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在来軸組工法による4階建て約7,000㎡のビッグプロジェクト ベルギー最大規模の複合老人ホームが完成

 すてきナイスグループ㈱の欧州現地法人ステキヨーロッパ(ベルギー・ブリュッセル)がベルギーで建設に携わってきた大型複合老人ホームがこのほど完成を迎えます。今回は、4階建てで延べ床面積が約7,000㎡とベルギーにおける木造建築物として最大規模となり、日本の在来軸組工法としてヨーロッパで最大規模となるこの大型複合老人ホームについてご紹介します。

 

ベルギー最大規模の木造建築物
 

 ナイスグループでは、ベルギーにおける大型複合老人ホームのプロジェクトについて、2012年より取り組んできました。  同施設は、ベルギーの首都であるブリュッセルから約90㎞離れた古都トゥルネーに位置し、火災で焼失した古城跡地に計画されたもので、その敷地面積は約11,000㎡に及びます。要介護高齢者向けの老人ホーム(1~2人部屋)50室と一般用賃貸住宅(2~3LDK)16室などからなる木造4階建てで、火災を免れたレンガ造の既存建物の保存を目的としたリノベーション部分(延べ床面積約1,000㎡)と、新たに建て直す木造部分(同約7,000㎡)を含め、建築物の総延べ床面積は約8,000㎡に上ります。このうち、新築部分はベルギーで最大規模の木造建築物となります。

 

 

パワービルド工法を採用
 

構造部分にはナイスグループオリジナルの金物接合による在来軸組工法(日本名:パワービルド工法、欧州名:SUTEKI WOOD SYSTEM)が採用されています。ナイスグループでは、2012年にブリュッセルで開催された国際住宅展示会「BATIBOUW」で同工法を紹介しており、今回のプロジェクトの事業主であるフランソワ・マルリエ氏とジャンルイ・マルリエ氏の兄弟が来場されたことがきっかけとなりました。
両氏は世界的な人気絵本「Martine」シリーズの作家を父に持ち、その資産を福祉に役立てるビジョンをお持ちでした。
両氏は、今回の超大規模複合老人ホームのプロジェクトに当たって、省エネ性と耐久性に優れた建築物を実現する工法を検討されていました。そのような中、日本の木造文化により培われた在来軸組工法の技術への信頼性や設計の自由度に加え、同工法の強度や施工精度の高さ、施工の容易さなどを高く評価され、採用に至りました。
以降、ナイスグループでは現地における建築関連法規への適合など建設に向けた準備を進め、2014年2月に着工しました。

 

 

883m3に及ぶ木材を調達・加工
 

ナイスグループではプロジェクトの中で、構造計算やプレカット図面の作成、躯体材を含む使用木材の調達、プレカット加工、現地の建設会社に対する施工指導などといった技術支援を行いました。
構造計算及びプレカット図面の作成はパワービルド㈱のオリジナルCADソフトで実施しています。木造建築物の文化がないベルギーにおいて、約7,000㎡という規模の大きさに加え、構造計算をベルギーの建築法規に適合させる必要があり、これらの実現に当たっては2年に渡って現地で打ち合わせを実施しています。
使用木材については、JAS(日本農林規格)製品であるアカマツの集成材を用いています。これらはナイスグループのオーストリア・イプス市にあるプレカット工場にて加工を行いました。同プロジェクトは6工区に分かれており、順次工事が進められていくことから、その工程に沿った加工が施されました(図2)。また、間柱や床合板には主に日本産木材を用いており、加工済みの状態で現地へ輸送しています。
今回使用した木材は柱材が169m3、梁材が361m3、そのほか床材などが212m3で、合計883m3に上っています。

 

 

