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特別対談 進化するせっこうボードと当社の事業戦略

吉野石膏㈱ 代表取締役社長 須藤 永作 
 

せっこうボード事業を中心として、住宅市場のあらゆるニーズに対応するべく新製品開発に取り組む吉野石膏グループ。今回は、須藤永作社長にせっこうボード事業の展開と新規市場への取組などについて伺いました。
また、昨年6月に吉野グループとなった旭ファイバーグラス㈱の柳川匡史社長へのインタビューと合わせてお送りします。

 

 

せっこうボードの歴史と特長
 

平田 吉野石膏さんは1901年の創業以来、せっこうボードを中心として事業を展開されており、せっこうボードの国内シェアは8割に及んでいらっしゃいます。まさに、日本の建設業界において吉野石膏さんの製品は欠かせない建材となっています。まずは、主力製品であるせっこうボードについて改めてお聞かせいただけますか。
須藤 当社グループでは「安全で快適な住空間を創る」ことをモットーに、せっこうボード事業を中心に展開しています。せっこうボードのルーツはアメリカで、17世紀に主流であったログハウススタイルの木造住宅の内装に防火性のあるせっこうプラスター(塗料)が厚めに塗られて使用されていたことを起源として1902年に発明されました。日本でせっこうが利用されたのは江戸時代に医療用として用いられたのが最初で、本格的に製造されたのは1912年に当社の前身となる吉野石膏製造所が初めてとなります。
当社は1901年に山形県東置賜郡吉野村で創業し、当初はせっこう原石の採掘を行っていましたが、1922年よりせっこうボードの製造・販売を開始しました。代表的製品である「タイガーボード」は日本初のせっこうボードであり、1923年に建設されたフランク・ロイド・ライトの設計による旧帝国ホテル本館にも当社の製品が使用された記録が残っています。
せっこうボードの原料であるせっこうは天然鉱物で、ビールの水質調整剤や豆腐の凝固剤など食品用としても使われています。せっこうボードの製造においては、せっこうが固まる際にできる針状結晶がボード用原紙に食い込むことで接着するため、接着剤を使用していません。ホルムアルデヒドを含まないことから健康面にも配慮した建材と言えます。
平田 せっこうボードは実に様々な特長があり大変優れた建材ですね。
須藤 せっこうボードの主な特長は不燃性、防火・耐火性、遮音性、寸法安定性などの高さにあります。最大の特長である不燃性、防火・耐火性について言うと、重量の2割が結晶水であることから火にかけても結晶水が水蒸気となり、放出され尽くすまで温度が一定以上に上昇することがありません。タイガーボードは9㎜厚以上が準不燃材料、12㎜厚以上が不燃材料に認定されています。準不燃材料は一定の熱を加えた際に10分間燃焼せず、防火上有害な変形や融解、亀裂を生じないこと、避難上有害な煙またはガスを生じないこと、不燃材料は同様の状況を20分間保つことが求められており、火災の際にこの10分や20分という避難時間が確保されて・「るかどうかが人命を守ることにつながります。
また、耐火壁として国土交通省より耐火構造の大臣認定を取得しています。耐火性に関する構造は防火構造、準耐火構造、耐火構造と区分されます。防火構造は周囲で発生した火災からのもらい火を防ぐことを目的としています。また、準耐火構造は建物内部で火災が起きた際に周囲への延焼をある程度抑え、火災を広げないための構造です。一方、耐火構造は火災が鎮火するまで建物が倒壊せず、周囲にも延焼しないことが目的となっており、準耐火構造と耐火構造では求められる性能が大きく異なります。
せっこうボードは材料としての不燃性により建物の耐火性に貢献できる建材です。木造住宅においては省令準耐火構造にできる不燃建材として広く活用いただいています。
平田 遮音性や耐震性の確保、健康への配慮といった様々な需要に応じて、新たな製品開発にも積極的に取り組まれていますね。
須藤 当社では、せっこうボードが有する防火性や耐火性といった基本性能をベースとして、あらゆるニーズに対応していくべく、高付加価値製品の開発に積極的に取り組んでいます。せっこうボード自体がホルムアルデヒドを含まない建材ですが、住まう方の健康への配慮から、更に空気内のホルムアルデヒドを短時間で吸収し、安定した物質と水に分解する「タイガーハイクリンボード」を提供しています。
また、最近では賃貸アパートやホテルなど騒音の問題が多くなってきています。当社では上階からの騒音対策として硬質せっこうボードを用いた木造床遮音工法「タイガーフロアシステム」を提案しています。

 

 

住宅の耐震化へ外壁用耐力面材も
 

平田 熊本地震では史上初となる震度7の揺れを2回観測するなど、多くの住宅に被害が及びました。国も住宅の耐震化が急務として、既存住宅の耐震化率を2020年までに95%に、2025年までに耐震性が不十分な住宅をおおむね解消するという目標を掲げています。そのような中、吉野石膏さんでは今年6月・謔闃O壁下地材耐力面材の販売を開始されましたね。
須藤 これまで耐力面材として内壁用を展開してきましたが、今回初めて外壁下地材耐力面材「タイガーEXボード」を開発しました。透湿性の高さが特長であることから、土台や柱、壁などを腐食させる原因となる壁内の結露防止の効果が大きく、耐久性の高い住宅を実現できます。また、吸水膨張率が低く、寸法安定性にも優れています。
更に、同製品を用いた防火構造認定も取得しています。通常、防火構造は屋内側にせっこうボードを施工する必要がありますが、当社の防火構造であれば外壁下地材自体が不燃材料であることから内壁の面材を省略でき、施工性の向上につながります。また、各種の断熱材を自由に選択することも可能です。
熊本地震では、筋交いの施工不良などによる被害拡大も見られました。また、筋交いによる耐力壁では断熱欠損が起こることもありますが、これらを面材耐力壁とすることで安全で快適な住空間の実現に貢献していきたいと考えています。

