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林野庁 平成27年度森林・林業白書を公表 国産材供給が増加し自給率も上昇

 林野庁は5月17日、「平成27年度森林・林業白書」を公表しました。国の成長戦略の一つである林業の成長産業化を推進するため、木材需要に応じた安定供給体制の確立や生産性の向上、林業の担い手の育成・確保に向けて取り組みが進む中、この1年間における森林・林業の動向や主要施策の取り組み状況が示されています。今回は、この中から日本における森林資源の現況や木材産業と木材利用の動向などについてまとめました。

 

人工林の半分が伐採適齢期に
 

「森林・林業白書」は、林野庁が毎年1回公表するもので、日本における森林及び林業を取り巻く動向について総括的にまとめられています。
日本は国土面積3,779万ヘクタールのうち森林面積が2,508万ヘクタールで、国土の約3分の2(66%)を森林が占める世界有数の森林国となっています。森林蓄積は1966年の18億9千万m3から2012年には49億m3と50年間で約2.6倍に増加し、特に人工林については5億6千万m3から30億4千万m3と約5.4倍にもなっています(図1)。

 

 

そして、人工林全体のうち約5割が10齢級(材齢51~55年生)以上の高齢級に達しています。終戦後や高度経済成長期の木材需要に対応するため伐採した跡地で造成したスギやヒノキの人工林が、十分に成熟して伐採の適齢期を迎えています。
森林は、木材や工業原料を生産する物質生産機能としての働きだけでなく、生物多様性保全や地球環境保全など「森林の有する多面的機能」と呼ばれる様々な働きを通じて国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与しています(図2)。

 

 

26年ぶりに木材自給率が30%台に回復
 

国産材利用の指標である木材自給率は2014年に31.2%となり、1988年以来26年ぶりに30%台にまで回復しました(図3)。木材自給率は、木材の国内生産量を国内総需要量で除して算出されます。

 

 

 木材の需要量は、戦後の復興期と高度経済成長期により増加し、1973年には過去最高となる1億2,102万m3を記録しました。その後は増減を繰り返しつつもバブル崩壊まで1億m3前後で推移していました。しかし、木材自給率については1964年の木材輸入の全面自由化により輸入木材が増加したことに加え、山村の過疎化や高齢化などもあり、国内における生産量が縮小し、減少傾向が続いていました。
これが近年は、国内における人工林の森林資源の充実や合板原料としてのスギなどの国産材利用の増加により国内生産量が増加に転じ、一方で輸入木材は年々減少してきていることから、木材自給率は上昇傾向となっています。
なお、林野庁では、5月24日に閣議決定された「森林・林業基本計画」において2025年までに国産材の供給量を2014年の1.7倍に相当する4,000万m3に拡大させる目標を掲げています。これにより、木材自給率は50%まで向上することになります。
 
 
 
住宅の建築用材が国産材需要の要に
 

木材需要の3割強を占める製材用材の需要については、その約8割が建築用であることから新設住宅着工戸数と密接に関係しています。新設住宅着工戸数が過去最高となった1973年に6,747万m3とピークを迎えた後は減少傾向で推移し、2014年にはピーク時の4割程度の2,614万m3となりました。製材用材の自給率については、国産材の供給量の増加により46.7%となっています(図4)。

 

 

 一方で、一般消費者の木造住宅のニーズは高くなっています。2015年に農林水産省が実施した「森林資源の循環利用に関する意識・意向調査」によると、今後住宅を建てたり、買ったりする場合に選びたい住宅として在来軸組構法の木造住宅が半数以上を占め、それ以外の木造工法と合わせると木造住宅を希望する人の割合は全体の約4分の3に上りました。
また、木造軸組構法における部材別の国産材使用の割合を見ると、柱材では39%、土台では49%と高い自給率を保っています(図5)。住宅の建築用材の需要が国産材の需要にとって重要となっていると言えます。

 

 

