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2016年 アメリカ住宅事業視察団レポート ~ストリート・オブ・ドリームス&ポートランド住宅視察~

 アメリカ・ポートランドで開催された住宅イベント「ストリート・オブ・ドリームス」やポートランドの一般住宅を見学する視察が、工務店様を中心に住宅産業関係者が多数参加する中、ナイス株式会社の主催で先頃行われました。今回は、最高級住宅の最新トレンドがふんだんに紹介される人気のイベントを紹介すると共に、アメリカ経済のけん引役として活発な動きを見せる米国の住宅マーケットを報告します。

 

 

全米一の規模を誇る「夢の住宅コンペ」
 

今年で41回目となる「ストリート・オブ・ドリームス」は、1983年より毎年夏にアメリカ・オレゴン州のポートランドで行われる「夢の住宅コンペ」です。主催者が準備した分譲地に、地元のホームビルダーが自社の特色を生かして建築した最高級の住宅を入場料25ドルで有料にて公開し、来場者の投票により一番評価の高い住宅が決定されます。展示した住宅は、全て一般に分譲されるもので、視察した8月27日の時点では3棟が契約済みでした。
イベントの開催は約1カ月間に渡り、来場者数は例年5~7万人に上るなど全米一の規模を誇り、アメリカの住宅トレンドの発信の場として、アメリカ国内のみならず世界中の住宅建築関係者にとっても注目の展示会となっています。
今回は、オレゴン州下最高峰の大自然のシンボルであるマウントフッド(標高3,424m)が見渡せるポートランド屈指の高級住宅エリアで開催され、広大なブドウ園を開発した土地に5棟の木造一戸建住宅が展示されました。住宅の広さは576~767㎡、間取りはベッドルームが4~6つ、バスルームが4~6つ、ハーフバスが1~3つ、価格は329万~500万ドルと、まさに「夢の住宅コンペ」と呼ぶにふさわしい豪華な住宅が並びました。

 

自然と調和するライフスタイルの提案
 

今年のトレンドは、マウントフッドの自然豊かな眺望を楽しめる30畳はゆうにある広々としたリビングダイニングとなりました。吹き抜けかもしくは高い天井を備え、開放的で大きな窓を設け、眺望を楽しめるプランが数多く見受けられました。プランによってはリビングダイニングの窓を開け放つことができ、アウトドアリビングと一体に使える設計となっています。そのアウトドアリビングは、ひさし付きのプランもあり、家具はもちろんキッチンやテレビ、プール、ジャグジーなども設置され、贅沢な雰囲気で家族や友人が集まって楽しめる充実した空間となっています。
住宅の構造は2×4工法で、オレゴン州における住宅エネルギー性能評価システムを全邸に採用するなど、高い住宅性能となっています。2~3層のガラスによる樹脂サッシや全館空調システムにより、空気環境を整えると共に、夏涼しく冬暖かい住宅を実現しています。更に暖炉やキッチン、給湯などには最新の天然ガスを活用した機器が採用されています。

 

 

拡大を続けるアメリカの住宅マーケット
 

アメリカ経済が堅調に回復する中、アメリカの住宅市場も回復が続いています。住宅ローン金利は昨年末にゼロ金利政策が解除されたことで上昇したものの2月からは低下して、現在の30年固定金利は3.5%前後となっています。また、家計の債務負担が軽微なことや住宅ローン貸出基準の緩和もあり、住宅ローンに拡大余地があります。更に、雇用不安の後退や住宅価格の上昇、金利高騰への懸念が住宅購入意欲を高めている結果となっています。
連邦住宅抵当公庫が集計する住宅購入センチメント指数(住宅価格の売り時や買い時、価格、金利、雇用情勢など6項目を集計したもの)は、2016年7月が86.5と2011年の統計開始以来最高値を更新し住宅の購入意欲が高いことを示しています。
アメリカの人口はこの10年間で2,500万人増加して2015年には3億2千万人を超え、世帯数も2015年は136万世帯が増加するなど、今後も増加することが見込まれています。これに対して、2015年1~12月の住宅着工件数は、111万件に留まったものの、2016年は1~7月まで年率換算値の平均が116万件のペースまで回復しました。今までは、住宅の着工戸数が世帯の増加数を上回っていたことからすると、現在では世帯の増加数が着工戸数を上回っており、今後も住宅の需要が見込める状態です。
新築住宅が主流の日本とは異なり、アメリカでは中古住宅の販売戸数が新築住宅より大幅に多くなっています。2015年の中古住宅の取引件数は525万件と2014年に比べて約11%増加しました。2016年の取引件数は更に上向き基調であることから在庫が不足し、中古住宅の価格も上昇傾向にあります。
アメリカの住宅価格の指標である「S&Pケース・シラー住宅価格指数」(2000年1月を100として住宅価格の水準を示す指数)によると、5月現在の20都市平均は188となり、アメリカのインフレ率139以上に高まっています。また20都市中7都市においては、バブル期の価格以上に上昇しています。視察に訪れたポートランドでは、前年比12.5%増と活況を呈しています。(図1)

 

 

2015年の全米の賃貸居住者は43百万人となり、2005年比で9百万人上昇しています。空室率は現在6.7%と1985年以降で最低水準です。ハーバード大学のレポートによると、2010年以降賃料は大幅に増加し、2000年を100とすると2015年は240を超えて・「ます。2016年もこの傾向は続き2015年比で6.9%上昇しています。
米連邦準備制度理事会(FRB)が昨年暮れに利上げに着手しましたが、インフレ率の低位安定などから、今後の利上げ速度は緩慢と予想されます。今後の金利動向と、11月の大統領選挙後の動向に注視が必要ですが、住宅マーケットは一層回復することが期待されています。