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特別講演 住宅市場の展望と工務店様・販売店様の役割

株式会社新建新聞社代表取締役社長 新建ハウジング発行人 三浦 祐成 氏
 

新設住宅着工戸数の減少により住宅業界における事業環境が大きく変化し、住宅購入のメインターゲットである30代を中心としたファミリー層や、リフォームのメインターゲットであるシニア層などの施主のニーズについても、これまでとは様相が異なってきています。工務店様や販売店様において、戦略的な事業展開が求められる中、今回は住宅業界における工務店様の営業や経営にフォーカスし、独自のマーケット調査などを踏まえた情報を発信する「新建ハウジング」の発行人で、株式会社新建新聞社の代表取締役社長の三浦祐成氏に、住宅市場の現状および展望と工務店様や販売店様の今後の役割について伺いました。

 

 

二極化する一戸建住宅市場
 

一戸建住宅・s場に関する様々な調査がなされていますが、価格帯ごとの割合については、土地価格を除く建物価格が3,500万円以上の高級住宅が2割程度を占めているとの結果が見られます。㈱リクルート住まいカンパニーが行った「2015年注文住宅動向・トレンド調査」では3,500万円以上が全体の24%に上っています(図1)。
3,500万円という価格はハウスメーカーが供給する住宅のおおよその平均価格であり、高級住宅市場においてはハウスメーカーが大半を受注しています。一方、工務店様のボリュームゾーンは2,000~2,500万円で、全体の23.7%に及んでいます。つまり、工務店様とハウスメーカーの中心価格帯の市場規模はほぼ同じ大きさと言えます。
新築住宅市場がシュリンクしていく中で、最も影響を受けているのが2,000~2,500万円という中間価格帯の住宅で、建物価格の二極化が進んでいく傾向にあります。ハウスメーカーの大半で2015年度の受注棟数が減少しており、その分を坪単価の引き上げによって対応しているのが現状です。
一戸建住宅市場を棟数で見ると、ハウスメーカーのシェアが3割で、残り7割を工務店様が占めています。ハウスメーカーの受注棟数が減少傾向にある中、今後は工務店様のボリュームゾーンに進出してくることも考えられます。こうした環境下で、工務店様は規格型住宅や中古住宅のリノベーションといった提案で低価格帯層をターゲットとしていくのか、あるいは性能や品質の高い住宅で高級住宅市場においてハウスメーカーと競合していくのか、具体的なビジョンとストーリーをしっかりと描けなければ、受注を伸ばしていくことは厳しい状況になると考えています。まさに今、工務店様はその立ち位置を問われています。

 

 

再び性能の時代へ
 

2005年の耐震強度偽装問題以降、地震が多発している現状に加え、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)などの国の施策を受けて、「耐震」と「温熱環境」という2つの観点から、再び「性能」の時代が来ています。
耐震については、今年4月に発生した熊本地震の被害状況を受けて国は耐震基準の見直しを検討してきましたが、結果として現行の耐震基準が有効だったとして見直しは行わない方向です。
しかしながら、お客様の耐震性能に対する関心は高まっており、今後は耐震性能の高い住宅の市場が広がっていく可能性はあると思います。ハウスメーカーやフランチャイズ加盟店の中には、耐震性能の高さを訴求するために住宅性能表示制度の最高等級である「耐震等級3」を掲げ始めたところもあります。
一方、大手ビルダーなどは低価格帯層をボリュームゾーンとしており、コストを上げてまでこれらに追随するような動きは見えていません。
温熱環境に関しては、国は今年度の本予算でZEH支援事業を実施してきましたが6次募集で予算額に達しており、第2次補正予算でZEH普及加速事業として100億円を充てて継続することが決定しました。弊紙「新建ハウジング」においても、2016年を「ZEH普及元年」と掲げ、ZEHに関する様々な情報を紙面を割いて発信してきました。弊社が昨年10月と今年2月に注文住宅の具体的な計画がある方に対して行ったインターネット調査では、全体の8割弱がZEHを前向きに検討しているという結果が出ています(図2)。一方で工務店様のZEHに対する取組は限定的で、需要と供給にギャップが生じています。
ZEHは、快適な居住環境と子育て環境を実現できます。そして、特に退職後から寿命を全うするまでを考えた際、ヒートショックなどのリスクの低減により健康寿命の最大化につながることに加え、光熱費などの生活コストを抑えることができます。お客様はこういった生涯にわたる住宅に関する全体像を理解すると、住宅の高性能化やZEH化のメリットをシビアに感じ取っていただけます。
例えば、サラリーマンの生涯所得は平均で2.5億円と言われており、年金の開始年齢は現在65歳ですが、将来的には70歳以上になると考えられます。今年7月の厚生労働省の発表によると、日本人の平均寿命は男性が80.79歳、女性が87.05歳で、90歳を超えて長生きするのが普通になってきています。子供の養育費や退職後の生活費、年金の受給などを総合的にとらえ、2.5億円という限られた生涯所得の中でどれだけの予算を住宅に割り当てるべきかを考えると、ZEHをはじめとする高性能な住宅の潜在的なニーズが浮かび上がってくるはずです。
高性能住宅は、その性能値を比較することで工務店様がハウスメーカーに対抗できるマーケットです・B「高性能な家は省エネになる」「高性能な家は健康になる」「高性能な家は省コストになる」ということを分かりやすく明確に示すことが、お客様から選ばれるためには重要となります。

 