1年に満たない期間で躯体工事を完了
 

躯体工事においては、ナイスグループより建築士が赴き、施工指導を行いました。ベルギーはレンガ造の文化であり、現地の建設会社にとって木造軸組工法での建設は初めてでしたが、パワービルド工法の施工性の高さが生かされ、順調に組み立てが進みました(図3)。
パワービルド工法はあらかじめプレカット加工された穴に専用金物を取り付け、ドリフトピンで固定するだけで接合でき、熟練した技術がなくても高精度な構造躯体を短工期で実現できる点が特長です。
これにより、全工区を通じて最大で5人の職人が躯体工事を行い、延べ床面積約7,000㎡という大規模建築物について、実質日数201日と1年に満たない期間で全6工区が上棟しました。

 

 

日本産スギを内装に使用
 

ナイスグループでは躯体工事における技術支援のほか、森林認証材を用いた内装木質化についても提案を行いました。
具体的には、日本から秋田産スギの羽目板を調達し、中庭に面した多目的ホールの壁面の上部に使用しています。この羽目板はリブ加工(波状の加工)が施されたもので、洗練されたデザインの空間をつくり出すと共に、木材の温かみが感じられ木質感あふれる室内空間を演出しています(図4)。

 

 

ヨーロッパでも高い断熱性能を確保
 

環境先進国のドイツをはじめベルギーやフランスなど、ヨーロッパでは断熱性や気密性について求められる基準が日本と比較して格段に高くなっており、同プロジェクトにおいても大変高いレベルで建設されました。
同建築物では環境面への配慮から木質系の断熱材を使用しています。壁については、室内側の下地材となるOSB板(木質系構造用面材)と室外側の木質断熱パネルとの間に木質繊維断熱材を充填し、断熱材で400㎜の厚みを確保しています(図5)。これにより、壁の熱貫流率(U値)は0.1W/㎡Kという大変高い性能を実現しています(日本の一般的な住宅〈グラスウール充填105㎜〉:U値0.4W/㎡K程度)。
また、戸境壁や床に重量を持たせることで遮音性を高めているほか、地中に深さ63mのパイプを30本設置し、水を循環させることで地熱の利用を図るなど、最新の技術により環境への貢献と居住者のより良い生活環境を両立させています。

 

 

現地メディアからも高い関心
 

同プロジェクトは、日本の在来軸組工法による建築物としてヨーロッパでも最大規模であり、現地のベルギーだけでなく、ドイツやオランダ、フランスなどの周辺各国から現地の視察や取材が相次いでいます。
第1工区が上棟した2014年10月には、その施工スピードの速さから、ベルギーの国営放送や民間放送局によりテレビニュースの中で報道されたほか、新聞各紙でも多数取り上げられました(図6)。これらのインタビューの中で、事業主であるフランソワ・マルリエ氏は「頻発する地震に耐えてきた日本の最新の木造軸組工法は高精度かつ革新的であり、更に環境にも優しく、コスト的にもリーズナブルでメリットが大きい」と述べています。
このほか、ドイツやフランスの新聞や建築系雑誌などでも取り上げられるなど、ヨーロッパにおける木造建築物に対する関心の高さが伺われました。

 

 

建物の披露式典を開催
 

9月26日には現地にて建物の披露式典が開催されました(図7)。同プロジェクトは日本とベルギーの木造建築技術の向上に貢献するとして、日本・ベルギー友好150周年事業に認定されており、当日は在ベルギー日本国大使館の山田洋一郎公使をはじめ、フランダース政府などの行政関係者や建築関係者、学術関係者などを含み総勢80人が出席され、現地メディアも取材に訪れました。
式典では、事業主であるフランソワ・マルリエ氏よりプロジェクトの全体概要が説明され、続いてナイスグループの平田恒一郎代表より挨拶が行われました。また、林野庁の沖修司次長より「ベルギーの建築物に日本の木材と伝統工法が用いられ、安全で安心、快適な生活空間を提供できることを誇りに思う」との祝辞がよせられました。
その後、建物内の見学やパワービルド工法の建て方実演、断熱仕様や遮音仕様をはじめとしたエコ技術の解説などが行われました。