国土交通省による注目施策であり、地域の住宅関連事業者から成るグループが供給する木造の長期優良住宅や省エネ住宅などを支援する「地域型住宅グリーン化事業」について、グループ募集が4月27日より開始されました。2年目となる今年度は、対象となる住宅に「性能向上計画認定住宅」が追加されたほか、ゼロ・エネルギー住宅については原則として住宅版BELSの評価が必要となっています。今回は、昨年度からの変更点を中心に事業の概要についてまとめました。
国土交通省(以下、国交省)は4月27日、2016年度の「地域型住宅グリーン化事業」についてグループの募集を開始しました。同事業は地域における木造住宅の生産体制を強化し、環境負荷の低減を図ることを目的としています。具体的には、工務店様や木材・建材販売店様などの住宅関連事業者がグループを組成して取り組む、長期優良住宅や省エネ住宅といった木造住宅及び木造建築物の整備に対して補助を行います。
手続きはグループ提案申請と補助金交付申請の2段階を経て行われます(図1)。グループ提案申請については、グループごとに地域型住宅に関する共通ルールを策定し、それに基づく取り組みを申請します(申請期日6月3日必着)。
グループは原則として、次の8つの業種から構成されていることが必要です。このうち1~5は1事業者以上が所属していなければなりません。
1事業者が複数のグループに登録することは可能ですが、施工事業者については今年度より1グループからの補助金交付申請に制限されている点に注意が必要です。ただし、自社が取り組みたい住宅の提案を所属グループが行っていない場合など、特段の事情がある場合には2グループからの交付申請も可能としています。
補助の対象となる木造住宅は、長寿命型と高度省エネ型の2つに分けられます(図2)。このうち長寿命型とは長期優良住宅を指しています。
高度省エネ型については、昨年度までの認定低炭素住宅とゼロ・エネルギー住宅に加え、今回より4月1日に施行された建築物省エネ法に基づく「性能向上計画認定住宅」が追加されました。性能向上計画認定住宅は所管行政庁により性能向上計画の認定を受けた住宅のことです。
長期優良住宅や低炭素住宅といった認定住宅と同じく、グループに対する採択通知の記載日以降で、かつ所管行政庁への認定申請後に着工し、補助金交付申請の際には認定証の写しを提出する必要があります。
補助金額及び施工事業者1社当たりの上限戸数は対象住宅により異なります。長期優良住宅の場合の補助金額は、対象となる経費の1割以内かつ1戸当たり100万円が上限となります。高度省エネ型については、認定低炭素住宅及び性能向上計画認定住宅は対象経費の1割以内かつ1戸当たり100万円が上限で、更に省エネ性能が高いゼロ・エネルギー住宅の場合には対象経費の2分の1以内かつ1戸当たり165万円が上限となっています。
また、昨年同様に主要構造材(柱・梁・桁・土台)の50%以上に地域材を利用する場合には、それに関する掛かり増し費用に対して20万円を上限として補助金額が加算されます。
更に、三世代同居対応住宅の要件を満たす場合には30万円を上限に補助額が加算されます。具体的には一定の要件を満たす調理室、浴室、便所、玄関のうちいずれか2つ以上を複数箇所に設置することが要件となっています(図4)。
ゼロ・エネルギー住宅の場合には、1戸としてカウントされる二世帯住宅の場合が対象です。この時、一次エネルギー消費量の計算における設備機器などの取り扱いは準ずる省エネ基準の計算方法に基づいて判断することになります。
なお、地域材の利用及び三世代同居対応による加算は重複して行うことが可能です。
各グループにおける補助対象戸数は、グループ提案申請の内容や住宅供給の実績などを総合的に考慮して割り当てを行うとしています。なお、1施工事業者当たりの補助対象戸数には上限が設けられています。長寿命型の場合は7戸で、三世代同居に対応すると3戸が上乗せされ、合計10戸が上限となります。高度省エネ型の場合は2戸で、三世代同居への対応で1戸が上乗せとなり、合計3戸が上限です(図5)。
ただし、高度省エネ型のうち認定低炭素住宅と性能向上計画認定住宅については予算枠に限りがあることから、これまで高度省エネ型の配分を受けた実績がないグループから優先的に配分するとしています。
また、東日本大震災の特定被災区域及び平成28年熊本地震の被災地における住宅生産者については、1社当たりの補助対象上限戸数が上乗せされます。
今年度より高度省エネ型のゼロ・エネルギー住宅については、4月1日より制度が開始された住宅版「BELS」の評価が原則として求められています。BELSは建築物の省エネ性能に特化した日本初の統一された公的指標で、2020年の省エネルギー基準への適合義務化を見据え、対象が非住宅だけでなく住宅にまで拡大されました。住宅の省エネ性能をラベルで分かりやすく表示することにより、省エネ性能に優れた住宅が市場で適切に評価されるような環境を整備することなどを目的としています。
グループがゼロ・エネルギー住宅に取り組む場合には、省エネルギー基準の断熱地域区分ごとにモデルプランを用意する必要があります。そして、住宅版BELSの評価に基づき省エネルギー基準における外皮性能に関する基準及び一次エネルギー消費量に関する基準に適合することに加え、一次エネルギー消費量がおおむねゼロとなることを確認します。
準拠すべき省エネルギー基準は建築物省エネルギー法に基づく「平成28年基準」となっていますが、今年度は経過措置として従前の省エネルギー法に基づく「平成25年基準」による計算でも可能となっています。
なお、計算プログラムは国立研究開発法人建築研究所のウェブサイト上で公表されています。
ゼロ・エネルギー住宅で補助金交付申請を行う際には、事前に第三者機関による住宅版BELSの評価を実施し、ゼロエネ相当である旨が記載された評価書を申請書類に添付することが必要です(図6)。
また、ゼロ・エネルギー住宅の補助を受けた住宅は完成後、原則1年間の居住下におけるエネルギー消費に関する報告とその効果が分かるものを提出することが必要となります。
今年度は、グループとしての活動を持続的に行っていくため、今後5年程度を視野に入れたグループの中期的活動方針を策定することを求めています。
中期的活動方針の報告内容は、「地域型住宅グリーン化事業による取り組みの評価」として、事業の実施によりグループとして成し得たことや有意義であったことを3項目以上記載する欄と、「中期的目標と実現のための取り組み」として、グループで目指そうとする目標とその実現のために取り組んでいくべき活動方針を記載する欄が設けられています(図7)。
更に、長期優良住宅や認定低炭素住宅、性能向上計画認定住宅、ゼロ・エネルギー住宅のそれぞれについて、グループが1年間に供給する住宅の戸数や、グループ内で施工を経験した事業者の数の目標値と目標達成時期を記載することになります。
図1~5、7はすべて地域型住宅グリーン化事業評価事務局資料より作成
