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特別対談 企業戦略のダイナミズム~変革と成長~

株式会社カネカ 代表取締役会長 菅原 公一 氏
 

化学素材メーカーとして機能性樹脂、発泡樹脂、食品、エレクトロニクス、医薬・医療器事業など幅広い分野において事業を展開し、住宅分野においても断熱材や太陽電池をはじめ様々な製品を製造している㈱カネカ。今回は同社の代表取締役会長である菅原公一氏をお招きし、長期経営ビジョン「KANEKA UNITED 宣言」やソーラーサーキットの家をはじめとした住宅関連の取組などについてお聞きしました。

 

 

経営における3つの原点
 

平田 カネカさんは1949年、当社グループは1950年の創立と、共に第二次世界大戦後の激動期からスタートしています。以来、カネカさんは素材メーカーとして、化成品や機能性樹脂、発泡樹脂、食品など、幅広い分野に渡って事業を展開されています。まずは、創業の歴史からお聞かせいただけますか。
菅原 当社は第二次世界大戦後の1949年に鐘淵化学工業㈱として設立しました。設立当初の状況は、様々な技術が詰まった、大きな可能性と未来ある「おもちゃ箱」のようなものであり、初代社長である中司清の大いなる覚悟に敬意の念を抱くと共に、今の事業の原石となった「おもちゃ箱」を大変誇りに感じています。
現在、世界が大きくパラダイムシフトする中で、一つの技術や事業では世界を動かすことは難しく、それらの様々な組み合わせにより新たなビジネスモデルが生まれています。私は当社が持つ様々な素材が、これからの未来を切り拓くための大切な財産だと考えています。
平田 改めてこれまでを振り返られ、経営におけるご自身の原点はどこにあるとお考えですか。
菅原 私の原点は3つあると考えています。1つは北海道の出身だということです。開拓者魂や挑戦者魂が根底にあり、厳しい状況に立ち向かうことも厭いません。今夏のリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックでは、アスリートの方々が大変活躍しましたが、彼らは夢の実現のために、故障などのリスクを伴いながらトライアルを重ね、命をかけて取り組んでいます。新たな試みを行うことと難局で踏ん張るエネルギーは、ビジネスにも共通することだと思います。
2つ目は海外での駐在経験です。私は1972年からベルギーに、1994年からアメリカ・テキサスに駐在し、15年ほどを海外で過ごしました。私の人脈の半数以上が海外の方となっており、これだけ長い海外経験は日本の企業経営者としては異色だと思います。この海外での駐在経験はカネカの戦略にも反映されており、企業活動に国境はないという信念を社員にも植え付けています。海外での事業展開は他人の靴に足を踏み入れるようなものです。つまり、文化の違いを認識して乗り越え、そして自分自身が変化していくことが重要となります。
もう一つ、海外駐在により得たものは、経営者として厳しい状況に打ち勝ち、次の一手を模索しながら試練を乗り越えたという経験です。ベルギーとテキサスのどちらも大赤字を抱えている中での赴任であり、・チに当時のベルギーは第2次オイルショックで需要が落ち込み、事業基盤を確立するために奮闘した時期でした。そういう点ではこの経験以上の試練はなく、むしろこの試練がなければ今の自分がないと思えるほど、新たな自分を知ることができました。非常に厳しい状況の中でグローバルな世界に身を置いた経験は自分の財産だと考えています。
原点の3つ目は、2008年というリーマンショックの最中での社長就任です。100年に一度と言われるほどの激震で、当社の業績も大きく落ち込みました。私は、リーマンショックを明治維新と第2次世界大戦での敗戦に次ぐ第3の開国だと認識しています。ボーダーレスで仕事をする時代が来ており、地球市民の考え方でアジアにおける日本、世界における日本としてとらえていくことが重要です。
平田 イギリスのEU離脱や次期アメリカ大統領選挙におけるドナルド・トランプ氏の勝利など、世界中で変革に向けたエネルギーが増大し、現実に動き出していることを実感させられる出来事が相次いでいます。このように世界がパラダイムシフトする中で、経営者に求められることは何だとお考えでしょうか。
菅原 私は、経営の基本は時代認識だと考えています。先日アメリカ・カリフォルニアに行った際、完全自動運転対応車に乗車したのですが、驚いたのは街中の日常の光景として多くの自動運転対応車が同じように走行していることです。すでにイノベーションによる新たな未来が始まっていることを改めて認識しました。
一方で、地政学的リスクによる難民問題や発展途上国における食料危機、異常気象などの地球温暖化問題をはじめとするネガティブインパクトについても併せて認識することが重要です。また、経営者は危機管理の側面から、有事の際に適確な対応が講じられるよう常に考え得る最大の危機を念頭に置いておくことが大切です。
私は、経営は格闘技と同様に倒すか倒されるかだと考えており、世界全体が大きくパラダイムシフトし、見通しが不透明で複雑な状況下にある現在は、まさに経営者にとって大いなるチャンスだと思います。「何が起こってもおかしくない」「昨日のことも参考にはならない」、そして「道は自分で拓くしかない」ことを前提として、眼前に立ちはだかる壁を打破した時、その向こうには大きな可能性が広がっています。
また、私が大切にしている言葉の一つに吉田松陰の「人は志と仲間で成長する」というものがあります。企業において志とは企業戦略であり、仲間は社員です。この言葉を念頭に置いて、長期にわたるサステナビリティーを目指し、未来志向でカネカの明日をつくるという大きなチャレンジに向けて、グローバルな視点での人のあり方の変革を中心に社中をあげて取り組んでいます。