 

中・大規模建築物への対応
 

平田 2010年の公共建築物等木材利用促進法の施行以降、民間においても非住宅及び中・大規模建築物の木造化に向けた取り組みが積極的に進められてきていますね。これらの動きについて実感としてはいかがですか。
須藤 中・大規模建築物の木造化の動きは荷動きにも顕著に現れてきています。特に、木造における耐火構造の需要が確実に増えてきていると感じます。需要が増加している老人ホームなどの共同住宅は4階建て以上または延べ床面積が3,000㎡を超える場合、特別養護老人ホームは原則2階建て以上の場合に耐火建築物とする必要があります。また、用途に限らず防火地域内では、3階建て以上もしくは延べ床面積が100㎡を超える場合には耐火建築物としなければなりません。実際に、国土交通省による大臣認定仕様の木造耐火建築物の件数は、2010年には395件だったのが2015年には1.6倍の631件に上っているというデータもあります。
平田 木造による耐火建築物の需要については、どのように対応されていますか。
須藤 当社ではニチハ㈱様と共同開発を行い、2012年に枠組壁工法で、2014年に軸組工法で1時間木造外壁耐火構造を実現し、国土交通省の大臣認定を取得しました。耐火被覆材には防水性と防カビ性を有し、建築中の雨水にも強い特殊なせっこうボード「タイガーボード・タイプZ-WR」を用いています。また、外装材にはニチハ㈱様の窯業系サイディング「モエンエクセラード」を用いた工法で、意匠バリエーションも豊富です。
また、同じく2014年には国土交通省が初めて木造耐火構造の仕様について告示を出しました。それまでは、木造の耐火建築物を建てるには(一社)日本木造住宅産業協会などが大臣認定を取得した仕様を利用するか、耐火実験をして大臣認定を取得する必要がありました。これが告示化されたことで木造耐火建築物の設計がより身近になったと言えます。
告示の中で、外壁の仕様について木製下地の両側を強化せっこうボード2枚以上からなる厚さ42㎜以上の防火被覆材で覆うこととし、防火被覆の屋外側には金属板や窯業系サイディングなどを張るかモルタルやしっくい仕上げとすることが示されています。これは、当社とニチハ㈱様が共同開発した外壁耐火構造の仕様そのままです。
また、この流れはケイミュー㈱様からも高い評価をいただいており、当社製品を用いた耐火構造認定を取得されるなど、木造だけでなく鉄骨造による耐火建築物にも展開されています。
当社の「タイガーボード・タイプZ」「タイガーボード・タイプZ-WR」は告示で規定される強化せっこうボードに標準で対応しています。これを用いて告示仕様とすることで木造の耐火構造を実現でき、外装材の自由度も高いため様々なテイストの外観をつくることが可能となります。

 

今後の事業展開とは
 

平田 新設住宅着工戸数が減少傾向にあり、事業環境が大きく変化する中、非住宅分野におけるシェアの拡大など戦略的に事業を展開されています。その一つが、昨年6月のグラスウール断熱材のメーカーである旭ファイバーグラス㈱様との経営統合ですね。
須藤 住宅市場がシュリンクする一方、2020年の省エネ基準適合義務化に向けて住宅の省エネ化は一層進んでいくと考えられます。これら省エネ化の動きに加え、当社のシックハウス対策製品である「タイガーハイクリンボード」をはじめとするせっこうボードと、旭ファイバーグラス㈱の高性能かつホルムアルデヒドを含まない断熱材「アクリア」とを組み合わせ、省エネに健康をプラスするという観点からお客様のニーズに対応するべく、シナジーを発揮して提案していきたいと考えています。また、せっこうボードと断熱材は現場での施工時期が近く物流の効率化を図っていくことが可能です。この点についても積極的に取り組んでいきたいと思います。
平田 新規市場の開拓において、海外での事業展開についてはいかがでしょうか。
須藤 海外事業については、ASEAN(東南アジア諸国連合)を中心とした経済成長の見込める新規マーケットを開拓していきたいと考えています。せっこうボードは現地生産が基本であり、2014年にはインドネシアに現地法人を設立しました。首都ジャカルタから約40㎞のところに工場用地を取得し、来春の着工を目指しています。
また、ベトナムにおいても現在、現地法人の設立準備を始め、ホーチミンでの工場建設に向けた体制づくりに着手しています。
平田 最後に販売店様及び工務店様へのメッセージをお願いします。
須藤 吉野グループでは、高付加価値商品の提案により基幹事業であるせっこうボード事業で木の幹を太くしつつ、関連会社である旭ファイバーグラス㈱の断熱材などの事業としての枝葉を茂らせることで、安全・安心で健康に配慮した快適な住空間に貢献する製品を皆様に提供していきたいと考えています。吉野グループ一丸となって努力と熱意を持って新たな挑戦を続け、取引先の皆様、そして社会に貢献できる企業体を目指していきます。販売店様及び工務店様におかれましては、一層のご愛顧をよろしくお願い致します。