都市部の木材利用に期待
 

「森林資源の循環利用に関する意識・意向調査」では、都市部において木材が利用されることを期待する施設として、「学校や図書館などの公共施設」の88.2%に次いで、「駅やバスターミナルなどの旅客施設」が51.7%、「ホテルなどの宿泊施設」が39.0%となるなど、公共建築物に加えて非住宅分野での木材利用が期待されていることが分かりました。
都市部で木材利用の推進が図られる中、全国に先駆け、木材の生産地と消費地が連携した取り組みが行われています。北海道に次ぐ木材生産量を誇る宮崎県と、首都圏における立地の優位性を生かした消費ポテンシャルを有する神奈川県川崎市は、2014年11月に「宮崎県と川崎市との連携・協力の取組に関する基本協定」を締結しました。
2015年10月には「川崎市木材利用促進フォーラム」を設立し、関係事業者の技術力向上や人材育成、民間建築物への木材利用促進に向けた取り組みなどが行われています。その一環で宮崎県との多様な事業者間連携による設計ノウハウなどの実務的な検討などを実施しています。

 

 

温室効果ガス排出量を2013年比で26%削減
 

昨年パリで開催された「気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」において、2020年以降の国際的な温暖化対策についての法的枠組みである「パリ協定」が採択されました。1997年に採択された「京都議定書」が先進国にのみ削減目標が定められたのに対し、「パリ協定」では開発途上国を含めた全ての締約国が対象となり、公平でより実効性の高い法的枠組みが構築されました。
「パリ協定」では、産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えるとともに、1.5℃に制限する努力義務が目標に掲げられました。また、森林を含む温室効果ガスの吸収源・貯蔵庫の働きを保全及び強化することが規定されるなど、温暖化対策における森林の役割の重要性が明確に示されています。
日本はCOP21に先立ち2015年7月に、2030年度までに2013年度比で温室効果ガス排出量を26%削減するという約束草案を決定し、機構変動枠組条約事務局に提出しました。この削減目標のうち2013年度排出量の2.0%分に当たる約2,780万CO2トンについて森林吸収源対策で確保することを目標としています。

 

木材利用の促進が地球温暖化防止に貢献
 

木材利用の促進は、温室効果ガス排出量削減の観点からも重要となります。樹木は光合成によって大気中のCO2を取り込み、木材として伐り出された際には炭素を貯蔵します。そのため、住宅をはじめとする建築物に木材を利用することが温室効果ガス排出量の削減につながります。
林野庁では、2005年度から木材利用を拡大していくための国民運動として「木づかい運動」を展開しており、国産材を使用した製品等に添付し木材利用をPRする「木づかいサイクルマーク」の普及活動などを実施しています。

 

 

 また、2015年度からは「ウッドデザイン賞(新・木づかい顕彰)」が創設され、木の良さや価値を再発見させる製品や取り組みに対して特に優れたものを消費者目線で評価して表彰し、木材利用の更なる促進を図っています。
近年では「木づかい運動」の一環として、子供から大人までを対象に、木材や木製品との触れ合いを通じて木材の良さや利用の意義を学んでもらうための教育活動「木育」の取り組みも全国に広がっています。
森林認証制度の普及へ

6月3日、日本独自の森林認証制度「SGEC(一般社団法人緑の循環認証会議)」が、世界37カ国の森林認証制度と相互承認する国際的な森林認証制度「PEFC」による承認を受けました。森林認証制度は、第三者機関が森林経営の持続性や環境保全への配慮などに関する一定の基準に基づいて森林を認証するとともに、認証された森林から算出される木材及び木製品を分別し、表示管理することで、消費者の選択的な購入を促すものです。国際的な森林認証制度にはPEFCのほか「FSC」があります。
現在、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、組織委員会より持続可能性に配慮した木材の調達基準(案)が示されており、この中でFSCやPEFC(SGEC)による認証材の利用が推奨されています。東京オリンピック・パラリンピックを機に民間においても森林認証材の利用が普及することが期待されます。

図は全て林野庁「平成27年度森林・林業白書」より作成