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東日本大震災から5年 地震から命を守る耐震化を促進 耐震性不十分な住宅の解消へ

 未曾有の大災害となった東日本大震災から丸5年が経過しました。この間も日本では、地震をはじめ洪水や火山噴火など大規模災害が各地で発生しています。地震活動期に入ったと言われる日本において巨大地震発生の可能性が学識者などから叫ばれています。国も住宅や建築物の耐震化率を引き上げる方針を打ち出しています。今回は、住宅の耐震化に向けた国の方針とともに住宅の耐震化の必要性についてまとめました。

 

2025年までに耐震化率100%に近付ける
 

 国土交通省では現在、建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)に基づく「建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための基本的な方針」(以下、基本方針)の改定を行っています(3月中に公布・施行予定)。
この中で、2013年の住宅の総戸数約5,200万戸のうち約900万戸が耐震性不十分で、耐震化率は約82%と推計しています(図1、2013年推計値)。また、2003年から10年間で耐震性が不十分な住宅は約250万戸減少しており、約195万戸が建て替え、約55万戸が耐震改修によるものとしています。

 

 

 こうした現状を受け、基本方針の改定案では、住宅の耐震化率を2020年までに少なくとも95%に引き上げ、更に2025年には耐震性が不十分な住宅をおおむね解消することを目標に掲げています。
これらの目標は現在計画の見直しが行われている住生活基本計画(全国計画)においても、2025年の成果指標として盛り込まれています(ナイスビジネスレポート3月1日付1面既報)。

 

650万戸の住宅の耐震化が必要
 

 改定案では、2020年に耐震化率95%を実現するため、2013~2020年までの間に少なくとも約650万戸の住宅の耐震化(うち耐震改修は約130万戸)を行う必要があるとしています。そのため、建て替えの促進を図るとともに耐震改修のペースを約3倍にすることが必要だと示しています。
また、耐震改修と同程度の戸数の耐震診断の実施が必要であるとの考えから、住宅については少なくとも約130万戸の耐震診断の実施を目標に掲げています。

 

大地震による住宅倒壊が引き起こす被害
 

 東日本大震災では津波による被害がほとんどで、最大震度7を記録したにもかかわらず、地震の揺れによる被害は多くはありませんでした。その理由として、地震の揺れの周期が建物の持つ固有周期と異なっていたことがあげられます。
一方、1995年の阪神・淡路大震災では、同じく震度7の地震の揺れによる住宅被害は全壊と半壊を併せて24万9,180棟にも及びました。また、亡くなられた方の死因を見ると、家屋や家具などの倒壊による圧迫死が88%を占めています(図2)。

 

 住宅の倒壊がなければ6,434人という死者の数をもっと抑えられた可能性が高いと言えます。

 

基準法改正による耐震性の違いで被害に差
 

 阪神・淡路大震災で被害を受けた建物について、建築基準法における耐震基準が大きく改正された1981年を境に比較すると、被害の状況に大きな差があることが分かっています。
1981年以前の建物は約3割が大破・倒壊しており、中・小破を含めると7割弱に及んでいます。一方、1982年以降は両方含めても全体の25%にとどまっています(図3)。このことから、1981年以前に建築された建物は耐震性が低く、地震が発生した際の被害が大きいことが示されました。

 

 

 建築基準法における耐震基準は、1950年の制定(旧耐震基準)以降、大きな地震に見舞われるたびに見直され、改正されてきました(図4)。その一つが1981年の改正です。これは1978年に発生した宮城県沖地震で多くの住宅が被害を受けた事実から行われたものです。

 

 

 改正後の耐震基準(新耐震基準)では、軟弱な地盤には鉄筋コンクリートの基礎が義務付けられ、過大評価されていた木ずり壁や筋かいの壁倍率の再評価により数値が引き下げられました。また、2~3階建ての必要壁量が大幅に増加されるなど、耐震性は旧耐震基準に比べて格段に上がりました。
次の大幅な改正は阪神・淡路大震災の5年後となる2000年に行われたもので、これが現行の耐震基準となっています。 この改正では、阪神・淡路大震災において、耐力壁のバランスの悪さからくる傾きやねじれによる倒壊など住宅被害の様々な状況を受け、耐力壁の配置バランスの数量化が行われたほか、地盤の強さに応じた基礎形状、引き抜き対策金物の使用など、新たな規定が数多く盛り込まれました。