リフォームは効果の明確さが鍵に
 

リフォーム及びリノベーション市場は現在、7~8兆円と言われています。このうち、リノベーション市場は3%程度、大型リフォーム市場は10%程度で、ほとんどは基本的に小規模リフォーム工事です。
また、リフォーム工事のお施主様の約8割が50歳以上のシニア層となっており、お客様の安全・安心志向にどう応えるかが最大のポイントです。シニア層からの受注を伸ばしている会社は「だまされたくない」というお客様の不安に対して、安全・安心を前面に分かりやすくアピールしています。残念ながら、工務店様はこの安全・安心の訴求がうまくいっていない会社が多く見受けられます。
安心訴求の一例が「価格」と「価値」が見える化されたパッケージ商品です。それ以上の追加工事は取らないという明確な姿勢が安心につながるのです。その上で施工に関する技術力を訴求して更なる安心につなげ、そして、アフターメンテナンス体制を示して将来の安心についても訴求します。
11月1日より第2次補正予算で250億円が充てられた住宅ストック循環支援事業がスタートしました(図3)。これによりエコリフォームに1戸当たり上限30万円が、また、40歳未満の若者層が既存住宅を購入し、建築士によるインスペクション(建物検査)に基づきエコリフォームをする場合には1戸当たり50万円(耐震改修を行う場合には65万円)が補助されます。
これについても、「エコリフォーム」という言い方では特にシニア層のお客様には響きにくいと思います。健康や快適、省エネなど、リフォームにより得られる「効果」をはっきりと明示する、例えば商品名も「健康・快適・省エネリフォーム」とするといったことが重要であり、顧客の住宅価値を高める旨を分かりやすく伝えるなど、「ベタ」な改善の積み重ねがリフォーム市場攻略のポイントとなります。

 

 

2017年は「IoT普及元年」
 

日本経済は、円高が緩和され底は打ったものの劇的な改善は見られず、低金利の状況は続くと思われます。住宅業界においては、勝ち組とその他とのライン引きがより明確になり寡占化が加速、商品としては高コストパフォーマンス住宅に注目が集まるだろうと予測しています。
加えて、私が個人的に注視しているのが「IoT」で、来年は「IoT普及元年」になると考えています。住宅におけるIoTとは、家の中にセンサーを付けて住宅設備機器とスマートフォン、自動車などを連動させることで、様々なものを遠隔や自動で制御したりするだけでなく、センサーでいろいろなデータを取ることができるというものです。これらから得られるビッグデータは、高齢者の健康状況の把握や安否状況の確認など、今後新たなビジネスを生み出すと考えられます。
現在、デフレ期に就職し社会人となった「デフレネイティブ」が住宅取得期に入ってきています。この世代は、幼少期からインターネットが身近に存在し、スマートフォンを巧みに操る世代でもあります。住宅についてもこれまでの世代とは異なる観点で選ぶようになってきています。住宅や自動車などを所有することに対する意欲が薄く、消費よりも貯蓄・節約志向が強いデフレネイティブ世代の需要をいかにしてとらえるかがポイントになってきます。
新築住宅については、新設住宅着工戸数が2020年度には約79万戸、2025年度には約67万戸、2030年度には約54万戸と大きく減少していくことが予測されています(図4㈱野村総合研究所、6月2日発表)。この背景の一つには人口減少、特に30歳代のファミリー層の減少が挙げられます。これは未来の話ではなく、30歳代のファミリー世代はここ10年で約2割も減ってきており、住宅業界にも影響が出始めています。30歳代のファミリー層をメインターゲットにしている工務店様においては、パイの縮小に加え、これらの層の特徴である貯蓄・節約志向もとらえながら上手に商品を訴求し、需要を取り込むことが重要となってきます。
中古住宅流通については、住宅取得者層の資金力の低下と中古住宅に対する抵抗感が低くなっていることから、2020年前後で新設住宅着工を上回り、住宅取得全体の50%を超える可能性が・?ると見ています。リノベーションの良さの一つがオーダーメイドできる点で、新築住宅ではできないことが、中古住宅であれば同じ予算で可能となります。そういう意味で、中古住宅のリノベーション市場はまだまだ伸びると思っています。

 

工務店様・販売店様の役割
 

年間受注棟数が20棟以上の工務店様は、以前の約4,000社に比べ、現在では約2,000社と半減していると見られ、工務店様にとっては非常に厳しい経営環境となっています。こうした環境下でも、ある程度の規模を有し勝ち組となっている強い工務店様は、その地域で新築だけでなくリフォームや不動産業、高齢者ビジネス、物販などワンストップ化して業績を伸ばしています。
一方、小規模の工務店様は新築の高性能住宅や伝統構法による住宅など、自社の価値を追求して専門店化していくことが生き残るための一つの方法だと思います。あるいは、リノベーション専門、販売専門、施工専門、アフターメンテナンス専門のように、今後は機能ごとに専門店化していく形もあり得ると考えています。
そのような中、販売店様は取引先工務店様の限界規模と最適規模を見据え、どの規模や業態をビジョンとして描いているのかを見極め、支援していくことが重要となってくると思います。
そして、今後は需要をつくるという「造注」が販売店様の大きな役割となってきます。販売店様が工務店様と一緒になってお客様が欲しいと思える住宅商品やリフォーム商品を開発することができるかどうか、この際、工務店様の機能を補完するという観点も含め、元請化をしていくことも販売店様の一つのあり方だと考えています。販売店様が工務店様の販売型展示場の共同分譲を仕掛ける、見込み客とのマッチングを行うといった「造注」も、今後は増えていくでしょう。