生とレジリエンスを考える

 木と住まいの大博覧会では、2月4~5日の2日間にわたり、(一社)木と住まい研究協会の主催で木材総合シンポジウムが行われました。今回は、2月4日に開催されたパネルディスカッション「木材から地方創生とレジリエンスを考える」の内容をご紹介します(2月5日開催のパネルディスカッション「健康な住まいのヒント 香る木づかい」の内容は3月15日号に掲載予定)。

 

 

大地震からレジリエンスを考える
 

平田 昨年4月に発生した熊本地震では、震度7の揺れを2回観測しました。レジリエンスの観点から木造住宅をどのように考えますか。
五十田 国土交通省と(一社)日本建築学会は、益城町周辺の震度7を襲った地域の建物2,500棟余りを調査しました。熊本地震では1981年以前の旧耐震基準で建てられた木造住宅のうち28.2%が倒壊・崩壊、17.5%が大破し被害を受けていますので、耐震補強を進めることが大切です。一方で、2000年に改正された現行の新耐震基準で建てられた木造住宅で倒壊したものはわずか2.2%で7棟に留まりました。そのうち4棟は不十分な施工や地盤の崩壊とされています。適切に建設された木造住宅は2度に及ぶ震度7の揺れに対する倒壊・崩壊の防止にも有効で、現行の新耐震基準が妥当であると確認することができました。
建築基準法を守っていれば、一部損壊程度はあっても、半壊することはないと思っている方が多いかもしれません。しかし、建築基準法が求めている耐震基準は、倒壊した建物の下敷きになって死亡しない性能です。現行の新耐震基準よりも耐震性能の高い設計をすれば、度重なる余震にも安心して生活ができるレベルで建てることが可能です。
三井所 (公社)日本建築士会連合会と(一社)木と住まい研究協会は、震災後間もなく熊本県と木造応急仮設住宅の建設に関する包括協定を結びました。県内の製材事業者や流通事業者、施工事業者の方々とチームを結成して、被災者の体に優しく、地域経済を支え、環境に貢献するスマートウェルネス型木造応急仮設住宅が完成しました。これは、今後の震災対応に備え、復旧の在り方を考えるきっかけになったと考えています。
地震大国の日本では、各地で地震が発生する可能性があり、モデルとなるような木造応急仮設住宅を各県建築士会が対応できるよう整えておく必要があります。
最近では、良質な木造の自立再建住宅である「くまもと型復興モデル住宅」をつくり県内の事業者がチームとなって被災者の方々の相談にのっています。
宮澤 不幸にして地震が起きてしまった場合にはスピーディーな復興が大切です。応急仮設住宅と自立再建住宅に地元の木材を使うことができれば、地元経済にも良い循環が生まれます。また、日本木材青壮年団体連合会が取り組んでいる木造応急仮設ハウス備蓄プロジェクトが熊本地震の際に活用されたように、地震が発生して仮設住宅ができるまでの間、子どもや高齢者などの避難所での生活が困難な方への取組についても大切であると考えています。
長尾 阪神・淡路大震災では、最大震度7の揺れにより、死者6,433人、住宅被害24万8,412棟という大きな被害を残しました。神戸市内では地震が発生したその日のうちに約97%もの方が亡くなり、そのうち約8割の方は地震発生から10分以内に亡くなっています。また神戸市内の犠牲者は、83.3%の方が建物の倒壊による窒息死や圧死、損壊死などで亡くなられています。
政府の地震調査委員会では、「南海トラフ巨大地震」の今後30年以内の発生確率を70%程度としていますが、日本列島はいつどこで地震が起きてもおかしくありません。将来、首都直下地震も東海地震も富士山の噴火も必ず起こります。ご自宅の中でも特に寝室にいる時間が長くなるので寝室を強くしたり、水を備蓄しておくことが防災では大切です。

 

 

 

木材利用からレジリエンスを考える
 

平田 国土強靭化(レジリエンス)における木材利用のあり方についてお聞かせください。
長尾 当研究所では、日本の地下で起こっている現象を可視化し、今後半年から1年後の地震の発生を予測する「地下天気図」を公開しています。発生場所やマグニチュードといった力学的な現象と、発生時期といった電磁気学的な現象とを組み合わせ、更に最新の統計物理学を導入して、地震予知の精度と実用性の向上に努めています。
しかし、地震予知の精度がいくら向上しても、地震大国の日本において大地震の発生を防ぐことはできません。自分や家族の命を守り、地震後に安心して暮らし続けるためにも、地震に強いしっかりとした木造住宅に住むことで、少しでも地震による被害が少なくなることを願っています。
五十田 一般消費者の中には、木造建築物が地震に弱いと思っている方もいるようですが、耐震設計を行い適切に施工することで、木造建築物は高い耐震性能を確保できます。また、CLTなどの開発により、木造による高層の建物も現実化されつつあります。
ヨーロッパを中心に木造による多層階の建設が進んでおり、持続可能性に優れた木材を利用した建設は世界的な潮流となっています。
三井所 日本でも公共建築物をはじめ、民間の様々な建築物でも木造化が図られています。現在、木を多用した新国立競技場の建設が進められていますが、木造による屋根架構が可能であることを当連合会が試設計で確認し、国に提言書を出したことがきっかけとなり実現しました。この新国立競技場が象徴となって、より一層木材利用の機運が高まると思っています。
そのためにも、設計者の木造や木質化における技術向上を図ることが重要であり、引き続き取り組んでいきます。
宮澤 日本は、森林率が第2位の森林大国となっています。しかし、森林の年間蓄積量約1億m3に対し、利用量は約2,500万m3に留まっています。木造住宅や木造建築物は、鉄筋コンクリート造と比べ約4倍もの炭素を固定しており、地球温暖化防止というレジリエンスの観点からも極めて大きな役割を担っています。
木材を使うことは、土砂災害の防止や土壌保全、水源涵養にもつながります。
2025年までに木材自給率を50%にまで引き上げるべく、木造住宅の普及促進や建築物の木造化、内装木質化など木材利用の拡大に取り組んでいきます。
平田 木材は人にも環境にも優しく、レジリエンス力が高い素材と言えます。住宅のみならず非住宅の分野でも木材の利用を進め、日本の国土を守り持続可能な社会を実現していきましょう。本日は、ありがとうございました。