 

1981年前後で全壊率にも開き
 

 政府の中央防災会議が公表している過去に起きた実際の地震の被害から算出した木造住宅の全壊率を見ると(図5)、1981年を境とした旧耐震基準と新耐震基準では、計測震度6を超えたあたりから全壊率に大きな開きが出ていることが分かります。

 

 

 また、新耐震基準及び現行耐震基準による住宅についても、計測震度が大きくなるに連れて建築年が古い住宅ほど全壊率は高くなっています。例えば、東日本大震災や阪神・淡路大震災と同レベルの計測震度7の地震が発生した場合を考えると、現行耐震基準で2002年以降に建てられた住宅の全壊率は21.3%であるのに対し、新耐震基準の1981~1989年に建てられた住宅は54.5%と、その全壊率は2倍以上に及びます。

 

最大の地震対策は「建て替え」
 

 ナイスグループでは、「阪神・淡路大震災の悲劇を二度と繰り返してはならない」という強い思いから、2001年より「住まいの構造改革」キャンペーンをスタートしています。この中で、旧耐震基準による住宅は建て替えを、新耐震基準による住宅については耐震診断及び耐震補強を提唱しています(図6)。

 

 

 900万戸に上る旧耐震基準による耐震性が不十分な住宅は、建築してから35年以上が経過しており老朽化が進んでいるものが多く、基礎や壁、接合部などの建物を支えるうえで重要な部分に改善が必要となる場合がほとんどです。そのため、これらの住宅を耐震補強により現行の耐震基準を満たすレベルまでに引き上げることは容易なことではありません。また、それが可能だとしても多大な費用がかかることになります。
前述した木造住宅の全壊率(図5)から見ても、大地震の際に旧耐震基準の住宅が倒壊する可能性は非常に高くなっています。過去の大地震の際には、住宅の倒壊が二次被害を巻き起こした状況が発生しています。とくに大都市における住宅密集地では、倒壊した住宅が細い路地を塞いでしまい、避難経路を断ってしまうことが予想されます。このとき、万が一火災が発生した場合には、地震による揺れで命を落とすことがなくても、倒壊した住宅が原因で逃げ遅れ、火災により命を失うことが考えられるのです。
国土交通省では、「地震時等に著しく危険な密集市街地」について全国の市区町村を対象に調査を実施し、結果を公表しています(図7)。

 

 

新耐震基準でも耐震診断・補強を
 

 「住まいの構造改革」キャンペーンでは、新耐震基準による住宅についても、耐震診断を行い、その結果から必要があれば耐震補強を行うことを提唱し続けています。
「耐震性能あり」に区分される新耐震基準による住宅でも全壊率には大きな差があり、実際に過去の大地震の際には耐震壁の配置のバランスが悪かったり、基礎や土台と柱を緊結する引き抜き対策金物がついてなかったりした住宅では倒壊または半壊した例も見られました。
このことからも、新耐震基準の住宅については耐震診断により問題のある部分を見つけ、適正な耐震補強を施すことが重要です。

 

耐震化の促進が命を守る
 

 2011年の東日本大震災の発生により、日本は地震の活動期に入ったと言われています。今後30年以内には南海トラフ巨大地震や首都直下地震が70%程度の確率で発生することが予測されており、これら2つの巨大地震が起こらない確率はわずか9%しかないのが現実です。
耐震性能は住宅の根幹となるものです。住宅に携わる者として巨大地震の発生は「必ず起こるもの」と考え、住宅の耐震化が命を守ることにつながることを理解しなければいけません。そして耐震化に向けて実践していくことを「使命」として、取り組んでいくことが求められています。