 

第2の創業「KANEKA UNITED 宣言」
 

平田 長期経営ビジョン「KANEKA UNITED宣言」についてご紹介いただけますか。
菅原 私が社長に就任した時期は、リーマンショックによる影響が日本企業にも及び、大変厳しい状況下にありました。そのような中、将来に向けて事業の考え方を積極的に変え、カネカを変革するチャンスだととらえ、2009年に長期経営ビジョン「KANEKA UNITED 宣言」を策定しました。そしてこの年を第2の創業と位置付けました。
「KANEKA UNITED 宣言」が目指すのは、一言で表すと「DREAMOLOGY COMPANY」です。「DREAMOLOGY」は「DREAM(夢)」と「LOGY(学・技術)」を足した当社の造語で、企業理念である「人と、技術の創造的融合により未来を切り拓く価値を共創し、地球環境とゆたかな暮らしに貢献します」を実現するべく掲げたものです。そのため、結束すれば求めるものは必ず成し得ることを主張の原点として、未来をつなぐ、世界をつなぐ、価値をつなぐ、革新をつなぐ、人をつなぐの5つの「UNITED(つなぐ)」を掲げて変革と成長を実現していきます。
そのための経営施策の一つとして、限界に挑戦する企業文化への変革に取り組んでいます。海外の方が日本人を語るときに「空気を読む」という言葉を用いますが、これは目立たず皆と同じように生きたふりをするというもので、アフリカのサバンナのように肉食動物と草食動物が共に生息する場における生存戦略です。しかし、ボーダーレスの状況下では、ただ群れを成しているだけではいずれ全滅してしまいます。そのため、皆とは違う方向に進んでいくリーダーを育てていかなければなりません。これが「KANEKA UNITED 宣言」のもう一つの精神です。若・「社員は未来志向の人が多い一方、決断に迷うことがあります。その決断力に火を付けるのも経営者の重要な役目であり、私は社員が集まって将来を考える場を多く設け、未来の姿に向けて動き出すために火を付ける作戦をとっています。
また、当社は現在、化成、高機能性樹脂、発泡樹脂製品、食品、カネカロン、電材、医療器、QOL、ソーラーの9つの事業領域を持っていますが、今後は環境・エネルギー、健康、食料生産支援、情報通信の4つを重点戦略分野として経営資源を重点的に配分・投下し、10年後には地球環境、健康、くらし、食、情報化社会に貢献する事業領域群として変革するべく取り組んでいます。

 

住宅のイノベーション追求へ
 

平田 カネカさんとナイスグループは一緒になって「ソーラーサーキット工法」による家づくりに取り組んでいます。
菅原 外断熱と二重通気による住宅工法「ソーラーサーキット工法」は、すでに28年前の開発当初より、現在国が普及に取り組んでいるZEHが求める断熱性能を確保するなど、断熱性能に大変優れた高性能な住宅です。現在、ソーラーサーキットの家の加盟店様及び契約工務店様は全国で約200社に上り、これまでの累計供給棟数は2万棟を超えています。
日本は、四季による温度差があることに加え、雨も多く多湿な気候です。そのため、夏の暑さや冬の寒さ、そして湿気についても対策が講じられていることが必要となります。ソーラーサーキットの家は、屋根から壁・基礎まで家全体を断熱材で包み込む外断熱工法により、冬は一度暖められた空気を逃がさず、夏は壁体内の空気を開放する二重通気工法により、通気のない外断熱の家と比較して室内温度を3℃程度下げるなど、一見して相反する機能を両立させることで一年を通じた快適な住み心地を実現しています。まさに、住まわれる方の健康を守りながら、かつ構造躯体の劣化を防ぎ、長く住み続けることのできる住宅と言えます。
平田 お施主様からは「ぐっすりと深く眠れるようになった・vなど睡眠の質が向上したという声を頂戴しており、省エネ性に加え健康性の観点でも大変ご評価いただいています。
カネカさんでは、住宅のZEH化に向けて、ソーラーサーキットの家をベースとして「カネカのZEHソリューション」を提供されていらっしゃいますね。
菅原 現在、ソーラーサーキットの家に、意匠性にも優れた瓦一体型太陽電池や蓄電システム、超軽量な高性能ノンフロン断熱材のほか、長寿命で省電力な次世代光源である有機EL照明などを組み合わせ、「ZEHソリューション」としてニューソーラーサーキットの家に衣替えして取り組んでいるところです。
カネカは素材をつくるだけでなく、地球環境や暮らし、健康など社会の課題にソリューションを提供できる会社となるための変革の最中にあります。当社の素材の売上高60%以上が住宅関連で使われています。今後も引き続き、住宅関連事業者の皆様方と一緒になって、新しい時代、新しい住宅づくりに向かって共にイノベーションを追求していきたいと考えていますので、ご支援のほどよろしくお願い致します。
平田 本日はありがとうございました。